魔法しか使えない世界 学校編1
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朝、俺は魔術学校の部室等内にある武器研究会部室前に来ていた。
「この世界にも部活があるとは驚いた。」
「あなたの世界にも部活があったのですか?」
そして隣にはイレーネが立っている。
「イレーネ、お前まで来なくても良かったのだぞ。」
「あなたは異常です。1人にはしておけませんから。」
俺のことを心配しイレーネは俺についてきていた。すでに部室には明かりがともっており中に人がいることが確認できる。俺は扉をノックする。それに対し中から女の声が聞こえる。俺はそれに答えると扉を開けた。
「来たようだな編入生。」
中には男女が2人。昨日に俺に話しかけて来た2人だった。
「さあ、これこそが我が神器の一つ草薙の剣だ。」
俺はアクトゥルスたちに剣を見せる。約一ヶ月前、岸田先輩と共に手に入れた三種の神器。消えた岸田先輩。俺がこの場で新たな人生を謳歌する間、彼女は何をしているのだろうか。シュメさんが消えた次の日。彼女に抱きつかれた温もりを俺は忘れていない。あの日の彼女はいつもと違っていた。普段の彼女にはない温もり。親に理解されなかった俺にとって人の温かさを初めて知った時だったのかもしれない。
「どうしたのです?」
イレーネが俺の顔をのぞき込む。俺は我に返りアクトゥルスたちの顔を見た。何故だろう。中学時代とは俺は俺自身が変わった気がする。浪漫会の仲間と科学について語ってきた時は楽しかった。中学の化学部で多くの賞を受賞した時は喜びを感じた。しかしオカ研に入り俺よりも優れた人間を見て、そして異世界へ転移し科学を使えなくなって。気持ちが萎えている。今の俺は俺ではない。
「これは、起動できないのか。」
「起動?」
俺は剣を観察するアクトゥルスへと質問する。
「これは神器なのだろ。それに何かの術がかけられているように感じるが。」
彼の言葉に俺は応えられない。剣について俺は全く知らない。俺はだまり、ああとだけ言葉を発した。
俺とイレーネは部室を後にする。
「それで、彼らの部活に入部するのですか?」
部室塔からの帰り道、隣を歩くイレーネは俺の前を見ながら俺に聞いた。
「分からない。アクトゥルスたちは良い人間だが俺はあの部活に浪漫を感じなかった。」
「浪漫、ですか。まあ部活は入らなくてはならない物でもないですしね。私も勉強が忙しくて部活は入っていませんし。」
「勉強か。エルフは時間が多いように感じるが。」
「時間が多い分、覚えることも多いんですよ。」
俺の成長速度はエルフとは違う。神である俺にはエルフの苦労は分からないのかもしれない。
俺とイレーネはクラスが違うため途中で別れた。俺は自身に通う総合魔動科の教室へ入る。俺を見るとクラスメイトたちは哀れな目で俺を見る。昨日のことがあれば当然の反応なのだろう。俺は気にせずに席へと着く。そして教員が入出した。いつの間にか先ほど部室塔で別れた2人も席に着いている。その日はおそらく俺の人生の中で一番平凡な日だったかもしれない。