シェーラ
「ありがとう……ございました」
ようやく声が出せるようになった頃。
まずは自分の置かれている状況を把握しなければ。
もう一度落ち着いて部屋を見渡す。
生まれてこの方見たこともないような綺麗な物でいっぱいだった。
綺麗で繊細な上に上品さが溢れ出でいる家具ばかりが置かれている。
ここはどこだろう。そして、この人は一体どんな方なのか。
じっと横に座る少女に目を向ける。
目が合うとふわっと微笑まれた。
「何か、聞きたいことでもあるかしら。遠慮なく聞いてくれて構わないわよ」
……心が読まれた。
「……あの、えっと、どうして、わたしはここに」
「あら、まだ言ってなかったわね。ごめんなさい、まずは自己紹介からよね。」
そう言うとシェーラはすっと立ち上がると背筋を伸ばし、ひとつのブレも無く礼の姿勢をとった。
「私は、サンブレッド王国、第一王女、シェーラ・サンブレッドと申します」
……え、オウジョ、お、王女、様。
え、まじで。
本物?
しばらくフリーズして動けなくなったわたしに構わず、シェーラ、いやシェーラ様は話を続ける。
「私たち今、この村の視察に訪れていてね。ここはわたしの部屋よ」
王女様の部屋?
ルアは気づく。
わたし、なんだか凄いところにいるんじゃない?
「じゃあ、わたしは3日も王女様のお布団を占領していたんですか」
やばい奴ではないか。わたし、大丈夫なの?
かなり真面目に言ったのだか、なぜかくすくすと笑われてしまった。
なんでだろ。
「やだ、占領だなんて。あんな大変な目にあったのだからこれくらいどうって事ないわよ。そうね、ご褒美だと思って」
ご褒美……
別にわたしはご褒美を貰えるようなことは何もしてない。
ただ、逃げただけ。
リアードのことも助けられなかった。
「ルアちゃん……」
心の中で喋っていたつもりだったが、どうやら口から漏れていたらしい。
しかしそれを誤魔化すのも面倒くさく感じてしまい、話を逸らすため質問を続ける。
「どうして、わたしみたいなただの平民の山娘が、王女様の部屋で看病を……」
王女様の表情が一瞬すっと真剣になり、それからまたすぐににこにことした表情に戻る。
「2人でいる時は、私のことを王女様だなんて呼ばないでいいわ。シェーラと呼んで頂戴」
「……じゃあ、シェーラ様で」
なんか、意外。王族って、もっと偉そうにしてるもんだと思ってた。
もっともこの国の王たちは歴史的に見ても優秀で民想いだと聞いていたけど、まさかこんなにフレンドリーだとは。
「ええ、よろしくね。
それから、ルアちゃんが私の部屋で看病していることについてなんだけれど……確かに、普通悪魔に襲われたからと言って、わざわざ私の部屋に運ぶことはしないわ。はっきり言うと、あなたは特別なの」
え、なぜ。
「どうしてか、分かるかしら」
わたしが、特別待遇を受ける理由?
分からない。分からなさすぎる。
ふるふると首を横に振ると、シェーラ様はにやっと悪戯っ子のような顔をして、懐からある物を取り出した。
「それはね……あなたがこの石を持っていたからよ」
これから雰囲気が明るくなっていくかなって感じです。
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