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それセクハラです。

せっかく許可が出たのだ、美味しい料理を作ってあげたい。

野菜スープも好きだけど、この食材なら、ポトフはどうだろう。

野菜を切り、具を煮込み、ほどよく落ち着いた頃味付けをして、野菜の甘みが口に優しいポトフが完成した。


「召し上がってください!きっとまともな味なので!」


出来上がったポトフは芋がほくほくとしていて美味しい。

それをよそって机に置くと、座って見守っていたテオさんがためらいもなく口に運ぶ。


驚いた。警戒心が強そうな人だから、もっと嫌がると思った。

昨日のパンだってなかなか受け取らなかったし。(そういえば昨日のパンはどこにいったんだろう?)

なのに、あっさり食べるんだもん。テオさんってよくわからない。


「…おいしい。」


テオさんは一言、そうつぶやいた。

横顔が髪に隠れてきちんと見えなかったけれど、かすかに微笑んでいるように見える。


心のなかでガッツポーズ。家で手伝いはしてたからね!母さんの料理のほうが美味しかったけど、私だって人並みには作れます!


「お口にあってよかったです!」


「お前も食べろ。」


「はい!」


促されたので、自分の分もよそって正面に座る。


テオさんは食べ方が上品だ。少量口に運び、しっかり咀嚼して飲み込む。

メールの町で見てきた男性は、ガツガツ食べる人が多かった。食事に時間をかけたがらない人がおおかったというか…

もしくは酒の席で出てくる食べ物を、酒の肴として適当につまんで食べている、といったイメージ。

テオさんみたいに上品に食べる男性はメールにはいなかった、ように思う。


…そもそもテオさんって男性なんだろうか???

勝手に男性と思っていたけど、いや男性だと思うんだけど、人でも魔物でもないなら性別があるかどうかもわからないのでは?


「何か言いたげな顔をしているな。なんだ。」


「あ、いえ、あの…」


見すぎたのだろう、そう問われてしまった。

さすがに、性別どっちだろうーと思って見てました、と正直に言うのは失礼すぎる。

テオさんと会ってから、私はテオさんに失礼なことしか言っていない気がする。


「うー…んと…失礼なことを言ってしまいそうなので、内緒、じゃだめですか?」


「お前が失礼なのは最初からだろう。」


「アッ、ハイ、ソウデスヨネ…」


返す言葉もございません…。


「いいから、言ってみろ。」


「ワカリマシタ…何か言いたげだったわけではないんですよ、食べ方が上品だなあーって思ってみてただけで。

僕が育った町ではそういった上品さは見慣れないものだったので!

勝手に男性だと思っていたんですけど、その…人でも魔物でもない、といっていたので、じゃあ性別ってそもそもあるのかな?って思って、そんな感じでつい見つめちゃってました…!すみません!」


また怒らせちゃうかな、と思って身構えていると、テオさんは思案するように目線をそらし、またすぐ食事に戻ってしまった。


「あれ、あの…?」


「なんだ。」


「いえ、てっきり怒るかなって思ってたので…あと、結局その…」


性別の答えを聞きたいなあ、と、期待のこもった眼差しを向けてみる。が、


「怒りはしない。」


だけ、シンプルな答えが返ってきた。そしてまた食事に戻ってしまう。

これはあれかな、教えたくない、みたいな…?

むー、と、不満を隠さず私も食事に戻った。


「私の性別を知ってどうする。」


少し間を空けて、テオさんはそう静かに問いかけてきた。


「えっと、別にどうもしないんですけど…興味です。テオさんに興味津々なんです。」


「興味か。」


「はい!」


「内緒、だ。」


テオさんは悪戯を仕掛けたように、少しだけ楽しそうな表情で言った。はっきりいって邪悪な笑顔だ。


「それはあれですか、仕返しってやつですか!」


それに返事はなく、テオさんは無言で食器を片付けてしまう。

もしかしてだけど、この人(?)、思ったよりお茶目なのでは?

