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やりたい放題だなこの人外。

ちょっと間が空きましたが、ストックあるので上げていきます!

「あのお、あの、契約のやりなおしは出来ませんか?」


「却下する。」



あれから三度目の申し入れを、即座に却下されたルネ・シフマンです。どうも、馬鹿です。

椅子に座ったまましばらく放心したのち、この問答を繰り返しています。



「ねえ、テオさん!契約書って双方合意じゃないといけないと思うんです!

僕は文字が読めなかったわけですし、ダメだと思うんですよ!」


「この契約は破棄についても私に一存されている。そもそも双方合意だっただろう。

私はなにか、記名することを、強要したか?」


「…してないです…」



悔しいけれど全部こちらの落ち度だ。いや、テオさんの性格が恐ろしく悪かったのが原因でもあるけど。

普通そんなだまし討ちみたいなことする????しなくない??????

素直に信じて素直に感動した私の純情返せ。とりあえずジト目で睨む。



「さて…監視することは契約上許可されている。そうだな?」


「うぇい…」


「監視のために私の『目』をお前に付ける。立て。」


「…目?」



なんかものすごく怖いこと言わなかった?


「監視するといっても、常に見ているわけではない。見ようとしなければ見えないし、お前がそれに抗う魔法を覚えれば見られることもなくなる。

まあ、それでも居場所の特定は常に出来るようにさせてもらうが。

そのために、お前に私の『目』をつける。見ていればわかる。」



促されるまま渋々立ち上がると、テオさんも立ち上がって私の顔に手をかざす。


魔法を鍛えていけば、いつでも見ることが出来るっていう状態は防げるのかあ…まだよかったかな…

でも居場所は特定されちゃうのね、それってGPS機能みたいな?

私GPS埋め込まれるのか…


また、体をテオさんの魔力がすべり落ちていく。

とろりとした魔力が体を撫でていくのがむずがゆい。これ全身テオさんに撫で回されているようなものでは?

思うにこれ、本当にセクハラだと思う。



「どこに刻もうか。希望は?」


「何がなんだかわからないので、目立たないところでお願いします。」



目をつける、刻む、ってことは、目の形がつくのかな。

だとしたら本当に顔とかはやめてほしい。目が三つあるとか、もうそれパッと見魔物だもん。


じわ、と胸元が熱くなった。

ちりちりと細かい熱が皮膚を走っているのがわかる。



「まあ、こんなものだな。」


「…」


ぬるい魔力が体から離れたので、背を向けて胸元を確認する。

服をぐいっと引っ張って胸元を見てみると、達筆すぎて読めないけれど、テオさんの名前なのかな?が、刻まれていた。

独特すぎるフォントで読めないけれど…でもテオさんの名前、もしかして本名じゃないのかな?「テオ」ではないと思う。


それにしても、また私の体を包み込んだ上、胸元に名前を刻むとか。

セクハラどころの騒ぎじゃない。

男装してるけど、男にだってセクハラになるんだからね!!!



