4-2
4人集まるのは本当に久しぶりだ。いつもは私と健次を除く2人の予定が合うことは稀だった。
その日。私たちは四条の練習スタジオに集合した。
「お疲れ!」
私と健次が到着すると、先に充と亨一が来ていた。彼らが並ぶとアメリカンコミックの間抜けな2人組に見える。ガリガリノッポと気のよさそうな太っちょ。そんな感じだ。
「お疲れ様です。おそなってすまんね。ウチのギターがまた寝坊してな」
「そんなとこやと思ったで! 岸やん、そろそろ遅刻癖直さんとな?」
充は毎回健次に同じ文句を言っていた。一語一句変わらない文句だ。
「すまんすまん。気ぃつけるわ……。にしてもひさびりやな4人でセッションするんわ」
健次は無精髭を掻きながら充と亨一の顔を見渡した。健次自身、このメンバーでセッションするのが好きだった。私と充だけでも練習は出来たけれど、亨一が入ると一気に音に深みが出る。
「そうだね。本当に久しぶりだ。鴨川さん、これ逢子から!」
「ああ、ありがとう。逢子ちゃんにもよろしく言っといてな」
私は亨一から紙袋を受け取ると中身を確認した。袋の中にはオーディションの申し込み用紙が何通か入っている。
「したら中入ろうか。ええ加減暑くてたまらん」
「せやな」
音楽スタジオに入ると早速練習に取りかかった。初めに各々で練習する。
私はこの時間が好きだ。健次がエフェクターを調整し、亨一は念入りにチューニングをする。充もドラムの配置を細かく調整していた。やることがないのは私だけだ。
彼らが楽器と対話している姿が好きだ。
ここ2年の間に健次も自前のSGにすっかり愛着が湧いたらしい。YAMAHAの真っ赤なSG。命名、『アマポーラ』。
亨一も自信のジャズベースをかなり大切にしていた。フェンダーUSAの上位モデルで、おそらく私の生涯お年玉金額より高い代物だと思う。ボディカラーはツートーンの茶色でピックガードは鼈甲色だった。実に亨一らしい。
残念ながら充の愛機は見たことがないけれど、彼もかなりこだわってはいるようだ。これは健次の受け売りだけれど。
私もクラリネットを演奏するので気持ちは分かるけれど、彼らの楽器への愛着はその比ではないと思う。
「よっしょ! 俺は準備出来たで!」
充がドラムスティックを指先でくるくる回しながらそう言った。いつも充は段取りが早い。むしろせっかちなぐらいだ。
「俺も出来たよ。健次くんエフェクター大丈夫?」
亨一はそう言うと健次のエフェクターの前にしゃがみ込んだ。
「なんか調子悪いねん。なんでやろ?」
「ああ、これはね……」
健次はいつも機械トラブルに見舞われていた。酷かったときは演奏中にピックアップが落ちたこともあった。そのときは充も亨一も「さすがにそれはない」とツッコミを入れた。私も同意見だ。さすがにそれはない。
「岸やんはもっと機械関係強くなった方がええで? 毎回やん?」
「ほんまやな。部活引退したらしっかり勉強するわ」
勉強……。健次が一番苦手なことだ。果たして彼に出来るのだろうか?
タイプ的には私と亨一が座学でしっかり勉強するタイプだった。健次と充はノリと勢いと慣れで学ぶタイプだ。だから私たちは自然とその2グループに分れていた。
計画性のある作業や段取りは私と亨一が行い、創造性のある作業は健次と充が担当した。もっとも、亨一はお手伝いに来て貰っているだけだけれど。
「よし! セッティングOKだよ! そうしたら始めようか?」
やはり亨一は頼りになる。無事健次のエフェクターは直ったようだ。
「したら……。みっちゃんドラム頼むで!」
「うっす」
そしていつもどおり充はドラムスティックを打ち鳴らした。




