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魔術師ギルドの依頼 14

 お酒を飲んで、気がついたら翌日の朝になっていた。昨日の夕方に、魔法でキャンプ場を作ろうとして、湖のほとりまで行った事は覚えているのだが、その先が全く思い出せない……


 タカオは記憶があるようなので、話を聞き出してみる。


「タカオ、ここはどこ? 僕は昨日に何をやったのかな?」


「……もしかして覚えてないのか? ここは村長さんの家で、昨日の夜は泊まらせてもらったんだ。夕方には、魔法でホテルみたいな建物を作ったんだが、覚えてないのか?」


「えっ? ぜんぜん、覚えていない……」


「そうか…… まあ、それなら朝食を食べた後にでも、確認をしに行くか」


「うん、そうだね。そうしよう」


 身支度をして、僕らは食堂へと向った。



 食堂に着くと、アネットさんが既にいたのだが、顔色がかなり悪い。グッタリと椅子にもたれ掛るように座っていた。


「どうしたのアネットさん? 風邪(かぜ)でもひいたの?」


 僕が話かけると、アネットさんは弱々しい声で返事をする。


「あ、あまり大きな声を出さないで下さい、昨日お酒を飲み過ぎたみたいで、二日酔いで頭が痛いんですぅ~」


「分ったよ、とりあえず魔法をかけておくね。頭痛を治せ『治療の奇跡(キュア)』」


「おっ! スーッと頭痛が消えました。ユウリさん、ありがとうございます!」



 二日酔いが治った所で、アネットさんに気になる質問をしてみる。


「あの、 昨日の夜に僕が何をやったか覚えていますか? お酒を飲み過ぎたみたいで、さっぱり覚えていないんですよね……」


「私も飲み過ぎで、全く記憶が無いんですよ……」


 どうやらお酒で失敗したのは僕だけでは無いらしい。それだけ、この村のお酒が美味しかったという事だろう。



 僕らが食堂で話していると、部屋の奥の方から村長さんがやって来た。


「ユウリさま、昨日はお疲れさまですじゃ。こちら、朝食となっております」


 そういって、うなぎを持ってきた。


「朝からうなぎですか? これを作るのに、すごく時間がかかったでしょう」


 僕が少し驚きながら言うと、村長さんは、さも当然に答える。


「いいえ、ユウリさまの昨日の大魔法の偉業(いぎょう)にくらべれば、こんなものは、たわいもない手間ですじゃ。どうぞ食べてくだせぇ」


「あっ、はい、そうですか、それではいただきます……」


 朝からわざわざうなぎを出して来たことも驚きだが、昨日は僕に普通に接していたハズの村長さんが、

今日は敬語で話してきた。僕は何をやってしまったのだろうか……



 朝食を食べ終わった僕たちは、村長さんの案内で、湖へと向う。

 森の中を10分ほど歩き、湖畔(こはん)に到着すると、そこには学校の校舎くらいはありそうな、石造りのビルのような建物が出来ていた。


「……こんな建物は、昨日は無かったですよね?」


 アネットさんが、驚いた様子で言うと、村長さんが答える。


「ええ、昨日までは何もない湿地じゃったが、ユウリさまが一晩(ひとばん)で建ててくれたのですじゃ」


 信じられないといった表情を浮かべながら、アネットさんがポツリとつぶやく。


「こ、こんな物を一晩で作るなんて…… これは、歴史に残る大魔法かもしれません……」


 それは、いくらなんでも大げさではないだろうか。このくらいの魔法を使える人は、探せばいくらでも居そうだけれど……



 呆然(ぼうぜん)としているアネットさんに、タカオが声をかける。


「中も確認してみようぜ。昨日、ユウリがけっこう作り込んでいたからな」


「あっ、はい、そうですね。中も詳しく調査をしてみましょう!」


「よし、じゃあ行こうか」


 タカオを先頭に、僕らは建物へと向う。



 建物に近寄ると、遠くで見ていたよりも大きかった。高さは15メートル、幅は50メートルくらいはありそうだ。壁には、窓のような穴、出入り口のような穴、大小さまざまな穴が空いているのだが、タカオは正面のひときわ大きな穴へと進んで行く。


「ここは玄関にする予定だと言ってた。ここから入って行こうぜ」



 大きな穴の中に入ると、そこはホールのような空間だった。横幅20メートル、奥行き30メートルくらいありそうで、天井は吹き抜けらしくかなり高い。ここでバスケットボールができそうなほどの巨大な部屋だった。部屋の奥には、上に続く幅の広い階段がある。


 いっしょに着いてきてくれている村長さんが、アネットさんに自慢するように言う。


「かなり立派な建物ですじゃろ」


「中に入って驚きました。本当にこんな巨大で複雑な建物を一晩で……」


 あっけに取られているアネットさんに、村長さんはさらに追い打ちをかける。


「この建物は3階建でのう、この村にはもったいないくらいの建物じゃな。宿泊施設としての設備も、ユウリさまが魔法で揃えてくれたのじゃ」


「設備まで作るなんて…… いったいどんな魔法を使ったのでしょう。詳しく施設内を見て行きましょう!」


『魔法』と聞いて、アネットさんが目を輝かせはじめた。どうやら魔法ギルドの研究員としての探究心(たんきゅうしん)に火がついたらしい。

昨日の僕は、いったいどんな魔法を使ったのだろうか、何か変な魔法を使っていなければ良いのだが……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 後で聖遺物になるやつだな [気になる点] 神の見技よー
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