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プロローグ
欲望に塗れた願いを叶えるために私は走ると決めた。
如何なる願いも覚悟して犠牲さえ払えば叶えることができる……。と言うのがその当時の私の人生観だった。
今でもその価値観を変えてはいないのだけれど、当時に比べてその覚悟の度合いは相当深くなったと思う。
大げさに言えば、水たまり程度の深さしかなかった私の覚悟が、今はマリアナ海溝ぐらいまで変化したのではないだろうか?
だから私は甘えというのがとんでもなく嫌いだった。
簡単に血反吐を吐いたとか辛苦を舐めたとか言う奴が大嫌いだった。
私は地獄の針山の上で昼寝する……。または血の池で遊泳くらい楽勝だと思えるほどの苦痛というものを味わってきた。
今思えばそれさえ甘美な気さえするけれど……。
前置きが長くなったけれど、これは私が願いを叶えるために走り続けた話だ。
美しく優しい願い「Wish」ではなく、欲望に支配された願い「Desire」の……。