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神への転生 1

 夕方からのバイトが終わり、少し寄り道をする。

 深夜の誰も居ない公園に行き、ジャングルジムのてっぺんに座ると、暗い夜空を見上げた。

 今日はふたご座流星群がピークを迎える予定だ。僕はこの特等席で、壮大な天体ショーが始まるのを待ち構える。


 ジッとしていると、12月の寒さが指の先から広がってくる。ポケットに突っ込んでいた缶コーヒーを取り出すと、指を温めながらゆっくりと口にした。


「ブラックはやっぱり苦いな、いつものミルク入りのにしておけば良かった……」


 眠気覚ましにブラックコーヒーを買ってみたが、かなり失敗した。僕はいつもの甘いコーヒーの方が似合っている。チビチビと無理をしながら苦いコーヒーを飲み、半分ほどに減ると、お待ちかねの天体ショーが始まった。



 流星が次々と現われ、(またたく)く間に消えていく。ふたご座流星群は一時間で40~60個くらい現われるらしいので、一つが消えると、次が入れ替わるように光の筋を残していく。


「願いを3回言えば叶うなんて言うけど、3回も言うなんて絶対に無理だよなぁ」


 流れ星は、本当に一瞬で消える。確か(ちり)のような物が、地球の大気圏に突入して光るとかいう話だったハズだ。塵ならばすぐさま燃え尽きるだろう。


 観測をしていると、空に長く光る(てん)が現われた。その点は、消えず動かず、大きくなってきている気がする。


「あれ? もしかして、こっちに向って飛んできて……」


 次の瞬間、僕の意識は吹き飛んだ。



「……ユウリ、木ノ原(きのはら)ユウリ、目覚めなさい」


 名前を呼ばれた気がして、目を覚ます。周りを見渡すと、そこは見たこともない場所だった。

 白い床に白い壁、天井は無く、雲一つ無い青い空が広がっている。

 不思議な場所だったが、なぜか神殿(しんでん)の中にいるという感覚に襲われた。


「目覚めましたね、木ノ原ユウリ。あなたはこれから勇者となって世界を救うのです」


 ……きれいなお姉さんが、僕に怪しげな勧誘をしてきた。なんだろう? これは、新手(あらて)新興宗教(しんこうしゅうきょう)のお誘いだろうか?



「し、新興宗教などではありません! 私は(みちび)きの女神、マグリアノスという者です」


 あれ? 口に出していないはずなのにおかしいぞ? もしかして、お姉さんが僕の考えを読み取っているとか……


「ええ、女神の私にかかれば、心の声を聞くなど簡単な事です」


 ……なるほど、これは夢だな。流星群を見ていて、僕はいつの間にやら眠ってしまったらしい。


「……私の言う事が信じられないようですね。いいでしょう、これが現実だと分らせてあげましょう『神罰の(いかずち)!』」


 お姉さんがそう言うと、ビッシャーンと(かみなり)が僕の体を貫いた。体が内側から引き裂かれるような激痛が全身に走る。


「ぎゃああぁぁ」


 ここでの出来事は夢では無かったようだ。これは死んだな、僕は女神の怒りを買って、殺されてしまったようだ。



「いえいえ、殺してはいませんよ。まあ、死んではいるのですが。これが現在のあなたの姿です」


 そう言って女神さまは鏡を取り出してきた。そこには青白い炎の塊。いわゆる人魂(ひとだま)のようなものが映り込んでいる。


 あれが僕なのか?


 自分の手を見て確かめようとするが、そこに体はなく、揺らめく陽炎(かげろう)のような炎しか見当たらない。


「あなたは死んでしまって、いまは魂の状態にあります。これから新しい肉体を授けますので、異世界に行き、その世界を救って下さい。特別な『ユニークスキル』を、3つも取得できますよ」


 女神様が自信たっぷりのドヤ顔で、訳の分らない事を言う。さて『異世界』や『ユニークスキル』ってなんだろう? 聞いた事の無い単語だった。

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