科学しか使えない世界 外伝3
岸田先輩編
外伝3
彼は落ち込んでいた。
「タケルくん。」
今日は卒部旅行が終わった次の日。私は部長の代理で顧問の先生に昨日までの報告へと来ていた。部長たちは3人とも今週は用事で学校に来れないため次期部長の私が来たのだった。そして帰る前私はふと気になり部室を訪れていたのである。
「岸田先輩。」
彼は私を先輩と呼ぶ。混乱している時に彼は敬語を話す癖がある。だから私は優しく彼に接する。
「昨日は転送装置ですぐに帰ったから疲れてると思ったけど今日はどうしたのタケルくん?」
「家にいてもやることがないんです。だから部室に来れば誰かいるかと。」
そう、と言って私たちは話を続けた。昨日の彼はシュメという人物からのメールを見てから様子がおかしかった。それに部長たちもみんな明らかに焦っていた。私も急な閃光によって気絶をしたためか何か恐さを感じていた。だから部長がすぐに旅行をやめると言い転送装置で日本へ帰ってきた。
「シュメさんが消えたんです。どこへ行くのかも言わずに。尊敬してたシュメさんが。」
「消えたって?」
「分かりません。メールにさよならと残して。家に帰ったら石版が散らかっていて、それで学会でも聞いたんですけど誰も居場所を知らないって。」
彼の目からは涙がこぼれ落ちそしてその場に彼は崩れた。その瞬間私は何かから解き放たれた気がした。今まで覇気があり私が好意を寄せていた少年。それが今母性本能なのだろうか。私は彼に近づき抱きついた。
「大丈夫。私がいるからね、タケルくん。」