訓練そのに!
どこでも寝れるタイプとはいえ、数日ですっかりこの家にもこのベッドにも慣れた。
寝心地はいいし、そもそも住み心地がいい。
部屋という自分だけの居場所があることは、思った以上に精神衛生上いいらしい。
というわけで朝。
この世界に目覚ましというものはない。気合でおきなければ、普通に寝過ごしてしまう。
目が覚めて一番最初にすることは、窓から外を見て日の高さを確認すること。
もし万が一寝すぎていたら、テオさんにどんな嫌味を言われるかわかったものではない。
…でも、テオさんって私を起こさないんだよね。
嫌味は言うけど、寝ているのを無理に起こしたりは絶対しない。
やさしいんだか意地悪なんだか、わからない人である。
もそもそと着替えて、帽子とネックレスを装着する。
まあ十中八九テオさんにはバレてると思うけど、つっこまれない限りはこの格好でいようと思う。
少年スタイルは動きやすくて楽だし。体の凹凸もないから困らないし。
…少しだけ悲しくなってきた。やめようこの話。
着替えてからテオさんがいるであろうキッチンのある部屋に行くと、予想に反してテオさんはいなかった。
「…テオさん?まだお部屋ですかー?」
声をかけてみたけど、テオさんからの返事はない。
そういえばテオさんのお部屋って入っていいんだっけ? どこに入ってもいいって言ってたような。
そっと扉を開けようとしてみる、が、鍵がかかっているのか、扉は開かなかった。
デスヨネー。
「うーん?」
テオさん、どこにいったんだろ。
と、ふと机を見てみると、置手紙があった。
『出かける。明日の朝まで帰らない。好きにすごせ。』
またか。またおでかけか。私をおいて。
どこにいってるんだろう。
思い出すのは、傷だらけで帰ってきたあの日の姿。
光沢のある血、血のにおい、くらくらするような色。
「…テオさん…」
怪我しないでくれたら、それでいいんだけど。
いないものは仕方ないので、私は最低限の家事を終わらせて修行をすることにした。
そういえば、昨日のたくさんの荷物、起きたらなくなってたけど…どこにやったんだろう?
家事も一通り終わった。そもそもテオさんが朝まで帰らない宣言している以上、一人分の食事だけでいいのだ。手間はかからない。
食料庫代わりに使われている部屋には、さまざまな調味料が置かれている。私が使い方を知らないものもあって、今度テオさんに聞いてみてからでないと使えないものも多い。
洗濯もテオさんの分はないし、仕事はあまりに少ない。
と、いうわけで、今日も修行に励むとしよう。
「んーとはいえ、テオさんみたく細長くきれいに伸ばせないんだよね…」
あの人めちゃくちゃ魔法上手だとは思ってたけど、実際に手本を見て自分でやってからだと、どんだけすごいんだよ、と言いたくなる。
とにかく細長く出力することに集中してみても、ふとした拍子に途切れてしまうし…
長く出すことに集中すると、太さがマチマチだ。
すぐ出来るようになるなんて甘ったれたことを考えたわけではないけど、早く一人前になってここを出たいのに。
……出たい、のかなあ。
別にずっとここにいても…
いやいや!出たほうがいいに決まってる。
テオさんは親切だし優しいけど、あの契約がある以上、監視されちゃうわけで。
自衛手段を手に入れたらとっとと旅して、あの契約書の破棄方法についても調べていきたいし。
「集中力、切れてきたなあ」
なんやかんや数時間練習していた。日も落ちてきたし、これ以上体力を使って寝込んだりしたらまずい。
魔法を使うと体力を消費するのだ。当たり前だけど。
私は加減がヘタだし、おとなしく部屋に戻ろう。
適当に食事を済ませて、そこらへんに置いてあった本を読んで、眠る。
誰にも会わないで済む空間は最高、だけど、テオさんが戻ってこないとつまらないな、と思った。
次回から新キャラ出ます。やっと出ます!
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