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世界樹転生─目的は異世界支配とビキニアーマー開発─  作者: 藤井ことなり
帝国との触発編
115/120

証人喚問(コットン伯爵)

「馬鹿を申せ、ここから[はじまりの村]までどのくらいあると思ってる。黒煙など見えるはずがない」


 先程まで否定してたゆえブラパン伯爵は報告を一蹴したが、何度確認させても同じ報告がくる。

 しかたなくブラン男爵に見にいかせたが、やはり黒煙が見えるという。


「いったいどういうことだ……」


「それだけ燃えている規模が大きいということだろう、ブラパン伯爵、調査隊を派遣したいがよろしいか」


「……しかるべく」


ユーリからの言葉を否定して対処を遅らせれば自分の責任になると、ブラパンは衛兵隊長にすぐさま調査隊を編成して出動するよう指示した。


 ──やれやれ、たかが調査隊を出すだけでこの手間か。これだから集団とか組織というのは苦手なのだ──


 400年分の叡智を持って大賢者などという二つ名で呼ばれているが、ユーリの気性というか性格はどちらかというと行動派である。思いついたら即行動、言うより動く、である。


 会議室が妙な空気になってしまったが、ユーリはかまわず本来の予定であるギルマスのシャイン・ロックとコーサク・ノブル・コットン伯爵の尋問と証人喚問をおこなう。まずはコットン伯爵を会議室に喚び出す。


※ ※ ※ ※ ※


 今まで貴族として、しかも一、二を争う地位だったのに、罪人としてこの場にいる。


 その心情は察してあまりある……。


 だが場合によっては王国の破滅となることをしていたのだ、手心を加えるわけにはいかない。


「コーサク・ノブル・コットン伯爵、ただいまより証人喚問を行う。女神フレイヤに誓って真実のみを話してもらおう」


「……誓います……」


 ユーリの言葉にコットンは力無く宣誓する。


「まず、いつ頃から帝国と接触していたのだ」


「……1年くらい前になります」


「きっかけは」


「ギルド経由でカリステギアの商人名義で手紙が届きました。内容は私が扱っている麦を買い取りたいというものでした」


「麦? 綿(コットン)ではなくて?」


「綿はブラパン家にほぼ全て買い取ってもらっています。それをもとに女性下着を製品し他国に売っているので、余分はありません」


「麦ならあるということか」


 100年前の[カイマ襲撃]以来、[大地の嘲笑い]がある山地から[フライング大河]までの広大な草地は、暗黙の掟として立入禁止となっていたが、2代前のコットン伯爵は探検家として名を馳せた人物で、[大地の嘲笑い]まで調べに行きカイマの出現場所は洞窟1か所だけと見つけた。

 となるとカイマの行動範囲は半円の面積ではないかと推察し、老人たちの証言をもとにカイマの行動距離を測り、そこから離れたところを農地とすることを当時の女王に進言、許可を受けて綿花と麦を植えた。

 目論見は成功し、カーキ=ツバタ王国の食料と産業の礎をつくりあげた。


「麦も王国に納めていますが、豊作の場合は当家で他国に売ってもよい決まりになっています。それを買い取りたいという話でした」


「それから」


「ずいぶんと高値で買いたいとありましたので、とりあえず会うことにしまして、当人がやってきました」


「どんな人物だった」


「欲深そうな年配の商人を想像してましたが、意外にも若い男で色白で金髪の爽やかな感じが印象的でした」


「名前はなんといった」


「ルーディウスと名乗りました。ギルドの商人ではなく、独立して始めたばかりだと。けどそれは真っ赤な嘘でした」


 ルーディウスを名乗る人物はその後何度か会いに来て、信用に足ると判断し取り引きをはじめた。

 順調に取り引きをしつつ手紙でのやり取りも続け、しばらく経ったところでコットンはエルザ女王の体調に気づいてしまった。


 帝国からの降伏勧告といわんばかりの要請に交渉を続けていたせいだと感じたコットンは、何とか助力をとおもうが手段が思いつかない。

 そこにたまたま来ていたルーディウスが、自分の正体を告白した。自分は商人でなく帝国の者で王族に近しい立場だという。


 コットンは警戒したが、ルーディウスはカーキ=ツバタ王国の重臣貴族との縁が欲しくて黙っていた、両国を平和的に繋げる手助けをするためにと訴える。

 本心でそう言ってると感じたコットンはルーディウスの言葉に耳を傾けるようになったという。


 そこまで聞いてブラパン伯爵は机を拳で叩き、責めるように言う。


「コットン、貴殿は昔から人を見る目があると豪語してたではないか。それを若造に騙されるとは何ごとだ。そこまで老いたか、腑抜けたか」


「いや、間違いなくルーディウスを名乗る男は本気で両国を平和的に繋げる手助けをしたいと思っていた。彼が心変わりしたか何か事情があって変わったか」


「まだ言うか。貴殿は騙されたのだ、挙句の果て[はじまりの村]が襲撃されたのだ」


「襲撃? なんの事だ」


「ふん、とぼけおって。今朝方[はじまりの村]より黒煙が上がっているのを確認されておる。遥かに離れた我が国からも見えるくらいのものがな。村全体が燃やされていなければあの規模にならん」


「ば、馬鹿な。そんな話はきいてない」


「ふん、責任逃れはさせんぞ。これは貴殿が若造に騙された結果だ、断固として責任を取ってもらうぞ」


 [はじまりの村]が襲撃されたこととコットン伯爵の裏切りはまだ関係しているか分からない。だが政敵を葬るチャンスとみたか、ブラパン伯爵はそれが真実だと言わんばかりにたたみかける。

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