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誓約とギアス 2

 女神、マグノリアス様から『天界からのギアス』という『呪い』を教わった。約束をして、その約束を破れば呪いが降りかかるらしい。どういった約束か、どのような呪いを受けるかといった内容は、契約する時に自由に決められるらしい。



 とりあえず、僕は遠くに離れているタカオを呼び寄せる。すると、タカオは驚いた様子で言う。


「あれ? 男に戻らないんですか?」


諸事情(しょじじょう)により、僕はこの世界にいる間は、女神でないといけないらしいのです。それなので、あなたを男に戻す事はできません」


「そ、そんなぁ。一生のお願いです、男に戻して下さい。戻して頂ければ、どんな命令にも従いますから」


 タカオは再び土下座をして、地面にグリグリと頭をこすりつける。こうなるとちょっとかわいそうになってきた。


「わかりました。それなら約束を守れば、戻してあげますよ」


「本当ですか? どんな約束でも守ります!」


「神との約束です。この約束を破ると呪いがかかりますが、それでも約束をしますか?」


「はい! 男に戻れるなら、どんな約束でも!」



「では、こうしましょう。スキル『神秘的な魅力』を使って、女の子にイタズラをしない。もしイタズラをするようなら、あなたは再び女性になってもらいます。それで良いですか?」


「それで大丈夫です! はやく戻してください!」


 なんだか調子が良い気がするが…… まあ良いか。僕は神託スクリーンに表示された呪文を唱える。


「この者、神より授かりしスキルを悪用せぬ事を誓う。誓いを破れば、神罰として性別を()()に女性に変えよ『天界からのギアス』」


 僕が呪文を唱えると、タカオの周りにスポットライトのような光があたる。おそらくこれでギアスが掛かったのだろう。引き続き、僕は男性に戻す呪文を唱える。


「この者の性別を元に戻せ『神のいたずら、性別の反転』」


 小さな(いなずま)がでて、タカオがみるみるうちに男にもどった。


「やったぜ! 男にもどった。さっそくだけど、ユウリ、おっぱい見せて」


 タカオは再び電に打たれて、女に戻った。男に戻っていた時間は10秒くらいだろうか。



「な、なんでだよ! 触れずに見るだけだったら、どう考えてもセーフだろ?」


「どう考えてもアウトだよ。そんな要求をしたら、あきらかにセクハラだよ!」


「そ、そうか。異世界だから平気だと思ったのに…… ま、まあ、あれだ。もう一回チャンスを下さい。今度は気をつけますから。この通りです」


 タカオがまたもや土下座をしてくる。まったくこの男は……

 僕は、あきれながらも、もう一度だけチャンスをやる事にした。


「はい、『神のいたずら、性別の反転』」


 魔法を唱えるが、先ほどと違って(いなずま)は出てこない。タカオから質問が飛んでくる。


「……魔法がでてませんよ。俺は女のままです」


「おかしいな? 『神のいたずら、性別の反転』」


 2度ほど魔法を唱えてみても不発だった。原因を知るため、神託スクリーンを見てみると『権限エラーの為、魔法が使用できません』と表示されていた。



 先ほどのエラーと同じだ。解決法が分らないので、再びマグノリアス様に電話を掛けて聞いてみる。


「マグノリアス様、再びすいません。タカオに性別の反転の魔法を掛けても、男に戻らないのですが」


「失敗の原因は…… なるほど、ギアスを掛けるときに『神罰として性別を()()に女性に変えよ』と、条件をつけましたね。『永遠』なので、これだと佐藤タカオは、この世界にとどまる間は、女性に性別が固定されますね」


 神託スクリーンに出てきた呪文をそのまま読んでしまったが、僕はそんな事を言っていたのか……


「もしかして、タカオが男に戻るには、この世界の魔王を倒さないと無理ですか?」


「ギアスを外せるアイテムは存在する場合もあるのですが、極めて(まれ)ですね。この世界の攻略難易度は低いので、存在するかどうか分らないアイテムを探すより、魔王を倒した方が早くて確実でしょう」


「わかりました。ありがとうございます」


 マグノリアス様との電話を切ると、僕は女の子のタカオに向って言う。


「男に戻す前に、魔王を倒しに行こう」


「えっ、ちょっと待って。先に俺を男に戻してからでも……」


 僕は遠くにある街にむかって歩き出した。タカオを振り切るように、ちょっと早足で。

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