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扶桑国戦記  作者: 長幸 翠
第一章 統合機動部隊
14/53

合同訓練2

 翌日の訓練には、グリフォン中隊の十人全てが参加していた。


 メニューの前半は昨日と同じであったが、今日は格闘訓練に代わり、射撃訓練となった。


 狙撃の得意な彩華とレックスは遥に呼ばれ、他の隊員達とは別の射撃場にいた。他には呼び出した張本人の遥と、狙撃の得意な部下数名。彩華以外は全て男性だった。


 彩華とレックスは、個人専用にカスタマイズした狙撃ライフルをライフルケースから取りだす。どちらも軍で正式採用している七・六二ミリのボルトアクション方式のライフルを、自分の体に合うようにストックを削っただけだ。


 初めは六百メートルの狙撃。


「もっと近くから始めないのか?」

「はい、問題ありません」


 遥の問いに、当然のように答える彩華。


 ライフルの二脚を立て、耳当てとゴーグルを付けて地面に腹ばいになると、伏射の姿勢でスコープを覗く。彩華の脳裏に、先日狙撃した大隊長の最期がちらつき、引き金にかけた指を動かす事が出来ない。


 一旦スコープから顔を離し、深呼吸をして気を落ち着ける。


「彩華さん、大丈夫ですか?」


 恐る恐る、といった様子で声をかけてきたレックスの声に、彩華は顔を上げる。レックスは心底心配そうな表情で“幼馴染みのお姉さん”を見ていた。


「ありがとうレックス。多分、大丈夫」


 優しい弟分を安心させるように笑みを浮かべる彩華。その顔を見たレックスは頬を赤く染め、視線を彷徨わせながら「はい……」と答えると、後ろに戻っていった。


 気を取り直した彩華は再度スコープ内に標的を捉えると、今度は引き金を引いた。銃声と共に七・六二ミリの銃弾が銃口から吐き出され、標的センターの右下を貫いた。


(大丈夫。私は戦える)


 右手でボルトを操作して次弾を装填。流れるような動作でスコープをのぞき込むと、慎重に二発目を発射。一射目とほぼ同じ場所を貫く。


 スコープのダイヤルを調整してから三射目。次はセンター付近を撃ち抜いた。四射、五射、六射……、次々と発射された弾丸は、センターを中心とした半径五センチを外れることは無かった。


 遥と部下達は、予め直也から「二人共、かなり上手いですよ」と聞いていたものの、想像を上回っていた。初めは美女と狙撃ライフルという組み合わせのギャップに、内心ニヤニヤして眺めていたが、自分たちを上回る技量に舌を巻いていた。


「もう少し遠くの標的でも良いですか?」


 監視スコープを覗いたまま硬直していた遥は、いつの間にか隣にいた彩華の声に我に返ると、「あ、ああ。好きにやってくれ……」と間の抜けた声を返す。


 次に彩華が選んだのは千二百メートル。遥の部下達から「えっ?」とか「マジかよ……」という声が漏れるが、彩華は気にした様子も無い。


 調子の戻った彩華に、レックスは心から嬉しそうな眼差しを送る。そして「じゃあ、僕も始めさせてもらいます」と遥に声をかけると、彩華の使っていた六百メートル先の標的を撃ち始めた。


 童顔のレックスも、標的を狙う瞳は鋭く凜々しい。五発の射撃で調整を終えると、安定した精度で標的を撃ち抜いていく。調整後はほとんどがセンターから半径十センチ以内に命中していた。続いて八百メートルの距離でも、ほぼ同じ結果を残した。


 彩華も五発を調整に使った後、二〇発を発射。ライフルを構える姿は凜として、瞳を奪わずにはいられない。弾丸を放つ度に、機械のように正確でなめらかな動きを繰り返す。その結果は、センターから半径二十センチ以内という驚異的な精度だった。


 遥は、次元の違いをまざまざと見せつけられて呆然としている部下達に、かける言葉を見つけられない。


(ライフルに秘密があるのか?)


