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世界樹転生 異世界支配とビキニアーマー開発史  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
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ベタなオチ

「聡明なエルザ女王はクチキ=ユグドラシル=シゲルがこの私、ユーリ・アッシュ・エルフネッドを愛していることを見抜いていた」


 凛と努めて冷静に語るユーリ。深刻な事態だというのにこの言葉に嬌声があちこちであがる。


「私が女王代行をしているかぎり、クチキ=ユグドラシル=シゲルは命を懸けてこのカーキ=ツバタ王国を守ると考えたエルザ女王は、自らも命を懸けて私を説得した。これに応えなくては女が廃る。以上の理由でこの私、ユーリ・アッシュ・エルフネッドが今現在、女王代行を務めさせている。


 そしてエルザ女王は現在治療を受けている。民を、信徒を守るため、その身を、心を、削るような生き様に感心した女神フレイヤ様によって[神々の福音室(ヒーリング・ストーン)]によって治療されている。近々神殿にその玉体を安置するゆえ、その目で確かめるとよい。


 そして──そして約束しよう、カーキ=ツバタの民よ。このユーリ・アッシュ・エルフネッドはそなた等の女王エルザ=クワハラ=カーキツバタに誓って、この国を守ると」


 ユーリが宣言すると、どよめきが静まりしばらくして歓声が国内に鳴り響いた。その声を受け止めるようにユーリの巨大な映像は両手をかかげる。


 そしてその映像が天空から消え、終わった──かのようにみえたが、音声はまだ流れていた。


「ユーリ様、お疲れ様でした。見事な演説でした」


 この声はゾフィ親衛隊長だなと民は感づき、歓声をやめて聞き耳を立てる。


「そうか──上手くいってよかったが……あー恥ずかしかった、10万人の前でクッキーに愛されてると言うなんてぇ」


 先程の凛とした声とは打って変わり、恋する乙女のような甘い声のユーリに民達はニヤつく。


「前にもブラパン伯爵様や貴族の皆様の前でもおっしゃいましたではないですか」


「あれは……勢いで言ったのとほんの数人だったからで……」


「でも本当のことなんですよね」


「……うん」


 この「うん」に全国民がキュン死した。


「あ、あのユーリ様、ゾフィ隊長」


 また別の声がした。


「どうしたエリス」


「まだお声が流れています。今の会話、全部聞かれてます」


「え?」


「申し訳ございません、スピーカーツタの扱いがまだ不慣れなもので……」


「……」


「……」


「「きゃぁ~」」


 扉が開いて閉まる音がしたあと、ようやく音声が聞こえなくなった。しばらくして先ほどとは別の、期待や高揚の歓声ではなく、まるで結婚式のような祝福の歓声が国内を満たした。


※ ※ ※ ※ ※


「あんのぉ女ギツネエルフめぇぇ」


 祝福の歓声に満たされた国内の中で、怒り心頭のブラパン伯爵はまたしても怒髪天を衝いていた。


「くっそぉ、こんな手を使うためにしたのかぁ」


 石造りの壁を壊さんばかりに殴りつけるブラパン。それを見ながらブランとタイツは抱き合わんばかりに互いに恐れる。


「な、なんのことでしょう。こんな手って」


「さ、さあ」


 それを聞き咎めて他あり散らす相手をふたりにかえる。


「馬鹿者どもが。あの女ギツネエルフが何をしでかしたかわからんのか。だから子爵程度なのだ、いいか忌々しい女ギツネエルフが何をしたか教えてやるからよく聞け。


 女ギツネエルフを女王の座から引きずり下ろすため国民に悪評を流したのはわかるな? 露骨にやってはこちらが不利だ。だから口の軽い噂好きの奴等に[自分がたまたま聞いた秘密]と思うようにそれぞれの屋敷で相談しているところをワザとみせたな」


「は、はい」


「噂というのは、つまらないと他人に話さない、面白くなくては。では面白い話とは何か。ヒトの陰口や悪口よ。ましてや身分の高い者のならさらに面白い、下々の者というのはそういうものよ。だからひと晩で広がったのだ。さらには煽る者も配置した。ここまでは計画どおりだった。だがあの女ギツネエルフは予想外にそれを後押しするような真似をしたのだ」


「そうでした。なぜでしょう」


「私にもわからなかった。だが先程の大魔法でわかった。あの女ギツネエルフは噂を塗り替えるのが目的だったのだ」


「ぬ、塗り替えですか」


「そうだ。悪評を肯定しそれを広がったところで大魔法で真実を話すという。あれだけの大魔法だ、国民は驚いてそちらの方を信じるだろう。しかもだ。

 ……悪評よりも下々の者が興味を持つ内容、つまり色恋沙汰の話に塗り替えたのだ。我が国10万人のうち6万人は女だ。色恋沙汰の方に興味を持つに決まっている、これで我等か流した悪評はすべて塗り替えられただろう。この計画は失敗したのだ」


 ブラン子爵とタイツ子爵は説明されてようやく理解した。


※ ※ ※ ※ ※


 その頃、長い耳の先まで真っ赤な顔をしているユーリに対して王室御用達魔導師会(ロイヤル・ウィザーズ)の会長マジーク・ウィザド・ポールズと女王親衛隊のエリスが平謝りをしていた。


「も、申し訳ございません。このマジーク・ウィザド・ポールズ、己の未熟さを痛感しております。大変申し訳ありませんでした」


「もうよい。様子をみにいった者からの話によるとかえって良い結果が出ているらしい。不問に処す」


「はは。寛大な処置に感謝いたします」


「かわりといってはなんだが、今後も助けてもらうぞ」


「もちろんでございます」


マジーク・ウィザド・ポールズは心から服従することを誓った。

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