科学しか使えない世界 最終話
19
無というものなのだろうか俺と岸田先輩は謎の空間に放り出された。周りが見えない。色が無いのだ。ただそれを黒と言っていいかは不明だった。無色。色がない。理解ができなかった。ただ目の前の先輩の存在だけは確認できた。
「タケルくん。」
先輩が言う。何も聞こえない世界で先輩の声だけがはっきりと聞こえる。だがすぐに絶望が俺たちを襲った。先輩の存在が薄れる。手を掴んでいるとい感触はある。俺自身の腕を掴む先輩の手を自分でも掴む。
「放しませんよ先輩。」
だがこの世界ではそんなことは通じなかった。先輩の姿は一瞬にして消えた。どうして今まで掴んでいたはず。でもすでに先輩の姿はない。それは空間の中で叫んだ。ただこの世界で俺の声は聞こえない。そして次の瞬間目映い光が俺を包む。そして俺の背中に激痛が走った。地面の感触。だが今までいた建物の床ではない。おそらく石だろうか。雨でも降っているのだろう。全身を水が打ち付ける。俺はそこで気を失った。
温かい。というか暑い。俺は飛び起きる。目の前には耳のとがったエルフの少女が立っていた。それも手から炎を出して。
「起きましたか。」
日本語。俺は同様する。いや彼女は話していない。直接脳内に語りかけている。魔法。俺は同様し再び気絶した。
次回から魔法しか使えない世界編