魔法しか使えない世界 旅行編4
8
俺は列車に揺られながら窓の外を眺めた。レールの内側を見ながら。すぐに目的地へ着くと思うが乗車したばかりでまだ一駅を越えたばかり。とはいえ次で下車するが。
「なあ。」
「どうしました?」
俺はイレーネに聞く。
「この世界にも結界は存在するのだろう。」
「ええ。」
彼女は答えた。
山手線が結界であるというのは有名な話だ。呪いを封じるためにあの鉄道は環状鉄道になった。そしてこの鉄道も円を描いている。俺はスマホを手に取った。ただそこでここが列車内だと気づく。スマホに頼りすぎることも良くない。それに車内でのスマホは迷惑だ。俺は非常に好きな訳ではないが他人に迷惑はかけたくない。
「どうしたんです?」
イレーネは俺の顔を見た。
「いや。」
俺はそれだけ言うと黙り込み窓の外を再び眺めた。
結界。俺が異世界へ転移した場所にも結界が張り巡らされていた。さすがにここで儀式を行うことへの気は進まないが仮に結界があれば俺は再び日本へ帰れるかもしれない。そんな期待を抱いた。
そういえばと俺はあることに気づく。日本の鉄道では車内放送で外国人向けの車内放送が行われた。ただこの国は違う。どう違うかと思えば言語が少ししか違わない。語順は西国と中央国で一致していないが単語はほぼ一致しているということ。
俺はそれを今度はクルスへと聞いた。
「それも戦争の恩恵さ。戦前の教育はあまり良いものではなかった。金持ちのためのもの。庶民なんてよほど才能がないと教育を受けられないんだ。西国では専門教育が特に発展したからそれもある。軍人は庶民からも選ばれる。そして言語の壁が生まれた。同盟が上手くいかなければ戦争に勝てない。事実戦争には負けたが。そして各国で言語統一が行われた。驚きべきことだが、これはこの星全体で行われたことだ。中立を図った小大陸国も、敵国だった東国も。さらに驚くべきこととして、それに使われた言語は東国の原住民の言語を元にしたことさ。言語学者の意見としてこれは採用されたがどういったことかと言うと東国の原住民の言語は世界一優れている言語だと言われているんだ。彼らの使う言語は助詞の位置を変えることで語順が自由に変えられる。実は言語の壁ができた一番の理由は二つあるのだがその一つ語順にあるんだ。しかし原住民の言語はそれに対応できた。さらに採用はされなかったがこの言語には象形文字もある。これは覚える必要がありここ最近までは採用されなかったが今では一般教養として覚えられている。お前もこの世界へ来たばかりの時教えられただろ。そして文字。これは言語学者たちが作り出した。子音文字と母音文字の両方を持ち合わせた表音文字だ。表音文字は言語問題の二番目の問題だった。西国は子音であり記号文字だった。中央国は母音であり表音文字だった。記号か表音に関しては戦時中の経験から短縮学習に適しているとして表音文字が採用された。そして単語は西国の物が多く取り入れられ覚えやすい物であればそれ以外の国の単語も取り入れられた。これによって今の言語がある。だから語順は多少違うが今はこの星であればどんな所へ行っても言葉が通じる。」
なるほどと俺は思った。地球でも同じことが行われればいいと俺は思った。英語は欠陥言語だ。日本語は同音異義語が多い。何にしろ言語には文化的なことが含まれ国によって善し悪しは決まる。しかしそれにしても学問として学ぶにはどちらも面白みはあっても習得の困難さはある。ただこの世界の言語は合理的だった。これは前の世界にはなかったことだが原住民の言語ということに俺は少し思い当たることがあった。おそらくそれはマヤ文字を元にしたのだろう。人間というのは発祥地から離れるはど発展する。というのが俺の考えだ。だから差別発言だがアフリカは発展しない。支援をすれば武器を買う。種を与えれば食べてしまう国が発展しない理由。それは頭の良い人間を差別し追い出したから。だから退化という進化をした結果今のアフリカがある。俺はあの国は一生を植民地として過ごすか各国は手を引き自然の状態で放置しておくことが先決だと考えている。欧州は特別な例だが生物の進化としては南米が発展することは当たり前のこと。今でこそあの土地は発展途上だがスペインなどに征服されなければ今はとても発展した国だっただろうと俺は考えている。事実マヤ文明やインカ文明には関心する。俺はそんな国の言葉が共通言語に採用されたことを誇らしく思った。
そしてそんな最高の言語によって車内へとアナウンスがされる。列車は駅へ到着し俺たちはその駅で下車をした。ここが専門店街。というあの場所。俺は自動改札に切符を通すと急にかけだし先頭に立つと、あの言葉を叫んだ。
あーきはーばらー