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その6 主人公の無茶に付き合わされる部下は大変な苦労をし、主人公の破壊活動に統治者は泣くしかない

「というわけで、諸君」

 自宅から歩いて十分の所に建設された会議所。

 集まった統治機構の主要人物達を前に、トモヒロは今後の方策について語っていく。

 とはいえ、仕事内容について踏み込んだ事を語るわけではない。

「知ってのとおり、昨日この国の首都に攻め込んだ。

 そして国王を王城ごと破壊した」

 そうすると聞いていたので、集まった者達は特に驚きはしなかった。

 少しばかり動揺はしたが、それも表面に出るほどではない。

 彼らはただ、自分達の上に立つものの言葉を聞いていく。

 それがこれからの仕事に関わるとこれまでの経験で理解してるからだ。

「とりあえず首都は制圧出来た。

 そう宣言もしてきた。

 もちろん、それで国を支配できたわけじゃないだろう。

 各地の貴族が、特に有力者が黙ってはいないだろうさ。

 王族もまだあちこちに残ってる。

 それらを担いで対抗してくるとは思う」

 その言葉に誰もが緊張をしていった。

 トモヒロの力をもってすればそれらを降すのは容易い。

 だが、どれほど強力でもトモヒロは一人しかいない。

 トモヒロが出かけてる最中に本国であるこの地域が攻め込まれたらひとたまりもない。

 それを一体どうするのか、という問題はある。

 だが、トモヒロはそんな事をこれっぽっちも考えていなかった。

「でも、それらはこれから倒していけばいい。

 お前らは、これから増える領地の経営や運営をしっかりやってくる。

 方針は今まで通り。

 それに沿ってやってくれればいいから」

 そう言ってトモヒロはその場を去っていく。

 あとはよろしく、と軽く声をかけて。

 話を聞き終えた者達は肩をすくめるやらため息を吐くやらである。



「毎度の事とはいえ……」

「仕事はこっちに一任だな」

 言葉を選んで一任とは言ってるが、実際は丸投げの放り出しである。

 大まかな枠組みや方針は決まってるが、実際にどのような事をするのかは当事者で考えていかねばならない。

 それだけ大変だし手間がかかるし、失敗も多い。

 しかも人材がいない。

 支配する地域が広がれば広がるほど、それに必要な人員は増える。

 それを揃えるのはかなり難しい。

 相応の教育を受け、それをしっかりと身につけた人材がいるのだ。

 それをトモヒロは倒して倒して倒しまくってしまっている。

 各地の領主にそれに従っていた役人などなどが消えてしまっている。

 その補填に現在かかりっきりであった。

 それでも一年程度でどうにかなるわけもなく。

 ある程度の素養や教養をおさめた貴族の生き残りから適切な人物を当ててはいるが、それでもまだ足りない。

 もしまともに統治するなら、時間をかけて人材を育てねばならない。

 なのだが、トモヒロはそんな事を全く考えていないようだった。

「仕方ない、いくつかの地域から人員を引き抜こう」

「目の届かない場所が増えるぞ」

「分かってる。

 だが、拡大した地域を治めるならこうするしかない。

 無法地帯が出来るだろうが、それもあと何年かは甘受しよう」

 つらい選択だがそうするしかなかった。

 首都まで制圧したならばそこを治める人員が絶対に必要になる。

 でなければより多くの人間が路頭に迷う事になりかねない。

 そうならないように、人の少ない地域から人員を引き揚げ、統治から一時的に外すしかない。

「巡回の役人や警備兵くらいは差し向けよう」

「そうだな、それくらいはしておかないとな」

 でなければ、盗賊などに襲われる可能性がある。

 そうさせない為にも、ある程度のにらみをきかせておかねばならない。

 他にも様々な対応が必要になる。

 それらを考えて、統治機構の者達は頭を抱えていく事になる。



 全てを丸投げにしてるトモヒロは、そんな事関係無しにあちこちを攻めていく。

 首都を攻略してからは、そこを起点にあちこちに動きまくっている。

 おかげで首どころか体ごと飛ばされる領主があちこちに発生していった。

 それが今後の統治をどんどん難しくしていっている。

 その事については何度か下から「お願い、やめてください」と涙混じりにお願いされたりもしてる。

 それに対しての回答は、

「だったら占領地域は後回しでいいよ。

 混乱するならするでかまわないから」

というとんでもないものであった。

 では何のために攻め込んだんだと誰もが思った。

「今すぐ手に入らないなら後回しでいいよ。

 まとまってなければ後で取りにいくのも楽だろうし」

 それまでの間、民衆を見捨てる事になるのだが、それでも放置してよいとトモヒロは答えた。

「無理して面倒みる必要なんてないから」

 あんまりと言えばあんまりな言い分に、泣きついた者達は絶句した。



 こんな迷惑きわまりない侵攻を繰り返し、無政府状態の地域がどんどん広がっていく。

 各地の有力貴族はそこをどうにか奪還しようとするのだが、その手間を考えると二の足を踏んだ。

 下手に回収すれば、人員も資源も投入する事になる。

 拡大していく空白地域を回復するとなると、かなりの手間がかかる。

 そんな余裕は幾ら有力貴族であっても持ち得ない。

 それに、他国への備えも考えねばならない。

 地方の有力貴族というのは、他国との国境線に貼り付けた軍団長でもある。

 当然ながら他国への備えとしての軍勢を備えている。

 だからこそ有力という言葉がついているのだが、それを国内に簡単に向けるわけにもいかない。

 同じくの人間に刃を向ける真似は避けたい……という道義や道徳的な理由もある。

 それ以上に、他国への備えをどうするのか、という現実的な問題が大きい。

 このため、有力貴族と言えども簡単に動く事はできなかった。

 実際、どこでかぎつけたのか国境を接する各国の内部で動きが生まれてきている。

 現時点では諜報員や偵察部隊程度であるが、このままいけば軍勢が寄せられる可能性があった。

 だからこそ、下手に動く事が出来なかった。



 そんな有力貴族をトモヒロは容赦なく倒していく。

「そーれ!」

 地方の有力貴族達の前にあらわれたトモヒロは、彼らの居城を容赦なく破壊していく。

 おかげで地方の統治機構は壊滅してしまう。

 そのままなら隣接国からの侵攻を受けていただろう。

 だが、トモヒロもそれくらいは考えている。

「じゃあ、次はあっちだな」

 そう言って有力貴族が対峙していた国へと向かっていく。

 攻め込む余裕もないくらいに痛めつけておくために。

「向こうの軍隊の駐屯地を壊滅させれば、とりあえずは大丈夫かな」

 かなり適当に考えながら、魔術で身体能力を強化していく。

 その状態で走り出したトモヒロは、時速100キロを越える速度で国境を越えていった。



 翌日、隣接国の地方都市が壊滅した。

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