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バッタの改造人間が勇者召喚された場合  作者: 真黒三太
第十一話『昭明にして萬邦(ばんぽう)を協和す』
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Bパート 2

 ――魔城ガーデム!


 魔性の技によって建築されたとしか言えぬ外観と異なり、内部の様相は意外なほどに普通であり、勇者召喚に応じて以降、寝床としているラグネア城と比べてもそん色はない。


 とはいえ、太陽なき世界の生物が暮らしているためであろう……。

 たいまつや燭台(しょくだい)といった照明器具の(たぐい)は一切存在せぬし、城中を彩る装飾品や美術品類は、正視し続けることがためらわれる破壊衝動を感じる代物であったが……。


 大扉を破壊して討ち入りを果たし、素早く内部を見渡しながらそのような感想を抱いたブラックホッパーが、ぴくりとその身を静止させた。


「――はあっ!」


 次の瞬間、ホッパーは見事な前転を披露し、入り口から距離を取る!


 ――カカカッ!


 ……と。

 鋭い音と共に、彼が立っていた場所へ幾本もの針が突き刺さった。

 針と言っても、その全長は三〇センチほどもあり、太さもそれに見合ったものがある。

 それがライフル弾もかくやという速度で射出されてきたのだから、勇者の勘働きと判断の早さを賞賛すべきであろう。


「……魔人戦士か」


 油断なく身構えつつ……。

 立ち上がったホッパーが、針の飛来してきた方角に向けそう声をかけた。


「……いかにも」


「現れたな、ブラックホッパー!」


「我らをお引き立て下さったラトラ殿の仇、ここで討たせてもらうぞ!」


 おそらくこやつが針を放った射手であろう……。

 見るからにハリネズミの特質を備えていると分かる魔人戦士を先頭に、何人もの魔人たちが姿を現す。


 ゾウのごときたくましい四肢と、二股に分かれた長い鼻を供えた魔人がいる……。

 木彫りの仁王像が意思を持ち歩き回っているかのような、木偶(でく)の魔人も存在した……。

 全身が半透明なゼリーで構成された魔人などは、否が応でも目を引く。


 他にも、様々な姿をした魔人たちがいるが……。

 姿を現した全員に共通するのは、術法を用いぬ物理的な戦闘を得意としていそうなところであろう……。


 こやつらの言葉が確かならば、おそらくは――獣烈将ラトラが配下の魔人戦士たち!


「いいだろう……」


 ゆらり、と……。

 ブラックホッパーが魔人戦士たちに向け、一歩、二歩と歩み寄る。

 その足が、ホッパーパンチで破壊され内側へ吹き飛ばされた大扉の残がいへと触れた。


「――相手になってやる!」


 そう宣言すると同時、大扉の残がいを城の入口に向け蹴り飛ばす!


 ――キー!?


 改造人間の恐るべき脚力で蹴り飛ばされたそれは、背後から挟み撃ちにするべく城の入口へ殺到しつつあったキルゴブリンらに直撃し、これを将棋倒しにしてのけた。


「食らえい!」


 後背からの挟み撃ちを阻止するために一手使った勇者に対し、ハリネズミ魔人が逆立てた体毛を次々と射出する!

 これに対し、残がいを蹴り飛ばした姿勢のホッパーは先のような回避が間に合わぬと見えたが……。


「――ギガント!」


 真っ赤だった目が紫色の光を帯び、同時に全身を同色の追加装甲が覆う!

 最後にマフラーが漆黒へと色を返事させ、鋼鉄の重騎士へのフォームチェンジが果たされた。

 それと同時に、撃ち放たれた無数の針がギガントホッパーの装甲へ着弾するが……。


 ――カカカン!


 ……と、虚しい音を響かせ、その全ては跳ね返される!


「――ギガントバスター!」


 魔人の攻撃をものともしなかった重騎士が、変換(モーフィング)能力を発現しその手に砲撃形態の聖斧(せいふ)を出現させた。

 斧部の刃先に備わったスリットが強烈な勢いで空気を吸引し、内部でそれを圧縮、鉛の銃弾をはるかにしのぐ圧縮空気弾となって砲口から撃ち放たれる!


「――ぐわば!?」


 連射されたそれは魔人戦士たちに狙いあやまたず着弾し、たまらずこれらを後退させた。

 このスキを見逃す、ホッパーではない!


「――ギガントアックス!」


 すかさず斬撃形態へ変形させた聖斧(せいふ)を振りかざし、ギガントホッパーが魔人の群れへ切り込んでいく!


「――ぬう!」


 ゾウのごとき魔人が、二股に分かれたたくましい鼻を、そのものハンマーのごとく振るい……。


「――はあっ!」


 仁王像のような魔人が、その手に長剣を生み出し切り結ばんと挑みかかる!


「――――――――――ッ!」


 発声器官を持たぬのだろう……。

 全身がゼリー状の魔人は、斧が肉体を無数のムチか触手のように変形させ迎撃に出た!


 しかし、その全てが――無意味!


「うおおっ!」


 恐るべき速度で振るわれる、鼻を、長剣を、無数のムチを!

 アックスで切り払い、あるいは自慢の追加装甲で弾き飛ばしながら、ギガントホッパーが猛進する!

 彼が斧を振るうたびに火花が舞い散り、挑みかかった魔人戦士が吹き飛ばされることとなった。


 己に襲いかかる攻撃の全てを把握し、瞬時にそれらへの応手を練り上げ、後の先を取る形で痛烈なカウンター攻撃を加えていく……。

 多対一であることをものともしないこの戦い方は、ホッパーの真骨頂だ!


 戦場は敵の本拠地……。

 数の上では、圧倒的不利……。

 にも関わらず、鋼鉄の重騎士はラトラ旗下の魔人たちを押しに押していき、ついにはガーデム上層へ続くのだろう大階段まで前進するに至っていた。


「――くっ!?」


「――このままではっ!?」


 ギガントホッパーの猛進を阻止すべく立ちはだかる魔人戦士の一人が、迂闊(うかつ)にも大階段の上層をちらりと見やる。


「魔人王はそちらかっ!」


 彼らの焦りとその原因を正確に理解したホッパーは、ついにグリップへ備わったトリガーを引き絞り、ギガント最大の必殺技を発動させた!


 ――ビュウオオオオオ!


 ……という、竜巻のような音と共に、刃の先端へ供えられたスリットが猛烈な勢いで空気を吸引していく。

 それはアックスの背部から圧縮噴射され、ただでさえ強烈無比な重騎士の斬撃を更なる高みへ昇華させるのだ!


「大ィィィィィ――――――――――烈断ッ!」


 横なぎに放たれた必殺の斬撃が魔人戦士を三人ばかり捉え、これを爆散せしめた!


「邪魔をするな!」


 何者にも阻めぬ重戦車と化したギガントホッパーが、一気に階段を駆け上がろうとするが……。

 突如としてその体が消え去ると、鋼鉄の重騎士は大階段の一段目に再びその姿を現したのである。


「――むうっ!?」


 これにはさすがのホッパーも驚き、周囲の光景を見渡す。


 ――ククク。


 ――コココココ。


 不気味な笑い声を放ちながら……。

 大階段上層に控えていた、新たな魔人戦士たちがその姿を現した。

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