 見たところ、それほど大きな手を加えたように見えない。精々、体格に合わせてストックに手を加えた程度だろう。


「ライフルを見せていただいても良いですか?」


 遥の部下の一人が、射撃を終えて戻ってきた彩華に、恐る恐る問いかける。まるで鬼教官に声をかける新兵のようだ。


「ストックを加工した以外に、とくに改造していませんが……」


 戸惑い気味に渡された狙撃ライフルを、遥とその部下達が興味全開で取り囲み、確認していく。よく手入れされているが、機関部や銃身を改造している様子も無い。


 続いて、レックスの狙撃ライフルも受け取り確認するが、同じ結果だった。


「すまない。余りにも凄くてな。何か秘密があるのでは無いかと疑ってしまった」


 帽子を脱いだ遥が頭を下げる。


 遥の部下達は、彩華とレックスの前に跪くと、まるで王に剣を捧げるかのように、両手で狙撃ライフルを差し出す。


 その姿に、戸惑い顔を見合わせた彩華とレックスは、頭を下げ、狙撃ライフルを受け取った。


(昨日の娘もだが、何て人材揃えてやがるんだ……。他の奴らはどんな能力を持っているんだ?)


 遥はグリフォン中隊の隊員達に、強い興味を持たずにはいられなかった。



 その頃、直也達も射撃場で遥の部下達から注目を浴びていた。


 小銃で三百メートル先の標的を射撃する標準的な訓練で、直也達は“控え目に言って”トップクラスの成績を収めていた。射撃が得意な直也、あけみ、龍一、三奈、亮輔、義晴は漏れなく標的を撃ち抜いていき、周囲を唖然とさせる。それほど得意でもないエイミー、久子も、並以上といったところだ。


 亮輔と久子は「自分で撃つと、ブレるから難しい」と感想を漏らすあたり、普段は≪タロス≫で戦闘しているからこそとも言える。


 続いて、木々が密集した雑木林のフィールドを使っての戦闘訓練だ。遥の中隊から選抜された五人を相手に、あけみ、龍一、亮輔、エイミー、久子が挑む。敵チームのフラッグを奪い合う、いわゆるフラッグ戦だ。


「久子ちゃん、指揮は任せたわ」


 訓練前のブリーフィングでは、副隊長で少尉のあけみが、曹長の久子に指揮権を譲る。周囲で見ていた遥の部下達の頭に「?」が浮かんでいる様子を、直也は面白そうに眺めている。


「了解です。あけみとエイミー、龍一と亮輔のペアで動いてください」


 全員が訓練用のヘルメットとバックパックを装着する。ヘルメットにはHMDが付いており、ARで攻撃の可視化と戦況を表示する。バックパックはHMDの制御機器と共に、実際の装備を模した二十キログラムの重りが入っている。


 全員が配置につき、戦闘開始の合図と共に動き出す。


 久子はフラッグの近くに残り、木陰に身を隠す。その間に右翼のあけみ隊と左翼の龍一隊が指示されたフィールドの中ほどに進出。両翼から、エイミーと龍一が斥候としてさらに前進。


 疎らに生えた木に隠れた龍一が、四百メートル先に身を屈めて移動する二人の敵兵を発見。後方に控える亮輔に合図を送ると、打ち合わせ通り射撃を開始する。射撃の腕が良くても、四百メートル先の動く標的に当てる事は極めて難しく、命中はしない。亮輔も素早く敵兵発見の通信を送ると、龍一の後退を援護するために射撃を始める。


 訓練は実弾で撃ち合うわけにはいかないため、ライフルに訓練用のレーザー発信器とスピーカーが付いている。引き金を引くとスピーカーから銃声が、レーザー発信器からは相手に向けてレーザーを照射し、HMDに擬似的な火線を表示させる。他には模擬手榴弾もあるが、投擲された数秒後に手榴弾の位置から一定範囲にいる兵士が被弾したと判定されるようになっている。


