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THIS WORLD IS ONLY USES MAGIC  作者: 海野 幸洋
32/57

魔法しか使えない世界 学校編7

10

その日俺は街を歩いていた。ある物を探して。

「こうやって2人で街中を歩くのは初めてですね。」

隣ではイレーネが俺と足並みをそろえて歩いている。そして後ろからも男が歩いていた。

「これが2人といえるのか?」

俺たちの後ろにはクルスがいる。クルスはイレーネを当主以上に溺愛している。彼は完璧な人間のように装っているが実際はそうではない。クルスの身につけた上級魔法はたしかにすごい。未だ上級魔法の使えない俺からすれば越えなければならない対象だ。だがそれは戦後に彼が膨大に与えられた時間において成し遂げたもの。努力の成果。

「それで今日は何をするんです?」

イレーネは話題を変える。それに対して俺は応えた。

「捜し物だ。」


俺は数ヶ月前に自身がイレーネによって発見された場所を調べていた。

「何を探しているのですかタケル?」

彼女は俺の顔をのぞき込み聞く。クルスは近くの壁に寄りかかり遠目に俺のことを観察していた。

「なあ俺にはずっと気になっていたことがあるんだ。俺はどんな状態でこの場にいたんだ?」

俺には疑問があった。俺がこの世界に来た時、俺は太郎氏から貰った小型にパソコンを洋服にポケットにしまっていた。しかし異世界に転移してから俺はそれを一度も見ていない。あの端末の中にはドラゴンナイト氏から頂いた神器や異世界に関する資料のデータが入っていた。あれがあれば俺の持っている神器のことも分かるかもしれない。しかし俺の手元にそれは存在しない。だから俺には疑問だった。ヒトガタ氏からの強化細胞は確かに俺の体にある。しかしそれ以外のものを俺は持っていなかった。

「どんな状態も何も裸でしたよ。」

「裸?」

俺は当時のことをほとんど覚えていない。覚えていることと言えばあの日雨が降っていたということだけ。雨。雨は神話などでもよく取り上げられる話題だ。創世記に綴られたノアの箱船の話は日本でも有名である。またノアの箱船のような洪水に関する神話は世界各地に多く存在する。これは創世記が実際に起きた出来事であることの決定的な証拠として浪漫会ではよく話される議題の一つだった。また雷神など各国には天気を司る神も多く存在する。それに俺の神器の一つである草薙の剣は雲を司る神器とされていた。これは仮の話だが俺が転移した日、雨が降っていたことは草薙の剣が原因かもしれない。

「そうです裸です。」

イレーネの言葉で俺は再び我に返る。イレーネは20歳を越えるハーフエルフの少女。エルフの血を引くという特性から魔術学校では特殊魔動科に通い。俺たちがまだ少しも習っていない上級魔術や特殊な魔術を学んでいる。ただ彼女の外見はとても20歳とは言えない。彼女の背は低い。彼女の身長は小学生程度しかないのだ。おそらく彼女の成長の早さは通常の人間の2分の1程度。父親がそもそも60年以上生きているにも関わらずまだ元気に活動している。長年の人間との交配の結果であるがまだハーフエルフは人間より長寿であり成長も遅い。だからだろうか。彼女の精神的な年齢もとても高いとは言えなかった。それでも口調などは努力して大人を装い、また性格も20ねん生きた結果なのか大人びているようには感じる。しかしそれは大人のまねごとでしかない。とくに俺は彼女が屋敷でもよく父親に甘える場面をよく見る。それがエルフとしては当然なのだろうが俺からすれば少し慣れない部分もある。特に俺が居候としての生活に慣れたばかりのころ一度だけ彼女は俺と風呂を共にしたことがあった。その後親ばかなクルスによってそれは禁止にされたがその行動も精神年齢の低さから来るのだろう。だからか彼女は俺の裸を見ても特に同様したとは言わなかった。

「それで捜し物はなんなんです?」

彼女はまた俺に聞く。俺はそこで太郎氏からの授かり物について話した。


「小さなガラスの石版ですか?」

小型のパソコン。俺はそんな言葉でそれを説明した。相手が知らない物について説明することは難しい。だから俺はそんな風にしか説明できなかった。とはいえ手帳を持参していたために絵を描き説明することはできる。ちなみにガラス生成の技術もこの世界ではすでに確率されたものになっている。まあ地球よりも発展しているかしていないか程度の文明では当然のことなのだろう。

