魔力量測定イベント2
「お前の魔力は、あの犬どもに放ったもので確認していた。
まったくひねりのない、きちんとした使い方を知らない垂れ流しの魔力でも、一匹退けていたな。
であれば、最低限の力があることは分かる。
その力を最低として、上限をはかるために必要な魔石のサイズを考えてこれを用意した。」
あの犬どもって、森で会った魔物のことだな。
まったくひねりのない、とか、垂れ流し、とか、言葉の端々に多少の悪意は感じるが、おそらくテオさんはただ口が悪いだけなんだろう。たぶん。そう思いたい。これは悪意を感じているのが気のせいだと。
テオさんは黒く染まった魔石をなでながら、話を続ける。
「この魔石は微弱に溜まっていた魔力を一度私が吸出し、完全な無属性にし、表面を囲って合図するまではどんな魔力の影響も受けないようにしていた。
そのため、魔力を貪欲に吸い込むものになっていた。
さすがに魔力切れを起こすほうが先かと思っていたが…。」
…ものすごーく高度なことを言い出した。
一度魔石から魔力を抜く…?そんなこと出来るの???
しかも無属性にして?表面を囲う?…コーティングってことだよね。
自然の中にも魔力が存在している。
だから、魔石には微弱な魔力が溜まっていて、それによってある程度魔石に組み込む魔法の方向性を決めると聞いていた。
自然の魔力がたまらないようにコーティングするって、どんなチート能力だよ…
普通異世界転生した私がチートだろうよ、テオさん…君実は転生者だったりしない?
「魔力切れを起こす前に、魔石が魔力で満たされたようだな。」
「魔石の許容量いっぱいまで、僕の魔力が持ったってことです?」
「そうだ。」
へえ、知らないうちに魔石と根競べしてたんだ。
ほんっとにもう少しでいいから、テオさんは説明するということの重要性を理解してほしい。
「なにより、ルネ。」
「はい?」
テオさんが目を細めて、私を観察する。
すべてを見透かすような、あの目だ。
「あのお、そんなに見られると居心地悪いんですけど!」
「セクハラか?」
「です!」
「お前は魔力の回復が通常の人間より早いな。1.5倍…いや、2倍か…?」
テオさんは私の返事を一切気にせず、さらにジロジロと視線を滑らす。
「回復が早く、魔力も強大。能力は高いな。喜べ。」
「…わーい…。」
ジロジロ見ながら近寄ってくるものだから、顔が非常に近い。
あまりに近いので離れて欲しい。顔がいいことを自覚してほしい。
「…テオさんその魔石どうするんですか?」
「売る。」
「え?!でもまって、黒い魔石っていうのはちょっと危険なんじゃないですか?
だって、魔物の魔力を吸った魔石だと思われません?」
「そう思われる可能性もあるし、思われない可能性もある。それは受け取った相手の判断だからわからない。
が、たとえそう思われても問題はない。」
「問題だらけですよ!
黒魔力がいかに迫害されているか、森住まいだとしてもわかってますよね?
危ないですって!」
「表ではそうかもしれないな。
だが、黒魔力は希少価値自体は高い。
世の中にはコレクターもいるんだ。自然発生した魔石にここまで魔力が溜まったのだと思って喜んで高額出すものもいる。
この魔石に込めた魔力は魔法式もなく能力も皆無でなにも役に立たず強いていうなら観賞用程度でしかないとしても、マニアが高値をつけるには十分な見た目だ。」
とげが!ありすぎると!思うんですよ!!!
なんでいちいちそう、言葉に棘があるんでしょうかねえ?!
「……それに、これは別の価値もある。」
「え、価値?あんなにボロクソに言っておいて、別の価値って?」
「黒い魔力は、魔物にとっては普通のものだ。
それに、迫害するのは主にこの国の人間、他国では差別があまりない国もある。」
えっと、どういう意味?
魔物にとっては普通だから、魔物にとっては危険ではない魔石?ってこと?
差別の少ない国なら危険視されないって言ってるし、これって…売る相手が他国、もしくは…魔物?っていう示唆なのかな…?
「…テオさんって魔物に知り合いいるんですか?」
「いたって不思議ではないだろう、私はこの見た目だ。」
そう言ってテオさんは自分の角を指さして、自嘲気味に笑った。
…これもしかして地雷踏み抜いた?
「あの、あの」
「この魔石の行方はお前が気にすることではない。
今日はお前が一度に魔力を大放出しても酔いがないことと、回復が早いこと、魔力量が人並み以上であることがわかった。
次お前がやることは、魔力の出力を絞る訓練だ。」
大して気にした様子もなく、さらっと話題を変えられてしまった。
これでわざわざ話を引き戻すほうが嫌だと思う。ここは素直に流れに乗ろう。
「魔力の出力を絞る訓練って、具体的に何をするんでしょう?」
「手本を見せる。」
テオさんは、右手の人差し指を立てた。
長い爪の先から、黒い線が宙へ伸ばされていく。
木々の高さあたりで途切れたその糸のような魔力は、ぶれず、真っ直ぐだ。
「これと同じことが出来るようになるのが、目標だ。」
「なるほど。コントロールの訓練の一環ですね!」
「そうだ。
最初はこれほど細く出来ないだろう。まずは、腕くらいの太さで構わない。
それを木の高さあたりまで、なるべく真っ直ぐ伸ばす。
一定の出力を維持できなければ、魔力は太くなったり細くなったり、ブレが出る。
それをなくす努力をしているうちに、ある程度のコントロールが身につくだろう。」
「…おお…わかりました!」
「好きな時間に好きなだけ挑戦するといい。決まりはない。
お前が上達が早かろうが遅かろうが、私は構わない。」
そう言って、家に入っていった。
テオさんは言葉足らずで説明という概念をどこかに捨ててきているような超失礼な人だったから、まさかここまでちゃんと教えてくれると思わなかった。
手から魔力を一定量出せ。以上だ。
とか言いそうなのに。
この訓練の狙い、目標、難しいところ、第一の目標、手本を見せる、全部とっても丁寧だ。
テオさん先生とか向いてそうだな、と思ったけれど、こんな高慢ちきで息を吸うように嫌味を言う先生なんて嫌だから、やっぱりオススメは出来ないなあ。
早速テオさんに言われたことを実践してみる。
まず指を顔の前あたりの高さで立てた。
そして、そこから魔力を…
テオさんは腕くらいの太さからと言っていたが、今私の手から出ている魔力は、人くらいの太さだ。
そして、細くしようとして途切れてしまった。
宙にある人間サイズくらいの魔力は、途切れた瞬間に霧散した。
木の高さどころか、そもそも長く出すのに失敗している。
「…ひゃー…ヘタかよ…」
これは先が長くなりそうだ。
ルネは15歳で、町田瑠音は20歳で死んでいるので、合計で35歳です。
こんなに幼女のように騒いでいますが、35歳です。
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