 エイミーも二人の敵兵を発見すると通信を送り、こちらは見つからないように後退する。


 龍一は散発的に銃撃をしながら、亮輔からの援護射撃を受けて後退。二人で敵兵を引きつけながら、さらに自陣にゆっくりと下がっていく。


『外から一人回り込んでいるはずです。注意を』

「「了解」」


 龍一達が相手をしている敵の動きから、さらに一人が来ていると判断し、久子が注意を促す。亮輔は銃撃を止めると、急いで敵兵の出現予測位置に移動する。到着した数十秒後、久子の予測した位置に敵兵が現れると、亮輔が放り込んだ手榴弾が炸裂。即死判定をされて一人が脱落した。


 脱落した敵兵が呆然と立ち尽くす横を、亮輔が駈けぬけて敵の側面に回り込む。


 一人が脱落した敵右翼は、後退して立て直そうとしたところで、横から亮輔の攻撃を受けてさらに一人が脱落。残る一人は、いつの間にか接近していたあけみに頭を撃ち抜かれて全滅した。


 その頃、右翼のエイミーは一人で二人の敵兵を翻弄していた。久子が敵兵の動きから狙いを予測し、エイミーに行動を指示する。


「そろそろ突っ込んで、ケリをつけたいんだけど」

『まだダメ。あと一人倒すまで、もう少し待って』


 エイミーが雑木林を駈けぬけながら愚痴を漏らすが、久子が言下に切って捨てる。小さな体に二十キログラム以上の重りを背負っているとは思えない身軽な動きだ。


「相変わらず元気だなあ」

「エイミーの体力、底無しっすね……」

「……そうだな」


 フィールドの外では、三奈が面白そうに戦況を眺め、義晴がポツリと呟き、直也も同意する。遥の部下達は、「本当に重り入っているのか?」と口々に囁き合っている。


 三人が脱落した敵は、エイミーとの追いかけっこを放棄してフラッグを守りに戻ろうと後退する。しかしまたしても横から現れたあけみが一人を倒す。


『エイミー!』

「おうっ!」


 久子の呼びかけにエイミーは力強く答えると、放たれた猟犬のように最後の一人を追いかけ、三点バーストを叩き込む。結果は圧勝だった。


「本職が負けてどうする……」


 遥の中隊の副隊長は、アッサリと破れ、項垂れている部下達の前で溜め息をつく。しかし内心では、同数で自分達が戦っても勝つ事は難しいと感じていた。


(優れた状況判断と先読み、そしてイカれた体力か……。しかし、負けたままと言うのは許されない)


 副隊長は闘志を燃やすと、「もう一戦やりませんか?」と持ちかけて了承を得る。その際、直也から「そちらは九人でお願いします」と言われて頬を引きつらせ、メンツもあるので七人で手を打った。そして次は、副隊長自身を含むベストメンバーを選んだ。


 相手チームは五人に対し、本職の自分たちが七人で挑まざるを得ない。本気の副隊長に、選ばれたメンバー達は気を引き締める


 一方直也も、戦闘に参加した五人の健闘を褒めてから、次のメンバーを選んでいた。


「次は俺と三奈、義晴が出るとして……、他に出たい人は?」


 直也と一緒に戦えると、エイミーは元気よく手を上げる。しかし「悪いけど、次は休み」と言われてションボリする。ポニーテールも力なく萎れているように見える。


 結局、龍一と亮輔が続投となった。


「次は負けてやるのか?」

「いや、叩き潰す」

「お、おう……」


 龍一の問いに、首を横に振る直也。一戦目の結果から、大体の実力を知ることは出来た。今後の共闘を考えると、今のままでは背中を預けることは出来ないと判断したのだ。実戦前に、実力差を体感してもらう必要がある。