「ああ。」

そこでイレーネは納得の声を出した。そこに俺は驚く。

「これ、一般人ならみんな持っていますよ。タケルがこの世界の住人でないことは出会った時から分かっていますがあなたの世界にも同じものがあるのですね。」

俺は少しの間黙り込む。この世界に来てから俺は小型のパソコンというものを見たことがなかった。それがこの世界に存在すると彼女は言う。俺が知らないうちに世界の構造が変わったのだろうか。やはり五分前創造説は正しかったのだろうか。

そして俺の顔を見て彼女は言う。

「お父さんも酷いんですよ。普段は甘やかしてくれるくせに私が“頭の良い遠い音”が欲しいって言うと私にはまだ早いって。」

頭の良い遠い音。言葉の意味は俺の世界で俺が持っていた物に対しての世間的な名称と一致していた。いや、文明の段階から言えば存在しないほうがおかしい。だが俺はその言葉をこの世界で今日初めて耳にした。


スマートフォン


この世界にもそれは存在する。動力はやはり魔力。そしてこの世界での電話、いや魔話は電波では魔力の振動で通信する。そして意味に含まれる頭の良いという通りこの世界のスマホもなんでもできる。通信だけではない。インターネットという蜘蛛の巣の中ではその可能性は無限大だ。ただ、その危険性も地球と同様に指摘されているという。だからイレーネはスマホが買ってもらえない。おそらく年齢のよるものなのだろう。屋敷内でスマホの存在がしれなかったためこの世界のことを調べても書籍や屋敷の人間にしか聞くことができずに俺は存在の確認ができなかった。そして魔術学校でもスマホの持ち込みが禁止になっているという。俺は校則を左右されないとそもそも校則に目を通していなかったため気づかなかった。だから学校の生徒も学校でスマホを使わない。もしかしたらアクトゥルスたちもスマホを持っているのかもしれない。しかし学校に持って来ていない以上俺はそれを確認することもできなかった。スマートフォンは危険な物。それが全ての世界の常識。例えば育児。スマホ育児という言葉があるように日本ではスマホを幼児に渡すことを棄権しする声があった。それは俺も同意する。幼児には母の愛が必要だ。機械が人を育てることは可能だろうか。未来では可能だろう。浪漫会のメンバーの中には人工的に脳を作ることを目指す人間がいた。人工的に細胞を作りニューロンを作る。そして無機物の脳が完成する。しかし俺がいたころはまだ実現していなかった。魂の存在。浪漫会では魂が存在することは常識だ。俺も魂の存在を肯定する。しかしスマホには魂がない。俺の考えだが原始的な生物。核すらまだ持たない生物も何かしらの行動をする。生物が脳を手に入れたのは最近の話だ。虫やクラゲは脳を持たない。しかし行動はする。俺は生物は皆魂があると考えている。仮に生物間での入れ替わりが可能だとする。男女が入れ替わるのは漫画などでよくあるネタだ。それは人間だけではない。俺は入れ替わりは人間と原核生物。バクテリアの間でもできると考えている。しかしスマホと人間は入れ替わることができるだろうか。金属生命体、無機物生物であれば入れ替わりは可能だろう。しかし今の人類の科学が生み出した機械には魂が存在しない。それに子育てはできない。それが俺の考えだ。スマホは便利な道具である。だから道具としての利用価値はある。だから利用方法を考えていかなければならない。

ただ、この世界ではスマートフォンの利用方法として地球と違う部分もあるようだ。この世界と元いた世界とで決定的に違うこと。それは魔法があるかどうか。この世界にはスマートフォンを使った魔法がある。特殊魔法の一つだ。俺の神器と同じくチートのような物。特殊部隊ではスマホ魔法を使う専門の部隊があるという。しかしスマホ魔法の実態はイレーネもクルスも知らないらしい。この世界にはまだ俺の知らないことが多くあるのだろう。こんなに身近なことでも俺が知らないことがあった。だが神器や異世界に関する資料を手に入れないことにはことは進まない。この世界に浪漫会はない。俺には新たな目標ができた。俺は必ず資料を取り戻す。そして俺のことを見下した人間たちを見返してみせる。


今回学校関係ないけど

本編っぽいこと

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