遺跡とダンジョン 10
ダンジョンの調査が終わり、僕らは街のギルドへと戻ってきた。すぐに調査報告をしようとしたのだが、タカオがちゃんとに寝ていないので、しっかりとした受け答えが出来ない。
詳細な報告は、翌日になり、この日は早めに休む事となった。
宿の部屋に入ると、タカオはそのままベッドに突入して、瞬時に眠りにつく。
シャワーも浴びずに眠るのはどうかと思う。しかし、わざわざ起こすのも悪いので、僕は『洗浄』の魔法でタカオの体を浄化した。本当にこの世界の魔法は便利だ。
翌日、朝食の後、マクダさんと合流してギルドに報告をする。報告する相手は、もちろん受付員のエノーラさんだ。タカオが得意気に話をする。
「同じ階層が3つあって、地下1階は罠に目印がしてあるんです。地下2階は、罠をくらっても特にペナルティーは無い。地下3階は、罠に引っかかると、引っかかった罠の数だけ、後で銀貨を請求されます。俺は、1つも罠に引っかかりませんでしたけどね!」
そう言ってドヤ顔をした。僕が少し補足をする。
「ええと、罠に引っかかっても、おもちゃの矢が飛んでくるだけで、危険は全くありません。あと、入り口に『難易度はEランク、年齢制限は6歳以上』と書かれていました」
「危険性は無いダンジョンのようですね」
エノーラさんが納得しながら聞いていると、マクダさんが反論をする。
「いやぁ、意外と危険だと思うよ。タカオくんが罠の位置を覚えて、その後に私とユウリくんがついていったんだけど、二人でペナルティーの矢を7本も受けちゃって、銀貨7枚の大金を支払ったんだ。罠の位置をまともに覚えないと、クリアするのに幾らかかるかわからないよ」
「なるほど、そう考えると、意外と危険なダンジョンかもしれません。財布に直接、ダメージが行きますね」
始めに突入した時を思い出す。あのときは地下2階で引き返したが、矢は3人で50本はくらっていたハズだ。あのまま最後まで突っ切っていたら、かなりの出費になっていただろう……
「中の情報は分りました。ダンジョンの場所はどこにありましたか?」
エノーラさんの質問に、マクダさんが地図を指さしながら答える。
「だいたいここら辺かな。ユウリくんが目印に塔と橋を建てたから、すぐに分ると思うよ」
「塔と橋を…… いったいどうやって建てたのです?」
その質問には、僕が答える。
「『城壁』の魔法ですね。石で出来ているなら、かなり大きな物でも作れるみたいです」
「あの未知の魔法ですね。大きさはどのくらいの大きさですか? 2~3メートルくらいでしょうか?」
タカオが思い出しながら言う。
「えーと、高さは50メートルくらいはあったと思う」
「ご、50メートルですか! それは何かの間違いでは?」
エノーラさんが驚いた表情で聞き返してきた。マクダさんが真面目な顔で答える。
「50メートルは言い過ぎかもしれないけど、40メートルくらいはあったと思うよぉ」
「そ、そんな巨大な建物を…… それだけの規模の大魔法となると、呪文の詠唱には、それなりに時間がかかりますよね?」
僕の横にいるタカオが正直に答える。
「いや、一瞬ですよ。簡単そうに使ってました」
「……わかりました。後日、『城壁』の魔法について、後で色々と調べさせて下さい。ユウリさん、ご協力をお願いできますよね?」
「あっ、はい。わかりました」
他の人も、魔法で簡単に建物を作っていると思ったのだが……
もしかして、これは異常な事なのだろうか……
……そこまで僕は異常ではないだろう。念のため、ステータスが記されているギルドカードを改めて見てみる。すると、ある数字が変っているのに気がつく。
「あっ、知らない間にレベルが上がってます。新しいスキルが取れますよね?」
「ええ、はい、そうですね。取得できるスキルを調べますか?」
「お願いします」
エノーラさんが、スキルを調べる魔法道具の方へと、僕らを移動させる。
よし、うまく『城壁』の魔法から、上手く話題をそらせる事が出来た。もうこれで大丈夫だろう。