 三十分の休憩を挟んだ後、二戦目が始まる。


「龍一は義晴、亮輔は三奈を連れて行け。俺が陽動する」

「了解。苛めすぎるなよ……、と言っても無駄か」


 龍一は片手を上げて答える。顔には苦笑が浮かんでいた。


「義晴は俺と走り回るぞ」


 義晴は「マジっすか……」と肩を落とし、げんなりした顔で龍一と共にフィールドへと入っていく。


「直也さん、お気をつけて」

「ああ、二人とも焦らず頼む」


 亮輔に答えてから、固い表情で右目の下の泣きぼくろを触っている三奈の肩を叩く。


「あまり緊張するな。亮輔に任せれば大丈夫だ……、多分。きっと。……そんな気がする?」

「な、なんですか。その自信無さそうな感じは。しかも最後は疑問形ですよね?」


 すかさずツッコミを返す三奈。


「よし、その調子だ。いつも通りにやれば良い」

「は、はいっ!」


 少しは緊張が解けたようだ。大きく頷くと、亮輔と共に駆け足でフィールドに入っていく。


 その姿を確認してから、直也は一人で雑木林へと消えていった。


―――――


「先程の戦闘、そして向こうの様子から、今回も全滅を狙ってくる事は間違いない。従ってフラッグは守らず、全員で攻め込む」


 副隊長はそう断言すると、左翼に二人、右翼に五人配置する


 初戦の結果は散々だった。こちらは右翼に三人、左翼に二人を配置していた。相手の左翼が囮役を果たす所までは読めた。これに対して一人を向かわせて側面を突く予定だった。しかし相手に作戦は見破られており、攻撃に失敗した上にカウンターを受けて全滅。相手の右翼は、昨日の格闘訓練で玄海軍曹を手玉に取った隊員の動きが凄まじかった。見た目は子供だが、二十キログラム以上の荷物を持っていないかのように駆け回り、こちらの二人が釘付けにされてしまったため、救援に向かうことも出来なかった。


 この結果から、極めて不本意ではあるが相手を格上と認めざるを得なかった。相手の隊長から「そちらは九人でお願いします」と言われた時、副隊長は思わず頭に血が上りかけた。だが踏みとどまり、間を取って七人で挑むことになった。


 今回は、数の有利を活かして左翼の二人で持ちこたえながら、右翼の五人で圧倒する作戦だ。当然、相手もこの作戦を見越している可能性が高い。


 副隊長は四人を引き連れ、慎重に前進する。


「交戦開始。敵は二……、もしくは三名」


 左翼からの通信と前後して、発砲音が聞こえ始めた。


(想定よりやや早い……。急ぐべきか?)


 HMDの片隅に表示されている時計を確認し、急いで目標ポイントに向かうか考えた瞬間、意図せぬ攻撃を受けた。隊の一人が狙撃を受け、脱落したのだ。


「散開!」


 副隊長が慌てて指示するが、その前に隊員は動いていた。木陰に身を隠し、敵の推定攻撃ポイントを特定する。


「ご、五百メートルだと!?」


 見通しの悪いこの雑木林では、見通しが効いても五百メートル程度だ。そのギリギリの距離から小銃で当ててきた。そもそも狙撃能力の高い隊員達は、別の射撃訓練場に行っているにも関わらず、だ。


 中隊長は、自分ともう一人を正面に残し、二人を機動班として左側から敵側面に回り込ませようとするが、今度はその隊が攻撃を受けて全滅した。


「こちら左翼、持ちこたえられません!」


 通信の直後、二人が死亡判定となる。残りは副隊長ともう一人だけであった。


(な……、何が起こっているんだ!?)


 瞬く間にこちらの数が減っていく状況に、頭が追いつかない。


 ふと右側二百メートル先に、一人の敵兵を確認。せめて一矢報いるために、射撃を開始する。だが予測されていたのだろう。命中することは無かった。


 攻撃のため移動しようと木の陰から出たところで、左側からの攻撃によって副隊長ともう一人が被弾。訓練終了となった。


―――――


 敵の左翼二人と交戦したのは龍一と義晴のペアだった。今回は囮としてでは無く、正面から戦って倒すことが目的だった。敵の別働隊は直也達三人に任せているので考慮する必要は無かった。援護と前進を交互に繰り返して距離を詰め、敵に勝る射撃能力で堂々と撃ち倒したのだった。