さっき私が内緒って言ったことをからかってるんだ。


でも、あの悪戯っ子のような表情は、邪悪だったけど可愛いな…と、また失礼なことを思った。


いいなあ。テオさんは私を苛めないし、こんなにのびのびと俯かずにいる時間はこの世界に転生してから初めてかもしれない。

ずっとここにいられたらなあ…

でも、無理だ。このあと町へ案内してもらって、私はどこかへ旅に出る。テオさんはまた会う気はなさそうだから、きっとこれっきり。


もうすぐお別れだなあ、と思って呆けていると、テオさんが私の食器まで下げようとした。


「あ、食器、僕が洗いますよ!」


助けてもらって、人の家に泊めてもらって、食材ももらってしまって、片付けまでさせるのは申し訳ない。あわてて立ち上がる、と、


「見ていろ。」


そう言って、食器に手をかざした。


テオさんの手からは黒い魔力が視認できるほど溢れて、それが食器を包むように撫でて、あっという間に食器が綺麗になった。


「え…」


これが浄化魔法の日常使い版か!

見る限り、想像していたより魔力が必要みたいだ。けっこう難しいことなのかな?


そしてなにより…テオさんの魔力も黒かった。私以外で初めて見た。

人間じゃないのであれば魔力の色が黒でも不思議じゃないかもしれないけど、私と同じ黒い魔力持ちに初めて会ったのだ、どうしても驚いてしまう。


「えっと、浄化魔法ってやつですか?」

「厳密に言うと少し違う。皿についた油を「はがす」、そしてそのはがした油や汚れを「消す」。浄化は清浄なものにするということだ。それをする必要はない。」

「それって難しいですか?あと人体にも使えますか?」


そう聞くと、テオさんは私の方に手を伸ばした。

思わず身をすくめてしまう。

町の人や外から来た人に殴られたことがフラッシュバックして固まってしまっただけだけど。


私が身をすくめたことに気づいているだろうけど、テオさんは私の頭を帽子ごとわしづかみにした。

鷲づかみにする?普通しなくない?

そして、テオさんの黒い魔力が私の体を滑っていく。服の下までするする入り込むのが分かる。

温度としては、生ぬるい感じ。暖房の真下にいるときのような、そんな暖かさ。

感触は、こう、とろっとしているような感じ。とろみのある化粧水を使ったときのような。


なにか魔法が使われていることはわかるけど、詳細はわからない。

時間としてはほんの数秒だったと思う。テオさんが帽子から手を離した。


「人体にも使える。」


私の体にあったわずかなベタつきがなくなっている。体が綺麗になったようだ。

油をはがして消す、だっけ?ようは私は今、テオさんにお風呂に入れてもらったようなもの…?


「えっと、僕に使ったってことですよね」

「そうだ。」


口で言ってくれればいいのに!なんで!実行しちゃうの!

さすがに人に体を綺麗にされるのは恥ずかしい。自分の体についていた汚れ、老廃物を、剥がす作業のときに認識されてしまうはずだから。

あげく全身を包まれてしまったのだ。服の下まで綺麗にされてしまった。

丸裸より恥ずかしい気がする。

そもそも魔力が体を包む時点で性別とかバレちゃうのでは?もう本当に大惨事じゃないか。

これ日本ではセクハラっていうんだと思うの。セクハラよくない!


顔を赤くして俯くと、テオさんは少しだけ、くく、と笑った。


「体を洗われるのは恥ずかしいのか」


「あたりまえ!でしょう!」


何を言っているんだ、この人は!いや人じゃないけど!

睨みつけてもまったく気にした様子はない。むしろ、子供が威嚇しているのを見ているような余裕だ。

確かにここでは15歳で、成人していない。でも、町田瑠音としての人生を合わせると、35歳なんだぞ!大人だぞ!

…って、そういえばテオさんっていくつなんだろう?



明日も投稿したいなーと思っています~

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