魔法しか使えない世界 旅行編6
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昼過ぎ、6人は朝別れた専門店街の駅にて集合した。これからみんなで動物園へと行く。ただ俺には予想はできるが気になることがある。アクトゥルスの背中に刺さった物に。
「それは、中央刀か?」
俺は聞いた。
「よく分かったなタケル。これはこの国の職人が作った切れ味が抜群の剣なんだ。一度きたら買おうと思っていたんだが店の人間はレプリカしか売ってくれなかった。」
突っ込みたくなる。とてつもなく。俺よりもアクトゥルスのが狂っているのではないだろうか。大丈夫。俺は天才だ。俺は神だ。
アクトゥルスは俺にその買った刀を見せつける。とある国の刀によく似た片刃刀。俺はため息をついた。それをイレーネが不思議そうに見る。気にしないでくれと彼女に言うと俺は早く動物園へ行こうとみんなに提案した。
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「見てくださいタケル、魔獣ですよ。ドラゴンもいます。ほら、檻の中にキマイラがいますよ。キマイラ可愛いですね。ほら赤ちゃんのキマイラがいます。」
イレーネとナノは2人で動物園の中を走り回り色々な動物を見ている。そしてそれを俺の隣で嬉しそうに眺めるクルスのことを俺は不気味に思った。
動物園には普通の動物もいるが魔獣なども飼育されている。また係員の中には人外である獣人なんかが多いように感じられた。
「なあクルス。何故動物園には獣人が多いんだ。」
俺は気になり聞く。
「人間のイメージによるものさ。昔は一部の獣人は差別されがちだった。それはエルフやドワーフよりもだ。彼らは猿から進化した人類ではないからな。交配ができないのさ。そのせいで亜人扱いだ。ただ、今でも差別を行う人間はいるが。この中央国にはそういう人間は少ない。獣耳という文化らしいが中央国人たちはそういったところに寛容なんだ。そして獣人たちは人間より動物の気持ちが分かるという。だからこういった施設の職員は彼らのような人間が多いのさ。先ほど行った専門店街にも獣人による喫茶店があっただろ。」
猫耳少女、犬耳少女。日本人がこの世界に来たら大喜びだろう。小学生が経営する喫茶店や獣人のいる動物園があるなんて。
俺は空を見上げる。そこには予想通りのモノレールが走っていた。
「なあクルス。」
「どうした。」
俺はまた疑問を彼にぶつけた。
「どうして高速鉄道は浮いているのにレールが必要だったんだ。」
「それは簡単だ。レールは魔力供給も兼ねているからな。」
なるほど。俺は納得した。
そして俺とクルスで子どもたち2人を追いかける。イレーネが言うように展示されたキマイラの子どもは小さく可愛かった。動物は他にもいるためケルベロスやグリフォンなんかも見る。飼育されている動物は地球と違うがその形態はまさに一般的な動物園だった。
やがて恒星が地平線へ傾き夕日に変わる。俺たちは入場門へ行きまた集合した。どうやらアクトゥルスとモルガンは2人で園内を回っていたようで少し顔を赤くして帰って来た。あの2人は付き合っているのだろうか。俺は異世界でハーレムを営もうとは思わないが2人の関係には少し気になった。
「お人形買って貰ったの?」
モルガンはイレーネに聞いた。
「うん。」
イレーネは恥ずかしそうに言う。大人ぶっている彼女だがやはり見た目も中身も子ども。モルガンにからかわれて怒る姿を見ると俺の心に何かが宿った気がした。俺はロリコンではない。
「さあ行こう。俺にとっては今日のメインの博物館へ。」
俺はみんなに言うと目の前にある国立魔法博物館を目指し歩き出した。