 敵右翼に対しては、最初の狙撃を直也が行った。今回の五人の中では、亮輔に次いで狙撃の腕が高い。この狙撃で敵の動きを止め、さらに別働隊を出させることで兵力を分散させることに成功した。別働隊は待ち構えていた亮輔と三奈が美味しく頂き、その間に移動した直也は敵の二百メートルまで接近して注意を引き付けた。最後は再び亮輔と三奈が仕留めて戦闘終了となった。



 狙撃訓練から戻ってきた遥とその部下達、そして彩華とレックスは、重苦しい雰囲気に訝しげな顔をする。


 遥の部下達が、一様に暗い顔をして落ち込んでいたのだ。副隊長は特に酷く、椅子に座り、テーブルに両肘を乗せ、両手のひらで頭を抱えて俯いたまま、微動だにしない。


「……何があったんだ?」


 遥が隊員の一人に問いかける。さすがに副隊長に問いただす勇気は無かった。


「先程までフラッグ戦をしていたのですが……。二戦とも、俺たちが完敗しました」

「……何?」

「特に二戦目は、向こうの五人に対してこちらは七人、しかも副隊長自らベストメンバーで挑んだのですが……、全く歯が立たなかったのです」


 言葉を失う遥。ベストメンバーの中には、放心状態の副隊長を含め、遥が陸軍空挺部隊から連れてきた、優秀な部下達もいるからだ。


 歩いてくる直也とあけみに気づき、遥の瞳が険しさを帯びる。常人では竦み上がりそうなその視線を、直也は涼しい顔で受け止める。


 直也にとっては、彩華の「二人で仲良くお散歩ですか? 楽しそうですね?」と語る視線の方が怖いのだが、頑張って無視した。


 遥の手前まで来ると、顔を見上げる。


「今回の訓練で、英川中尉の隊は実力不足と判断しました。

 今後、敵の特殊部隊と戦うこともあります。現状で勝つことは難しいでしょう」

「おい、ずいぶんと好き勝手言ってくれるな……」


 水を打ったように静まる中、辺りに怒気をはらんだ遥の声が響く。遥の部下達は、ほとんど初めて聞く声に、驚きと恐怖を隠しきれずに身を竦ませている。


 遥が直也に殴りかかるのでは無いかと、周囲が固唾をのんで見守る中、微笑を浮かべた直也はあっけらかんとした表情で、言い放つ。


「なので、連隊長と司令官に掛け合って、特別訓練の許可を頂いてきました」

「……あ?」


 気の抜けた遥の声が、緊張に満ち満ちた場の空気をぶち壊す。


 あけみからタブレット端末を受け取った遥は、内容に目を走らせてから絶句した。そこには、戦闘技術研究所で最低一ヶ月の特別訓練指示が、司令官と連隊長、ケルベロス大隊長の連名で記載されていたのだ。


「……なぜ中尉が、こんな短時間で上の許可を得られたんだ?」

「連隊長も大隊長も、ちょうど司令部におられたので。司令官には、艦上からオンラインで許可をもらいました」

「そうじゃない。なぜ神威中尉と出雲中尉が、神威司令官と出雲連隊長からサクッと許可もらえるんだって……、あれ? 名字が同じ……?」

「司令官は自分の父、連隊長は出雲中尉のお父上ですが、何か?」


 心底不思議そうな表情で、直也が聞き返す。


「……マジか」

「マジです」


 口をポカーンと開けている遥。頭が追いついていない様子が良く分かる。


「俺たちも経験した訓練です。厳しいですが、大いに役立つと思いますので、是非」


 微笑を浮かべる直也。龍一以下、グリフォン中隊の面々の顔が引き攣っていたのだが、急展開に付いて行けない遥とその部下達は、誰一人気付いていなかった。


「厳しいってレベルじゃないんだけどな」

「……元気に戻ってきてほしいね」


 エイミーと三奈が、周りに聞こえないように囁き合っていた。


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