表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/24

その3 国は何がどうなってるのか把握してないが、その間に主人公は更に暴れていく

 国の方は色々と戸惑っていた。

 混乱してると言って良い。

 何せいきなりあらわれた存在によって、地方が一つ支配を離れたのだ。

 その理由も、

『超絶的な男が一人で各地の領主を吹き飛ばしてる』

というのだから、納得しろというのが無理であろう。

 ただ、様々な情報源からほぼ同一の内容が報告されるので、おそらくこれが事実なのだろうとも思っていた。

 信じがたいことであるが、他に確たる証拠がないのだからこれを事実と思うしかない。

 だが、それはそれで疑問が残る。

「なぜこの者はこんな事をしてるのか?」

 当然の疑問だ。

 目的が何なのか分からない。

 卓越した力があるから支配に乗り出した、と考えるのがまだしも自然なところであろうか。

 だが、いまだに明確な目標が分からない。

 目指すところがあるなら、それをもとに妥協点を探す事も出来るかもしれない。

 今やってる事をやめさせる事も可能かもしれない。

 だが、何が目的なのか、同期がなんなのか分からないから対策の立てようがない。

 どうにかしようと思ったら、実力で止めるしかない。

 武力行使が現時点で考えられる対処方法になっている。

「交渉でどうにかなればいいんだが」

「だが、そのつもりがあるのかどうか。

 あるならこんな事をしないだろう」

「しかし、何の理由もなく地域を制圧してるとも思えん」

「何にせよ、相手の意図が分からないとな」

 そんなこんなで話はどうしても空転してしまう。

 だが、トモヒロの同期を知ったとしても交渉にはならなかっただろう。

 何せ理由が、

『活躍する目的がないから自分勝手に動いている』

というものなのだから。

 騒乱を起こす事が目的とも言える。

 なので、平穏な状態に戻すような事は絶対にしない。

 国を統べる国王以下主要な貴族達は、決してかなわない和解や妥協の方法を求めて無駄な努力をしている事になる。

 その事にも気付かないのは不幸であろう。

 だが、気付いても向かうのは絶望でしかない。

 トモヒロを止めるには実力でどうにかするしかない。

 だが、そこには絶望的な実力差がある。

 国の力を全て終結してもトモヒロを止められるかどうかすら分からない。

 それほどに悲惨な状況にあるのだ。

 トモヒロの力はそれほどに隔絶していた。



 そのトモヒロは、頭に浮かんでくる知識や技術を伝える事に忙しかった。

 おかげで侵攻は足止めを食らっている。

 自分の生活水準を上げるためなのだから仕方ないが、おかげでこの一ヶ月は他の領地を手に入れる事も出来ずにいた。

 しかも、提供した知識や技術はまだ結果を出す段階ではない。

 教えても、それを理解して形にしていくには時間がかかる。

 前提となる知識や情報がなければ受け入れる事は難しいのだ。

 それを少しずつ進めてる最中である。

「電気が出て来るまでどんだけかかるんだろう……」

 そんな嘆きも出てくる。

 魔術で代用できる部分はそれを用いてるが、だからといってそれを広く拡散する事も出来ない。

 魔術を使えるものはそれほど多くない。

 理論上誰でも身につける事が出来るはずなのだが、そこまでに多大な時間や努力が必要になる。

 優秀な技術者を育てるのと同じで、魔術師を育成するのにも時間と手間がかかる。

 そんな魔術師によって科学技術を補強しようとしてもどうしても限界が生じる。

 やはり知識人や技術者はじっくり育てるしかない。

「ネトゲはまだまだ先か」

 それどこから、家庭用ゲーム機すら登場するのかどうかも分からない。

 だが、少しでも生活を良くするためにトモヒロは努力を続けていった。

 全ては己のために。

 結果として支配地域内の知識や技術水準が上がり、それが全体の水準を押し上げていく。

 なのだがトモヒロはそれらについては果てしなくどうでも良かった。



 そんなトモヒロであるが、時折外に出て何人かの領主を撃破していった。

 暴れる事が出来ないストレスを発散するためである。

 そんな理由でこの世から退場させられる領主はたまったものではない。

 あまりの不条理さに泣くに泣けないだろう。

 だが、教育で忙しいトモヒロはストレスの解消が必要だった。

 領土の拡大も兼ねて、時折あちこちを駆け巡っていく。

 相変わらず自分の足で走って移動している。

 下手に馬などを使うより、この方が早くて長時間移動出来るからだ。

 おかげで、トモヒロの領地から100キロ圏内は、トモヒロの日帰り侵攻地となっていた。



「これなら、いっそあちらに服従してしまおう」

 そう考える者も中にはいた。

 他の領主のように死ぬよりは、服従して命を助けてもらおうと考えるものは出てくる。

 内密に使者を送り、支配下に入る事を伝えていく。

 なのだが、それらに対してトモヒロはにべもない

『駄目』という短い言葉がトモヒロの回答となっている。

 撃破するのが楽しいし、そうやって不穏をまき散らせば波乱が生まれると考えての事だった。

 本当にどうしようもない理由である。

 そんな返事をもらった者達の心情はいかばかりであろうか。

 察してあまりあるが、どうしようもない。

 返事を受け取った者達は、涙を浮かべて己の不遇を嘆いた。

 そして、ささやかなものであっても抵抗をしていくしかない事を諦めて受け入れていく。

 彼らに落ち度があったわけではない。

 いつトモヒロが襲ってくるか分からない状況にあるのは、ただただ運が悪かったと言うしかない。

 不憫である。



 そんな不幸をまき散らしてる元凶は、

「さーて、次はどこにいくかな」

と考えながら地図を眺めていた。

 相変わらず正確さのないものだが、今はそれを頼るしかなかった。

 測量は始まっているのだが、まだ領内において行われてるだけ。

 それらが記録されて集積されて地図になるまでまだまだ時間がかかる。

 完成するのはまだずっと先になるだろう。

「先は長いよなあ」

 進歩も発展も簡単にはいかないとつくづく感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