魔法しか使えない世界 旅行編3
7
俺はまだ夢を見ているのだろうか。それとも寝ぼけているのだろうか。ここは本当に異世界なのか。目の前の光景に俺は驚いた。確かに地球とこの星の気候が似ていることから予想すべきではあったがその光景はあまりにも俺の生まれ育った国と似ていた。ここは異世界ではなく平行世界なのかもしれない。
「ここが中央国。」
「そうですよ。」
イレーネは答える。
「教科書や本なんかですと別の小国がよく載っていますが中央国の首都国家はこの場所です。」
「日本。」
「ニホン?」
彼女は首をかしげる。しかし俺の目の前に広がる光景はまさしくあの国にそっくりだった。日本という良くも悪くも印象的なあの国に。
「まずは列車の駅であるこの首都からだな。ここはこの国の首都で色々な物がそろっている。色々な部類の博物館なんかもあるし食事も豊富だ。この国独特の食文化もある。それに魔道具や武器の専門店だけの街なんかもあってまさに天国みたいな場所さ。」
俺はそれを聞き東京の町並みと中央国首都とを比較した。しかし、似すぎている。確かに根本的なものは魔法と科学とで違っているがその進化はほとんどが同じ。違うと言えば国の形くらいか。地球の金属は熱伝導と電気伝導といった二つの特性を持っていた。そしてその二つは比例する。魔法と科学も比例するのだろうか。ただ国通しが連邦国家や王国として結ばれていることはどうなんだろうか。
しかし教科書なんかでは何故紹介されていないのだろうか。俺はクルスへと質問をした。
「この国は色々な意味で特殊だからさ。宗教的な問題、政治的な問題、軍事的な問題。一般的にはこのあたりだろう。何せ神が作り出した国家を自称しているからな。古くから太陽神なんかを信仰していた西国にはとても受け入れられない。戦時中は同盟でも戦争が終われば違う。特にこの国は敵国とも戦後に有効的になったこともある。ただそれは表向きなものさ。本当のことを言うとこの国は変わっている。首都国家たる国ではあるが建国は周りの連邦内国家より遅い。そしてだからか文化が特殊過ぎる。その文化が西国国民の多くからは好まれていないのだ。おそらくお前の友達アクトゥルス・ペンドラゴン。は少数派の人間だ。」
呆れていいのか褒めるべきなのか反応に困る。やはりこの世界は平行世界ではないのだろうか。宇宙に存在する素粒子が同じでも平行世界が誕生するのかもしれない。あるいはまだ俺のいた宇宙には未知の素粒子が存在するのか。
要約すれば簡単なこと。地球におけるキリスト教と神道の戦いのようなもの。日本の八百万信仰が西洋人に受け入れられないもの。しかし軍事問題はこの星特殊のこと。日本は島国だったがこの国は違うから起きた問題。そして文化。日本のアニメ文化に対する意見なのだろう。戦争が終わり六十年しか経過していない。魔法による技術は地球と比例しており、だから文化の認知度も地球と変わらない。そんな状態で教科書やそういった公的な書物に悪く言えばオタク的な物が載るはずなかった。だから首都国家よりも歴史も文化も深い連邦内隣国に文化を西国では学んだ。西洋で中国について学ぶようなもの実際に国別の観光客数は日本よりも中国が多い。やはり似ている。
「タケルは何処へ行きたい?」
パンフレットを見ながらアクトゥルスは聞いた。正直に言えばどこでもいい。だいたいのことが想像できる。しかし魔法世界と科学世界では何か違うかもしれないと俺も一応は期待した。
「博物館に行きたい。」
俺は答えた。専門店は簡単に内容が想像できた。食事に関しては日本は島国として発展し魚食が有名だが内陸国であるこの国ではどのような食文化が発展したのかと気にはなったがあまり興味は出なかった。だから無難ではあるが博物館を選択した。そもそも西国でも博物館という物に行ったことのない俺ではあるが。俺はアクトゥルスから観光パンフレットを奪うとそこへ目を通した。おそらくという場所を探し俺は目を動かす。目当ての場所は予想通りの場所とさほど変わらずにこの国に存在した。
国立魔法博物館。
地球で言う科学館だ。首都を一週する鉄道の沿線場に存在したそれに俺は行きたいと言った。
「俺はここへ行きたいな。」
アクトゥルスは俺の提案に対して別の場所を指さした。それも鉄道沿線場にある専門店街。今、俺たちが話している内容はおそらく日本国民ほとんどが知っている場所だろう。
「あのー専門店街なら私も行きたいです。」
突然、会話へナノが割り込む。ドワーフの少女は種族柄か専門店街に興味を示したようだ。確かに昔あの場所は電子部品に関するものなんかの専門店街、闇市だったが今はおそらく違うだろう。闇市は戦勝国、敗戦国両方でできる。戦後の価格統制が上手くいかないと。イギリスなんかでも闇市は作られた。ナノが行きたいと思っているのはそういった闇市から発展した専門店街だと思われるがアクトゥルスが考えている専門店がいは全く違うものだろうと俺は確信した。
「この国立魔法博物館の近くには動物園があるのですね。」
イレーネも会話へ入る。精神年齢が十歳程度の少女が考えることは可愛らしかった。動物園と書いてあるが調べると魔獣なんかも飼育展示されているらしい。
「私はお嬢様に着いて行く。」
クルスがそんなことを呟く。
「なら今から専門店街に行きましょう。環状鉄道では先に専門店街に着くでしょ。」
モルガンが提案した。それには一同が賛成した。
次回は秋葉原かな