魔法しか使えない世界 学校編8
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この世界の学校にも体育館という場所が存在する。そして今日、俺はそこにクラスメイトたちと共に並び座っていた。俺たちが全員座ると1人の教師が前に立つ。教師は口を開き話を始めた。話題は選択教科に関すること。俺はすでに錬金術を学ぼうと決心しているが学校にはまだ意思の弱い者がいるらしい。俺からすれば夢がないという人間は想像できない。俺は天才だ。天才にも理解できないことがある。俺は凡人のことが理解できない。なぜ彼らは夢がないにも関わらず学校に通うのだろうか。そんな状態で学校へ通っても結局は何処かの会社へ就職して一生を社畜として過ごすことになる。俺はそんな人生歩みたくない。そして奴らは夢がないにも関わらず夢がある人間を馬鹿にする。俺には理解ができない。嫌、自身と違う人間に嫉妬でもしているのだろうか。そんな人間は義務教育を終えたらすぐに就職をすべきだと俺は思う。就職をすれば金が手に入る。無駄な勉強をするよりよほどましだ。他人に迷惑しかかけることのできない輩など学校へ通う資格はない。例えばドイツであれば専門学校へ通うことができる。日本でも工業や商業、船舶にかんする専門高校はあるが数が少ない。それに職人となるとさらに数が少なくなる。夢とは素晴らしいものだ。しかし夢がない人間がいることは何処の国。何処の世界。何処の宇宙でも変わらないらしい。教師は説明を続ける。俺たちには強化に関する資料がわけられ話に興味のない俺は適当にその資料を眺めていた。
上級魔法。俺たちはまだこの魔法を学んでいない。しかしイレーネの通う特殊魔動科ではこれを学ぶ。だから子どもと見た目の変わらない彼女は俺たちと違って上級魔法を扱えある。なぜ俺たちが上級魔法を扱えないか。それは物理的に不可能だからだ。俺は学校に編入したばかりの時にある事件を起こした。俺の持っている神器である勾玉に魔力を通し学校の壁を破壊したことだ。俺はこの時、体内の魔力、エネルギーが消え倒れてしまった。上級魔法を簡単に言えばこれと同じことだ。俺たちは一年時に初級魔法を学んだ。初級魔法はまさに初級的な魔法で水や火を出すというもの。これですら苦戦する生徒もいる。俺からすれば簡単なのだが。しかし初級魔法は魔法の世界では文字に表される通り簡単な魔法。魔法使いになるには必ずこの初級魔法ができなければならない。だから魔術学校に通う俺のクラスメイトたちは時には部活や遊びの時間を削ってまで練習をしていた。教師たちも落第者を出したくないのか落第者を出すと出世に関わるのか必死に生徒の面倒を見ていた。そのお陰か俺のクラスからは落第者は1人も出ていない。アクトゥルスも成績は良好だという。いや、魔術学校へ通う以上、初級魔法はできて当然なのだが。それができなければ一般学校へ通ってごく普通の生活をすればいい。そして俺たちが上級魔法を学べない理由。上級魔法を一言で表せばスケールが大きい魔法。ということだ。地球で一番の武器と言えばツァーリボンバがあげられる。世界1の水爆。さらにはロンギヌスの槍。もっとも本当に存在するかは分からないが。これらは浪漫だけは兵器の中でもダントツだろう。俺からすれば大好きな武器。そして上級魔法。特に上級魔法の中でも最高峰の魔法はこの武器と同程度の威力になる。その例として水蒸気爆発を利用した魔法が存在する。火、土、水。それらの魔法を使用する。水を高温にさらし蒸発させ水蒸気にする。水を水蒸気に変えれば体積が大きくなる。それを利用し水蒸気爆発を起こす。地球では紀元前からヘロンの蒸気機関というものが存在したことが分かっている。また近代に至るまでにドニ・パパンの蒸気機関などが登場し19世紀前半。ロバート・スティーブンソンがリバプール・アンド・マンチェスター鉄道にてロケット号を誕生させた。地球での人類と蒸気による歴史は長い。そして当然、近代的なこの異世界でも蒸気の存在は知られていた。魔動車の存在するこの世界で現在、蒸気機関は使われていない。しかし日本でも蒸気機関車の動態保存が行われたように一部の地域ではガソリン車と共に蒸気機関車が存在し保存されているらしかった。そして当然のごとく鉄道ヲタクのような人間が存在し資金を出し合いそれらの保存に協力している。そんなことを知っている人類が水蒸気爆発を知らないわけがない。だから上級魔法では水蒸気爆発を利用し規模の大きな魔法を行うこともある。ただ、それは先ほど記した通り三つの魔法を併用する。だから技術的にも難しい。だが上級魔法が選択式になっている一番の理由はエネルギー量から来ている。俺は前に事件を起こした時に倒れてしまった。それは体内の魔力量の減少に伴うもの。上級魔法を使えば初級魔法以上に魔力を消費する。人間は1日に2000程度のカロリーを消費するが上級魔法に使うエネルギー量は明らかにそれを上回る。初級魔法ですらふらつく時がある。だから魔術学校では積極的に間食を奨めていた。俺もチョコレートに似た食べ物をよく食べる。つまり俺たちではいくら技術があっても上級魔法が扱えないのだ。だから進級するとまず体作りから始まるという。体内にどれだけの魔力をためることができるか。そもそも人間の中にそれだけのエネルギーがため込めるこかと不思議になるが、それも含めて進級後に体作りを行うらしい。ちなみにイレーネはそもそも体の作りが人間と少し異なるために上級魔法の習得には困らなかったそうだ。さすがはエルフというだけある。ただ、上級魔法を習う者には救済的な処置もあるようで体外から点滴のように魔力を流し込み上級魔法を扱うことも可能なようだった。魔力を人から人へ移動させる魔法が存在するこの世界なのだ。そういうことも可能なのだろう。
教師はまだ話しを続けていた。ただその話題はやっと錬金術へと以降している。俺は錬金術のことが少し気になり教師の話に耳を傾ける。それと逆に周りの生徒たちは錬金術に興味ないのかできないと諦めているのか先ほどの俺が行ったように手元の資料へ視線を落とし込んでいた。そして教師は話しを続ける。錬金術。原子の単位から物を生成するもの。例えば俺の周りにある空気を金や宝石に変えることもできる。つまり今、俺がここで錬金術を使用すれば周りの人間を窒息死させることもできるのだ。だが俺にはそこまでの能力がまだ存在しない。しかしいつかはそれぐらいできるようになってみたいものだ。勿論無駄な殺傷は行わないが。そして錬金術は物の生成時に生成物に術式を埋め込むことができる。人工魔法石などの作り方だがこの方法を使えば神器も作れるこもしれない。そう。仮に神器に関する資料を俺が手に入れることに成功すれば俺はまさにチート級の力を手にすることができるのだ。俺が失った神器の資料。俺は絶対にそれを取り戻してみせる。
教師の話が終わり俺たちは教室へ戻された。そして先日は資料だけだったのに対して今日は選択授業の書類が配られた。これに丸を付ければ俺は錬金科へと進級できる。周りの生徒はまだ悩んでいるように感じる。勿論、俺以外にも一部の生徒は進級先を決めたようで悩んだ様子はなかった。俺は家に帰るとすぐに保護者代わりをしてくれているイレーネの父親のもとに書類へのサインを求め行く。彼も俺が錬金科へ行くことは理解しているために何も言わなかった。翌日、俺は真っ先に担任の下へ書類を提出した。担任も呆れたようにその書類を受け取る。そこで俺の錬金科への進級が決定した。
なんか衝動的に