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魔術師ギルドの依頼 11

 この村の近くの湖では、うなぎが捕れるらしい。うなぎを使った料理もあって、食べさせてもらえるらしい。

 タカオはごちそうが食べられると喜んでいたのだが、出てきた料理は『うなぎのゼリー寄せ』という、ぶつ切りのうなぎを、濁ったゼリーに閉じ込められた物が出てきた。


「み、見た目は悪いが、高級食材の『うなぎ』だからな。食べてみるぜ」


 タカオが恐る恐る食べてみる。しばらく味わってから感想を言った。


「うーん、食べ物として、食べられない訳じゃないが、これはちょっとなぁ……」



「どんな味なの?」


 僕が質問をすると、眉間(みけん)にしわを寄せながら答える。


「……表現しづらいな、とりあえずユウリも食べてみろよ」


「……う、うん、じゃあ、一口だけ頂くよ」


 うなぎのゼリー寄せを口に含むと、味は少し酸っぱい、そして魚の生臭さが口の中に広がる。

 よく味わってみると、酸味は、生臭さを消す為に、レモン汁を使っているみたいだが、生臭さが(はる)かに勝っていて、ぜんぜん打ち消せていない。うなぎの油も予想以上にしつこくて、油の塊を食べているみたいだ。。



「これは、あまり食べたくない料理かも……」


 僕の感想に、タカオがうなずきながら言った。


「ああ、俺もそう思う。暖かい料理じゃなくて、冷たいから、さらに油がくどく感じる。村長、他にうなぎを使った料理は無いのか?」


 村長さんが、申し訳ないなさそうな顔で答える。


「うなぎを使った料理はこれだけです。やはりお口に合いませんでしたか…… 仕方ありません、ここはうちのハナコをつぶしてご馳走を……」



 うなぎ料理がマズいので、村長さんが大切にしている牛を、つぶすという話になってしまった。慌ててタカオが止めに入る。


「大丈夫だって、うなぎは調理法によってはごちそうになるんだから。そうだユウリ、蒲焼(かばや)きの調理の準備を進めてくれないか。俺はうなぎを捕ってくるから」


「良いけど、うなぎは、すぐに捕まえられるのかな?」


 僕の疑問に、村人の1人が答えてくれる。


「すぐに捕まえられますよ。湖に釣り糸を垂らせば、アホみたいに釣れますよ」



 簡単に釣れると分り、タカオがやる気を出す。


「よし、じゃあ、釣りに行ってくるか。ユウリは残って、料理の準備を頼んだぞ!」


「うん、任せておいて。ところで、アネットさんはどうする?」


「タカオお姉さまに着いて行きます。もしもの時に、私の魔法が役に立つかもしれませんから」


「そうだね、それじゃあ、行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 タカオをアネットさんは、村人に案内されて、湖の方へと歩いて行った。



 残った僕は、主婦のみなさんに囲まれた。


「あの、うなぎを美味しく食べられる料理が、本当にあるんですか?」「作り方を、是非(ぜひ)とも教えて下さい!」


 お願いをされたのだが、あまりにも必死な様子だったので、その迫力に圧倒されてしまう。


「お、落ち着いて下さい。分りました、それではみんなで作ってみましょう」


「「「ありがとうございます」」」


 まだ教えてもいないのに、主婦のみなさまからお礼を言われてしまう。僕もうなぎを(さば)くのは初めてなのだが、上手く出来るのだろうか……



 主婦のみなさんに連れられて、村の集会所にやってきた。この集会所には、かまど等の調理場があり、料理ができるようになっている。


 まずは『うなぎのタレ』を作る。倉庫魔法から材料を取り出しながら、みなさんに説明をする。


「始めにうなぎ専用のタレを作ります。材料は醤油(しょうゆ)、みりん、料理酒、お砂糖です。弱火で焦がさないようにかき混ぜながら、煮詰めれば完成です」



 すると、主婦の1人から声があがる。


「『醤油』ってなんですか? 初めて聞く調味料です」


『醤油』は、街のスーパーに行けば手に入るが、どうやら、まだ田舎の方には普及していないらしい。倉庫魔法から、余分に買って置いた在庫を取り出す。


「えーと、これは街に行けば、比較的、簡単に手に入ります。1リットルで、だいたい銀貨1~2枚といったところでしょうか。そんなに高い調味料ではありません」


「その値段なら買えます」「次に街に行った時に買ってこよう」


 主婦の方々から声があがった。この世界では、銀貨1枚が、およそ1000円くらいなので、醤油1リットルは1000~2000円という計算になる。日本のスーパーに比べると、安くはないが、そんなに量を使うわけではないので、一本買えば1~2ヶ月はもつだろう。庶民(しょみん)でも、十分に手の届く値段だ。



 火に掛けて、10分ほどで煮詰まり、あっという間にタレが出来上がる。続いて、お米を炊く。


「ええと、お米を炊くのですが、この村でお米って流行(はや)ってますか?」


「いいえ、食べた事はないです」


「では、1から教えていきます。洗ってから、30分以上、水に浸けておきます」


 米の研ぎ方から、火の調整まで丁寧におしえていく。やがて、お米が炊き上がった頃に、ちょうどタカオが帰ってきたようだ。


「たくさん捕れたぜ! 今日はごちそうだ!」


 どうやら無事に確保できたらしい。いよいようなぎの本格的な調理が始まる。


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― 新着の感想 ―
[一言] うなぎは血液に毒があって専門の免許が必要だった記憶。 あと、白焼だったかな? タレ使わないのもあるけど食べた事がない。 やっぱり鰻はタレかなって。
[良い点] 前来た農家の人は 魚料理に詳しくなかったのか…
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