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その11 あまりにもあまりな対応に、当事者すら唖然として袂を分かつ事にする

 足下の調整をしてからあらためて諸外国へと向かっていく。

 それにあたってトモヒロは、使者を出した。

 これには他国の者達も驚いたが、その内容を聞いてさらに仰天する。



『集まってるのは分かってるから、まとめて相手をする。

 一ヶ月後に、この地方の拓けたこの場所で戦闘をしよう。

 全力でやってきてくれてかまわないから。

 ただ、この指定を破って勝手にこっちに来たら、その場で全国を潰しに回るから。

 それと、使者は無傷でしっかりと帰すこと。

 でなけりゃ、あんたらを皆殺しにする』



 トモヒロのこの申し出に、各国は唖然として憤慨した。

 各国連合を相手にするというのもそうだし、日時と場所の指定までしてきたこと。

 それを相手に出来るという自信。

 各国連合を見下してる、嘗めてるのが見て取れる内容だった。

 それに、使者をちゃんと帰せというのも怒りを感じた。

 敵対してる者に要求する扱いとしては不当とも言えた。

 この世界、戦争中の相手国の使者は殺されても文句が言えないというのが常識である。

 なのに、無傷で帰せというのはどういう事なのか、という怒りも出ていた。

 当然の帰結として、使者は拷問の末に皆殺しになった。

「馬鹿げた要求が通ると思ってるのか」というのが一部を除く大半の国の答えだった。

 これには残存王族とトモヒロの強さを理解した国々が反発したが、大国と呼ばれるところは例外なく使者を見せしめにしようとした。

 それらを止める事も出来ず、結局使者は殺された。

 それを見た残存王族と反対した国々(主に小国)は、密かにトモヒロの所へ使者を送った。



「大変申し訳ありません!」

 いわゆる土下座をする使者に、トモヒロは冷たい目を向けた。

 使者を殺した事への謝罪に出向いてきた者達は生きた心地がしなかった。

 下手をしたら、いや、下手をしなくても自分達が同じ目にあうと覚悟していたからだ。

 そうであっても、わずかなりとも寛恕をいただこうと急ぎ駆けつけてきたのである。

 自分達の命で国が助かるならと。

 そこはトモヒロも理解をしていた。

 なので、

「まあ、あんたらが悪いってわけじゃなさそうだから、それはいいよ」

と自分の考えを述べていった。

「あんたらは見逃してやるから、国に帰って伝えてやりな。

 国の旗と白一色の旗を掲げておいたら見逃してやるって。

 でなけりゃ容赦なく潰すから」

「は、ははー!」

 求めた寛恕をもらえた事で、使者は一安心した。

 これで自国が、家族が、一族が死ぬことは免れると。

「あと、お前らの国だけは潰さないでおいてやる。

 だから変な事は考えるなよ」

「は、はい!

 ありがたき幸せ!」

「それじゃあ急いで帰ってやりな。

 まあ、時間が時間だから一泊くらいはしていってからだろうけど。

 それくらいの猶予はあるだろうよ。

 帰りの代え馬を街道に用意しなくちゃならないし」

「……お、お手数をおかけして申し訳ありません」

「いいよいいよ。

 俺はお前らの所にいる蛮族みたいにはなりたくないから」

 世界において巨大な影響力をもたらす大国。

 それらをトモヒロは蛮族と言い切った。

 そう言えるだけの力があるのだろうと思うと、使者は冷や汗どころか身震いを始めてしまう。

「とりあえず、最初に指定した日には行動を開始する。

 それより先にそっちから仕掛けてきたら容赦しないけど。

 一応、あんたらの国は除外するつもりだけど、巻き込んだら諦めてくれ。

 念のために国旗は置いていってくれ、見分けるために使うから」

「はい、もちろんです!

 ありがたきご芳情に感謝の言葉もありません。

 万言を費やしてもあらわす事が出来ないご温情、しかと国に伝えます」

「よろしく頼む」

 そう言ってトモヒロは使者を下がらせた。



 使者はそれから宿泊先へと案内された。

 贅をこらしたという程ではないが、よく調った旅館であった。

 空調も行き届いており、暑からず寒からずといった温度が保たれている。

 風呂も用意されており、湯船で旅の汚れと疲れを洗い落とす事が出来た。

 食事も、彼らがこれまで口にしてきたものよりは鮮度もよく調理方法も優れていた。

 こういった扱いのあまりの良さに、翻って自分達(の陣営)がしたことを思い出して対比してしまう。

(なるほど、我らを蛮族というのも当然だ)

 使者への非道な振る舞いに恥を感じてしまう。

 これが弱小国がみせる態度ならば、おもねってると受け取りかねない。

 しかし、話しに聞いてる強さが本物ならば、これらは強者が示す慈悲とみる事が出来る。

 例え相手が劣っていても決して蔑みはしないという意思のあらわれであろう。

 そんな者達を相手に何という態度をとったのかと考える事が出来るくらいには、使者は頭を働かせる事が出来たし、教養も備えていた。

(これほどの設備をそろえてるとは。

 思った以上に国力はあるのか?)

 単なる軍事力だけではない、技術・財力・教養などなどを含めた総合的な力は、ともすれば連合を組んでる各国よりも進んでるのではと思えた。

 トモヒロが伝えてる知識や技術をもとに発展はしている。

 使者が感じた事はあながち間違いではない。

 だが、まだ一部の地域にのみ実用化されてるだけであり、それらが拡大していくのはまだまだ時間がかかる。

 それでも、トモヒロの国の力の一端を垣間見た使者は、これもまた報告せねばと考えていった。

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