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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
118/120

反撃

 一角獅子(ユニコレオ)に追い込まれた耳長ネズミ(ラビラット)、というよりは思考を放棄した操り人形のようになったショージはユーリの問いに答える。


「昨夜遅くのことです、もう寝ようかというときにチョーシ──議員のひとり──が家にやってきまして、カーキ=ツバタはもう終わりだとベロベロに酔っ払い状態で繰り返すのです。

 彼は酒にのまれやすい質なので与太話として聞き流し、客間で寝かせて泊まらせました。

 そして今朝になって、二日酔い状態の彼に何があったか問うと『貴族達の密会に出くわし、帝国が戦争を仕掛けていて勝ち目がないという話を聞いてしまった』というのです」


「そのチョーシとやらは信用できる相手なのか」


「いえ。チョーシ・ノルカスは早とちりが多いので、何かの間違いだろうと高を括ってました。ですが朝早くから次々と来訪者が現れ、それぞれが訊ねてくるのです。王宮に何かあったの知らないか、女王様の御身に何かあったのか、と。

 訊けばそれぞれどこかの貴族の領民で、仕えている御方がそれぞれ暗い表情で帰ってきて、それぞれ王宮で起きた出来事を聞かされたりたまたま聞いたりしたそうです。

 我が家の客間はさながら小さな平民議会場となって、各々の意見をまとめると[王国を乗っ取るため帝国からエルフが秘密裏に送られ、女王陛下は弑られたのではないか]ということになりました」


 ユーリは無表情に聞いていたが、内心憤慨していた。勝手に女王代行にさせられて女神から[試練]を受けるはめになり、なおかつ王国のために動いているのにそのように思われていることに。


「それで、どうして其方がここに来る流れになったのだ」


「どの議員だったか、噂だけではどうしようもない、”ここは女王陛下に謁見できる議長に確かめてもらおう“と言い出して、皆もそうだそうだと言いまして……」


 で、いやいやながら王宮に来たということらしい。

 ユーリはしばらく考えたが、ゾフィを呼び伝令のため3人部下を呼んてくれと頼む。


 そしてそれらがやってくると、ひとりに申しつける。


「ショージ・キモノ議長を王宮の神殿に案内して、マリカ司祭長に会わせてくれ」


 承ると、隊員とともにショージ・キモノは部屋を出る。

 するとすぐさまふたり目に申しつける。


「先回りしてマリカに伝えてくれ“女王陛下のことが国民に漏れている、対処してくれ”と」


 承ると、急ぎ足で伝令が出ていく。

 最後のひとりには伝令書を書いてから申しつける。


「マリカが議長に説明しているときか終わったくらいに渡してくれ。内容は”エルザ女王陛下を平民神殿に移してもよい“だ」


 3人目はそれを受け取ると、敬礼したあと部屋を出ていった。


「さてと、ゾフィにも頼みがある」


「なんでしょうか」


※ ※ ※ ※ ※


 ──ショージ議長との面会で時間を取られてしまい、遅れて貴族会議の部屋に戻ったときにはすでに貴族達によりシャイン・ロックの尋問が終わっていた。


──やはり時間稼ぎをされていたか──


 部屋には中央に備えつけられた豪奢なテーブルに横一列に並んで座っている。ブラパン伯爵をはじめとする5人の貴族はニヤつきながらユーリが来るのを待っていた。

 その反対には鎖で両手を縛られたシャイン・ロックがうなだれながら立っている。

 変なタイミングでショージ議長がやってきたので、もしかしてとは思っていた。


「女王代行、ずいぶんとゆっくりでしたな」


「思わぬ来訪者がいたのでな。遅くなってすまない。ではシャイン・ロックの尋問をはじめようか」


「それはもう済んでおります。彼は何も知らず手紙を渡してたが、コットンは内容を知っていたと白状しましたぞ。これがその証言です、本人の供述サインもありますぞ」


 ユーリはシャイン・ロックに鋭い視線を向ける。その視線をそらしながらも微かに口元がニヤついていた。

 それを見ながらブラパンに近づき供述書を受け取り目を通す。それには


”ギルド定期便で送られてきた荷物の中に紙の手紙があり、コットン伯爵へ渡すように配達人に口頭で伝えられた。そのようにすると伯爵は待ちかまえたように受け取り、あとは帝国軍を待つだけだなと呟いた。それを聞いたことを証言します。“


とあった。


──シャイン・ロックめ、謀ったな──


 ユーリは内心そう呟く。


「よろしいですかな女王代行。それでは約束通りシャイン・ロックはこちらに引き渡してもらいます。衛兵、連れて行け」


 手鎖を引っ張られる様でシャイン・ロックは出ていく。これでもうユーリは連絡が取れなくなることになった。


「これで尋問と喚問は終わりましたな。それで来訪者とはどなたでしたかな」


 白々しいなと思いながらも、ショージ・キモノから聞いた噂を話す。貴族たちもまるで初めて知ったように大袈裟に驚きざわめいた。


「なんともう民衆に知られていたとは。噂は妖精の通った残り香とはよく言ったものだ」


 醜悪ともいえる貴族たちを見ながら、妖精の残り香ではなく蓋をして隠しきれない悪臭を撒き散らしたの方が適当だな、とユーリは思う。


「なので、ショージ・キモノにエルザ女王の謁見を許した」


 ユーリの言葉にブラパン達はぴたりと止まる。


「いま、なんと」


「事実を知ってもらうためにエルザ女王をショージ平民議長に見せたと言ったのだ」

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