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配達クエスト 7

 配達の場所に向って二日目。20キロの道のりを、延々と歩いて、目的の『ジェフリー牧場』へとたどり着いた。

 牧場は、緩やかな丘の上にあり、とても穏やかな場所に思える。晴れいれば風景もよさそうだが、今は雨で見通しが悪い。

 入り口からは母屋(おもや)らしき建物が見えたので、その建物に歩いて向う。


 建物のドアには大きなベルがついていた。タカオはさっそく鳴らす。

 カロンカロンと軽快な音が聞え、しばらくするとお爺さんが出てきた。



「お嬢さん、こんな雨の日に、何をしに来たのかね?」


「あなたがジェフリーさんですよね? 道具屋のロジャーさんに頼まれて、荷物の配達に来ました」


 僕が答えると、お爺さんは不思議そうな顔をする。


「配達という割には、荷物を持っておらんようじゃが……」


 すると、タカオが胸を張って答える。


「倉庫魔法に荷物が入っているんだ。荷物はどこに置けば良い?」


納屋(なや)の方じゃな。ちょっと待っておれ、雨具を着てくる」


 ジェフリーさんは部屋の奥に入ると、しばらくして、雨合羽(あまがっぱ)を着て出てきた。



「この裏手の建物がそうじゃが、聞いた話によると、倉庫魔法には、そんなに量が入らんのじゃろ?」


 ドアを開けて、僕らは建物の中に入る。農家の納屋としては、あまり広くない、およそ10畳くらいのスペースだ。


「普通はそうらしいが、ユウリの倉庫魔法は特別なんだ。頼まれた分を、全部、持ってきたぜ」


「信じられんな…… 頼んだ荷物は、馬車1台くらいはあったじゃろう」


「今、出すから、その目で確認してくれ。さあ、ユウリ」


「はい、これが預かってきた荷物です」


 僕が倉庫魔法から荷物を出す、その量は、馬車にすると一台半くらいはあるだろう。空だった部屋の半分以上が荷物で埋まった。



「これはたまげた! こんな量を持ってくるとは。この時期に肥料をやるのが、牧草にとって最善なのじゃが、ちょうど切らしてしまってな。肥料が届いて本当に助かった。ちょっとこれから()いてくる」


「雨の中、大変でしょう。僕も手伝いますよ」


「えー、俺たち、今日は雨の中を延々と歩いて来たんだぜ」


「でも、雨の中、1人で肥料を撒くとなると大変でしょう」


「……ああ、わかったよ。俺も手伝うからパパッと終わらせちまおうぜ」


 お爺さん1人だと大変だと思い、僕が手伝いを名乗り出ると、タカオも嫌々ながら協力してくれた。



「どれくらいの量を撒くんです?」


「とりあえず3袋くらいかのう」


「では3袋、倉庫魔法に入れておきますね。重いので、使う時に、使う分だけ出していきましょう」


 この会話を聞いていたタカオが、ジェフリーさんにこんな質問をする。


「肥料って、そこら辺に撒き散らすだけで良いのか」


「ただ撒くだけじゃの。他にも色々とやり方はあるが、今回は手っ取り早く撒くだけじゃ」


 それを聞くと、今度は僕に質問をしてきた。



「ユウリ。倉庫魔法から少しずつ肥料を取り出せるか?」


「できると思うけど。やってみるね」


『指でひとつまみ』くらいの、少ない量を想像して、肥料を手のひらに取り出してみる。すると、想像通りの量が取り出せた


「うん、できるみたい」


「じゃあ、肥料を取り出す位置を、少しずつ、ずらしながら出来るか?」


 ここで僕はタカオのやりたい事が分かった。


「ずらしながら連続して出して行くイメージだね、スプリンクラーか散水車(さんすいしゃ)みたいな感じで」


「そうそう。問題は、どれほど遠くにまで撒けるかだけど」


「まあ、やってみるね」


 僕は手近な場所から撒き始めて、どんどん距離を伸ばしていく。



 試して解ったのは、倉庫魔法の取り出し位置は、50メートルくらいは問題なくずらせるらしい。つまり、左右で50メートルずつ、幅100メートルの散水車のように肥料が撒けるというわけだ。


 僕らは牧場内を軽く一巡して、あっという間に肥料を撒き終える。ジェフリーさんは、この様子を見ていて、しばらく呆然(ぼうぜん)としていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] のびたとドラえもんの関係だなあ あとタカオは一人でもずぶとくいきそう ユウリさんは一人だとあんまり暴走しないかな
[一言] ほんと便利すぎるな!  発想と能力が別人でペアなのが面白い。
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