「…これ、名前ですか?」


「そうだ。それが私の『目』になる。希望通り、目立たないところにつけたぞ。」


「服を脱いだら目立つじゃないですか…」



思わず振り返り睨みつける。

テオさんは面白そうに、



「服を脱いだらどこに刻んでも見えるだろう。…それとも、下着の下にでも刻めばよかったか?」



といいながら、す、と下半身に視線を移した。



「胸元でヨカッタナアーーーーー」



おそらく私史上最も低い声が出たと思う。

テオさんは何が楽しいのか、またククっと笑った。



「文字の読み書きから教えていかなければいけないようだな。」


「ソウデスネー」


「そんな態度でいいのか? 私が魔法を教える時期、速度については、この契約には書かれていない。そして、詳細が決まっていない部分は私に一任されている。

私が教え終わったといわない限り、一人旅も難しくなることを、わかっているのか?」


「ごめんなさい!従順でいるから意地悪しないでください!」



なんてやつだ!この人でなし!いやそもそも人外だから人でなしだった。



「ああ、そうだ。ルネ、約束しろ。

この家ではテオと呼んでいいが、外に出たときにはそれ以外で呼べ。決して名前を呼ぶな。

いいな?」


「え?あ、はい。わかりました。」



名前を呼ばれたくない?違うな、よその人に名前を知られたくない、のかな。

なんかワケありなのは確かだし、私もあまり知れ渡りたくないのは一緒。別にそれくらいはいいけど…

じゃあなんて呼ぼうかな。「先生」とかでいいかな。



「…また何か考え込んでいるな。

まあいい。ルネ、これを身につけろ。」


「…耳飾り?えっと、ピアスかな」



渡されたのは、大きめの赤い石のついたピアスだった。

触るとほのかに暖かいのは、テオさんが持っていたからかな。



「あの、でも僕、穴あけてなくて」



と言った瞬間、ひゅん、と風を切るような音がした。

顔のすぐ傍を鋭い風が通りぬけた、そう思った。

そして同時に、ブツ、と鈍い音がして、耳から首筋に暖かい液体が伝う感触。



「…え?え?」

「動くな。」



見ると、テオさんが手をこちらにかざしているのが見える。

何がなんだかわからない。



「…こんなものか。もう問題ない、それをつけろ。」


「え?僕には大問題なんですけど、何したんですか?」



予想はついているけれど、恐る恐る耳を触ってみる。

左右のみみたぶ、両方に、ピアスホールが開いていた。しかもしっかり傷が塞がっている。



「…あのですねえ!いきなり穴あけないでもらえます?!

そもそもピアスホール開けるのに許可なくって、あんまりじゃないですか?!意味わかってます?!」


「傷はすぐふさいだ。それを身に付けさせる必要があった。怒ることは想定内だったが、そこまで怒る必要はどこにある。」


「知らないんですね!でしょうね!疎そうですもんね!」


「…要領を得ない。」



もし私が動いていたら、大怪我じゃすまなかった。

せめて一言ほしかった。

いや、絶対断ったけど。



「あのですね、テオさん。オルレーヌでは、ピアスホールは親しい人が開けるんです。

親だったり兄弟だったり、恋人だったり。

最近はもっぱら恋人が開けることが多いらしいです。だから、穴が多い人は恋多き人生、という感じで見られます。

わかります?僕が怒った理由のひとつなんですけど。」


「…なるほど。では穴を塞ぐ。が、身に付ける必要があるものだ。

だから、お前が自分であけろ。道具はそろえる。」


「いやいいです!自分で開けるの怖いので!いいです!このままで!」



もっと言うと、ピアスは恋人からもらうことが多いアクセサリーなんだけど。

少しも動揺しないテオさんをさすがだなと見上げつつ、ピアスをつける。



「少しも痛くないです、治癒魔法かなにかを使ったんですか?」


「そうだ。」


「鏡とかあります?」


「…ないな。」


「この家鏡ないんですか?身だしなみ、どうしてるんです?」


「そこまで気をつけていない。お前が必要なら用意しよう。」


「うーん、お願いします…」



気が引ける気持ちはあるけど、ここまで好き勝手されているし、多少は許される気がしてきた。

詐欺まがいの契約書、体に字を刻む、耳に風穴あけてくる。全部無許可だ。さらに二度にわたるセクハラ。なんてやつだ。



「このピアスはなんなんですか?」


「ちょっとした護符のようなものだ。

攻撃されたり、なにか事故に巻き込まれそうになったとき、加護が働く。

大したものではないが、あったらあったで気休めにはなるだろう。」


「え、そんなもの借りちゃっていいんですか?」


「大したものではない。言っただろう、気休めだ。」


「ええと、じゃあ旅に出るときにお返ししますね…!」



それには返事をせず、テオさんは契約書を丸めて筒に入れている。

あれ、その筒どっから出したんだ。



「次の準備にかかるか。」


「次?準備?僕、まだ何かされるんですか…?」



今度はなんだ。痛いのはいやだぞ…というか、もう色々あきらめるから、せめて事前に一言ほしい。



「あの、お願いですから、事前に言ってください。いきなり耳に穴あけるとか止めてください、心臓に悪いです…」


「…そうだな…外に出る。」


「え?」


「町に出る。行くぞ。」


テオさんはそう言うと、私の腕を引いた。


「待って、説明不足なんですってば!

え、え?!」


そして、私を俵担ぎする。


「目を閉じていろ。酔うぞ。」


反射で目を閉じる。

そして思い出した。

ここに連れてこられたときもこうして抱えられたな、と。

昨日川辺で担がれて、運ばれているなと思ったら気がついたら地面に下ろされたわけだけれど、次目をあけたときにはこの室内だった。

…そういえば、扉の開閉音は一切しなかったな。


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