魔法しか使えない世界 始まり編
魔法しか使えない世界
1
「太陽神に感謝を。」
窓からの注ぐ恒星の光によって俺は目を覚ます。地球人の体内時計はパンスペルミア説により、おそらく生物が火星に由来するからなのだろう。しかし、この星の1日は24時間でも25時間でもない。ただ光とは凄いもので俺はすぐにこの星の1日に慣れてしまった。そして俺は目の前の幼い少女に目を向ける。
「おはようございます。タケル。これで合っていますよね。」
耳のとがった幼げな少女。ハーフエルフの少女、“イレーネ・アドラー”。
この星での一ヶ月前、俺は彼女に雨の中助け出された。そんな彼女と俺は一ヶ月を過ごしていた。勿論ただ屋敷にいたわけではない。彼女と共に屋敷の周りの散策、この世界についてを聞いたりした。そしてもっとも大切なことである言語も学んだ。彼女によれば俺の言語学習のスピードは異常らしい。とはいえ彼女の行う魔法、テレパシーがなければこれだけの短時間での習得は難しかっただろう。
「太陽神に感謝を、イレーネ。日本語の挨拶はそれで正解だよ。」
太陽神に感謝。この星のおはようの挨拶だ。朝は太陽神。夜は月神に感謝を表す。昼は良い日で通じるらしい。そして俺の言語学習とともに俺も彼女に日本語を教えていた。これもまたテレパシーの力か彼女が日本語を覚えるスピードも早く感じた。
そして今日、俺は俺にとって新たな一歩を踏み出す日となる。
「早く登校の準備をしてくださいタケル。」
そう、ついに俺はこの国の魔術学校に入学することとなった。アドラー家はこの国では力のある家であるらしい。だから俺もイレーネの意向から王立魔術学校にへ入ることになったのだ。とはいえ岸田先輩たちのように魔術を使いこなしたかった俺にとっては好都合なことだった。岸田先輩。突然姿を消してから一度も会っていない彼女。光の差し込む窓の外を眺め俺は黄昏れた。そこにイレーネが顔を覗かせる。ハーフエルフの彼女は見た目は幼いがすでに20を越えているらしい。父親によれば本来のエルフの成長はもっとおそくすでに億を超えた者までいるとのことだった。ただ長年にわたる人間との混血の結果イレーネのように成長が人の半分程度にまでなったらしい。
「なにをしている2人とも。早くしなければ遅刻するぞ。」
突然扉が開けられ男が部屋に入ってくる。
「クルス。ノックぐらいして。」
ホムンクルスの男性。彼も60年前から生きている人で長年この家に仕えているらしかった。俺たちはクルスにせかされ支度を始める。リビングへ行き朝食を取るとそのまま魔動車に乗り込み学校へ出発した。
「私は特殊魔道科なので学校へ着いたらお父さんと一緒に応接室に行ってくださいね。」
まだこの世界の言葉に慣れていないため彼女がいないと心配な面もあったがそう言われ俺はそれに従う。そして学校に到着するとイレーネと別れ彼女の父親と応接室へ向かった。
久しぶりのオンリーワールド投稿
仮に書籍化したら本気出します、