魔法しか使えない世界 二年生編1
1
新たに編成されたクラス。俺はそこに座り担任になるであろう教員が来ないことに対するクラスメイトたちの騒ぎを聞きながら考えごとをしていた。中央国での出来事。それが俺を悩ませていた。
三種の神器は今、アドラー家の俺の部屋に飾られている。俺が日本へ帰るためにはあれを再び発動させるしかないだろう。そもそも、なぜ神器によって異世界への転移が可能なのか。簡単な話だ。宇宙はほぼ無限に続いている。その宇宙たちが全て異世界だ。異世界と聞くと全く別の世界のように想像する人間がいる。だがそれは違う。異世界とは「無」の中に存在する宇宙空間そのもの。俺のいた世界もその中に存在する世界であり宇宙の一つだ。外宇宙。異世界とはそのもののことを指す。異世界。平行世界。超次元。それは全て違うが俺が今いる世界も前にいた世界も外宇宙であり異世界なのだ。平行世界。それは一つの世界が分岐したもの。例えば俺がこのクラスで発狂するかしないかの選択だけで世界が誕生すること。まさにサイコロのように。つまり俺のいるこの異世界にも平行世界は存在するのだ。そして上下の関係を築く次元空間。二次元や一次元の世界。それが次元による空間。ただ、これはまだ俺も分からない。
そして何故神器を使って異世界へ行くことが可能なのか。異世界、いや全ての宇宙には神がいる。宇宙の命とは有限だ。宇宙にはビッグバンという始まりがある。そして宇宙には終わりもある。ただその終わりとは宇宙によって様々だ。なぜ宇宙によってその終わりは変わるのか。太陽を含め恒星は質量によって命が変わる。質量が多いほど寿命は縮む。ならば宇宙にも質量があるのか。あるだろう。かりにブラックホールなどが多い宇宙の寿命が長いとしたら。俺はそんなことを仮設として立てた。ただだからと言って神が関わるかと言えばこの仮設では言えない。
だが神がいると仮定しよう。神器がある。神話がある。世界には不思議なことがある。だから神がいると仮定しよう。仮に神が宇宙の寿命を何らかの目的で延ばしているとしたら。俺はそれを利用した。神の力を利用すれば宇宙規模の力を手に入れることができる。そしてその鍵となったのが神器だ。俺は神の力を利用するために神器を使った。そしてその力が最大に発揮されるように京都御所へ出向いて。
まさかとは思う。仮に神器の力を最大限に発揮できるのが日本でしかなかったら。よくにた中央国では駄目だったのかもしれない。
2
俺はクラスの中へと目を向けた。隣に座る女子生徒。こんなクラスでは珍しい。俺のイメージではこういうのは男子生徒ばかりだと思っていた。ただ錬金術を専攻しているからなのだろうか。彼女の様子はモルガンのようなオーラとはまるで違った。
そんなことを考えているとやっと教室の扉を開き担任と思われる教員が入って来る。
「やあ諸君。私がこのクラスの担任になった者だ。ただ先生は昨日から徹夜で疲れているんだ。だから少し寝かせてくれ。」
これが教員の発言なのだろうか。どこの世界でもやはり教員というものは。いや、この教員は少し奴らと違うが。彼は急に倒れ込んだ。床は固い。倒れれば怪我をするかもしれない。しかしそうなることはなかった。彼の倒れ込むそのわずか数秒。床に魔方陣が形成される。そして床にはベットが現れた。これが錬金術。突然物を作り出す能力。おそらく彼は空気を材料にベットを錬成した。これが錬金術。俺は初めてその術を体験した。
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