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その9 ハーレムは作ったのだが求めていたような展開ではないのが残念であるが、そんな贅沢を言ってはいけない

「うーん、極楽」

 作り出したハーレムでご機嫌になっていく。

 国一つを制圧してから数年、周りも大分静かになったので最近はこのように欲望に忠実な日々をおくっていた。

 崩壊した国々では多くの者達が不安を抱えながら生きてるのだが、そんな事まで考えるトモヒロではない。

 己のしたい事だけを求めていく。

 数年間あっちこっちで暴れ回っていたのだから、そろそろ少しは落ち着いてもいいかなと思っての事だった。

 統治機構の拡充が間に合わないというのもある。

 特段支配には興味がないのだが、

「少し控えてください、こっちの仕事が増えすぎてしまいます!」

と必死になって訴えてくる部下を袖にすることは出来なかった。

 それに、最近は統治機構であるトモヒロの配下である組織(いわゆる政府という)が治める所よりも、無政府状態に陥った地域の方が広いと感じていた。

 他国を蹂躙しにいく時に、統治されてて落ち着いてる所よりも、孤立して疲弊してる場所の方が広くなっていた。

 それを思いだし、しばらくは出歩くのを控える事にした。

 青春の全てとまでいかないが、思い立ったあの時からあまり休むことなく周辺国を蹂躙してきた。

 たまには休むのも良いかと思っての事である。

 しかし、そうなると意外と寂しい現実に気付いてしまう。



(こういうのって、色々な女の子がいるもんのはずなんだけどなあ……)

 確かにハーレムはある。

 自ら発案して作り上げ、希望者を集めて作っていた。

 無理矢理送り込まれたり、追い込まれてハーレム入りせざるえないような者は出さないよう気をつけて。

 嫌がる奴を連れてきても気分が悪いだけだから、そこは注意をした。

 それでも言いつけを破るバカが出てきたので、それらは容赦なく制裁をした。

 その結果、出来上がったハーレムなのだが。

 やはり創作物との差や違いを感じてしまう。

(あれだねー、『主人公を慕ってくれるヒロイン』なんてのは、お話の中だけだねー)

 悲しい現実がこれだった。

 ただ、そもそもとしてトモヒロがラノベ・アニメ・漫画・ゲームなどに出て来る主人公的な存在なのかは疑問が残る。

 この部分についてはトモヒロ自身も疑問を抱いてはいる。

 やってる事を振り返ると、悪役ではないかと思ってしまう。

 慕って自発的についてくるヒロインはおらず、集めて作ったあたりが実に対照的である。

 もちろん募集で作ったので無理強いはしてないが、強力な存在からの要請は恫喝に等しい。

 一応は本人の意思を尊重してるとはいえ、それでも本人がやむない思いでやってきてる可能性はあった。

 もちろん、最終面接その他で本人に意思確認はしている。

 魔術により本心の確認もしている。

 なので、本当に無理強いにはなってないはずだった。

 なのだが、これはこれで問題もある。

(やってきてるのって、あれこれ狙ってるようなのが多いしなあ)

 野心を持ってるものがどうしても多くなる。

 権力者に取り入ればそれなりの恩恵があるから、そういった者が集まるのは仕方ない。

 また、他に行き場のない者がやってきてもいる。

 まともに生きていけるなら他の道を選んでいたのだろうから、それを無碍にすることも出来ない。

 何にしても、トモヒロを見つめてるというわけではないのは確かだった。



(やっぱり無理なのかねえ……)

 いわゆるお姫様に、貴族の令嬢。

 学者の家の娘に、神殿の家の神女。

 女騎士に宮廷魔術師の娘。

 商人の娘に町娘に村娘。

 裏の世界の盗賊や暗殺者。

 残念ながらこの世界にはいなかった異種族の女の子。

 そういった典型的なヒロインが周りには全くいない。

(なんでだよ、一人くらいいてもいいだろ)

 一人だけとは言うが、一人であってもかなりの希少価値を持つ事に気付いてない。

 本人、贅沢を言ってるつもりはないのだが、随分と欲張りであることを自覚するべきであろう。

 それでも目を引くような女を侍らせてるのだから、文句を言う権利など何一つない。

 世の大半の男がトモヒロの現状を見れば、羨望のあまり血の涙を流すであろう。

 それにも関わらず現状に嘆くのだから、欲まみれもいいところだった。

 この日も気に入ってる女を集めて酒池肉林である。

 それを見れば、いったい何が不満なのかと言いたくなる者が数多く発生するだろう。



 そんなお楽しみの真っ最中にも世界は動いていく。

 ようやく状況を把握してきた各国は慌てて連絡を取り合い今後についての会合を開いていく。

 内容はかなり紛糾したものとなっていくが、トモヒロへの対策であるという一点はゆらぐ事がない。

 この時点で各国はトモヒロの事をほとんど理解してないというか、詳しい情報をほとんど持ってない。

 かろうじて生き残った王族や有力貴族からかすかな情報を得てるだけである。

 だが、それをすぐに信じる事が出来た者はいなかった。

 ごく一部は、『信じられないが、もしかしたらの可能性を捨ててはいけない』とそれも考慮の対象として受け入れはした。

 しかし大半はその情報をほとんど信じはしなかった。

 だが、残存王族などのほとんどが共通して、

「一人の男が首都を壊滅させたのだ」

と述べるので信じるしかなくなっていく。

 それでもまだ半信半疑なのが大半であったが。

 なのだが、それでも会合は連合して事にあたっていくというものに集束していく。

 複数の国が陥落してるのだから、より巨大な軍勢が必要という判断からだった。

 具体的な動きについては全く決まりはしなかったが、とりあえず各国で合同して軍事行動を起こそうという流れにはなった。

 だが、具敵的にどうするのかは全く決まらない。

『これからどうするのかを話し合う事を決めた』というだけなのである。

 国の利害が絡むのでこれはどうしようもないだろう。

 だが、利害など考えてるほどの余裕など無い事を理解するべきであった。

 それで対処が出来るようになるとは限らないが、その後の行動が多少は迅速なものになっただろう。

 話し合い、会合、協議を続けるのは良いが、それだけを目的にしてるとしか思えない動きが続く。

 そうする事で貴重な時間がどんどん失われていった。



 そのおかげと言っては何だが。

「うーん、最高」

 トモヒロは自分の居城で優雅な時間を過ごす事が出来た。

 そうしてる間にも、トモヒロの擁する統治機関は必要な人員を揃え、放置されてる地域を併呑していった。

 手つかずだった地域が次々とまとまっていく。

 もし少しでも早く行動していれば、それらを手に入れる事も出来たかもしれない各国は、みすみす絶好の機会を失っていった。

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