海情
掲載日:2022/03/30
あの日、私は海に成ろうと決めたのです。
何故なら彼が、「僕が死んだら海に散骨して呉れ」だなんて、あまりに悲しい事を云うから、私は海に成ろうと決めたのです。
彼にとって、私は何でありましょう。何になれましょう。海に成り、彼の還る場所になれましょう。
私の涙は海水なのです。私の白血球はプランクトンなのです。私の赤血球はミネラルなのです。そして彼は、私の作り上げた昏い海を穿つ、月の光なので在ります。
そこには紺青の水面に、彼と私という存在が、ぷかぷか浮遊するだけでした。




