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その1 主人公、開きなおる

 何も考えずに書いてます。

 テーマだとかそういうもんを求めてはいけない。

「なんてこった……」

 今生で日立トモヒロという名前で生まれた男は頭を抱えた。

 生まれてから物心つく頃までには、自分が転生してることを自覚した。

 というか、前世の記憶がしっかりと残っていた。

 そして、己の能力などを閲覧できる力を持っていた。

 更に、自分の能力がかなり高いことを知った。

『やった、チート転生だ!』と喜んだのが懐かしい。

 しかし、齢十歳くらいになるにつれ、現実を理解していく。

 情報化社会とはほど遠い世界のこと、情報伝達の速度は遅い。

 ことに、何処にでもあるような農村に生まれ育つと特にその傾向が強い。

 テレビもラジオも電話も自動車もないから、時折やってくる行商人からしか世間の動きを聞き出す事が出来ない。

 あとは、村長が領主からのお布令を伝えてくるのがせいぜいだ。

 なので状況把握が遅れてしまった。

 そうして知り得た事実はとても絶望的なものだった。

(なんで……)

 ままならない世の中に嘆く。

(なんで魔王も世界の危機も無いんだ!)



 この世界、確かに剣と魔法が存在するファンタジーな所である。

 なのだが、いわゆる魔王がいない。

 世の中は割と平和で、特に騒乱があるわけではない。

 モンスターも存在せず、人を脅かすのはクマや狼、虎といった動物くらい。

 それはそれで危険なのだが、世界を脅かしてるわけではない。

 おかげで冒険者なんて職業も存在しない。

 一応探検などは存在してるのだが、職業として成り立つほどではない。

 国家などが未踏地域を調査するために、適切な人員を送り出すくらいである。

 民間人が武装して繰り出す事などほとんどない。

 当然ながら、冒険者という職業も成り立たない。

 あるとすれば、金持ちが道楽で探検で出るか、商人などが新たな交易路を見つけるためなどである。

 庶民が繰り出す事はまずない。



 この世界で緊張と呼べるものがあるなら、それは国家間の騒動くらいである。

 しかし、現状では隣接する国々は力が拮抗していて、とても騒乱になりにくい。

 裏側での諜報戦や陰謀などは行われてるだろうが、国同士がぶつかるような大規模な戦争はありそうもない。

 下手に戦争で消耗するよりは、現状の平和を続けた方が得なのだ。

 こんな状況で、無駄に領土拡張などをしようとする者はいない。



 つまり、トモヒロはあふれるばかりの能力を活かす場所を全く持てなかった。

 これで魔王がいて世界征服を狙っていたり、あふれるモンスターに囲まれて人類ピンチだったら良かったのだろうが。

 平和すぎて活躍する場所に恵まれない。

 全く活躍の機会がないわけではない。

 常人離れした能力は村の者達にありがたがられ、様々な所からお手伝いを頼まれている。

 おかげで、七人兄弟の末っ子という足蹴にされて当然の立場ながら村の中で居場所を確保している。

 トモヒロのおかげで増えた田畑、トモヒロが作った水路などがあるのだから無理もない。

 今や近隣の村(最も近いところで数キロほど先)からもお声がかかってるくらいだ。

 領主からも目をかけられている。

 末っ子ながら嫁をとらせて家をたてさせようなどという意見も出ていた。

 順風満帆の生き方をしてはいるのだ、農村の中では。

 しかし、トモヒロが求めてるのはこんなものではないのだ。

(もっと、世界に羽ばたくような、大きな話はないのか?!)

 なまじ力があるだけにそんな事を求めてしまった。



 そして悩みに悩み、考えに考えていき、気がつけば15歳。

 この世界では立派な成人、結婚しててもおかしくない年齢になった。

 こんな所で埋もれるのは嫌だと思っていたので固辞し続けていたが、さすがにこれ以上は嫁取りを拒否する事は出来なかった。

 その相手が領主の親戚、つまりは曲がりなりにも貴族である事からも逃げ場がない。

 もっとも地方領主の、しかも農村を三つばかり治める程度の貴族である。

 親戚といっても実質農家というのがほとんどだった。

 その中でも豪農といえる所の娘なのだから、まあありがたいお話ではある。

 なのだが、そこは腐っても貴族、平民の、しかも自分の所の領民に降嫁させる娘が上玉と言えるわけもない。

 貴族同士の家の繋がり確保で嫁に出されるあたりから脱落したのを引き合わされるのだ。

 体の良い厄介払いと言える。

 当然ながら、容姿・性格ともに色々と残念な結果になってしまっている。

 事前にその事を知っていたトモヒロは、これをどうしてくれようと思った。

 思ったのだが、拒絶出来るわけもない。

 所詮は庶民の末っ子である。

 領主が出した話をおいそれと拒否できるわけもない。

 よほどの理由が無い限りは「ありがたき幸せ」と言って頂戴するしかない。

 トモヒロもそれは理解してるので悩んでいた。

 その果てに、とんでもない答えを出す事になる。



「じゃあ、俺が世の中を波瀾万丈にすればいいじゃん」



 かくてトモヒロは、行動していく事になった。

 世の中平穏無事で活躍の場所がないなら、自分が勝手に行動すれば良い。

 幸いそれだけの力があるのだからと考えて。

 こんな、どうしようもない理由が、世界を混乱に落とし込む事になる理由であった。

 巻き込まれた世界が哀れである。



「というわけで、結婚しません!」

 やってきた領主やら嫁やら村人の前で大声で宣言。

 聞いてた村人と領主その他は呆気にとられて何も言えなくなっていた。

 だが、トモヒロは至って真面目である。

 真面目であるから大問題だった。

「では、行きます!」

 宣言してから領主と嫁に襲いかかる。

 今まで相当に加減してきた力をほんの少し好き勝手に振るった。

 その結果、領主は軽く数百メートルほど地面と水平に飛んだ。

 この領主唯一の御家人は地上から垂直に100メートル以上飛んだ。

 あばずれで有名だった嫁に来た(というよりトモヒロに押しつけにきた)女は、始めて使った魔術によって魂ごと消滅した。

 なお、トモヒロにだけ分かった事だが、その魂はどうしようもなく腐りきっており、救いようがなかった。

 輪廻転生してもどうにもならず、むしろ周囲に迷惑や損害を与え続ける事になっただろう。

 そんなものを野放しにするのも躊躇われたので、容赦なく吹き飛んでもらった。

 残った村人を手にかけるのはさすがに気が引けたので、魔術で眠ってもらう事にした。

 二時間もすれば覚醒するようにして。

「それじゃ、父ちゃん母ちゃん、兄ちゃんに姉ちゃん。

 俺、ビッグになってくるから」

 眠ってる家族に向けてそう言うと、全力でその場から走り出した。

 時速50キロに到達しようかという速力で駆け出すトモヒロは、話に聞く最も近い町を目指した。



 そして到着した町で、トモヒロは盛大に暴れた。

 人口数百人という、農村地帯にしては大きめの町である。

 そこに突入したトモヒロは、迷わず領主の館に突入し、

「ごめんなさい!

 謀反を起こします!」

と律儀に宣言をして領主を吹き飛ばした。

 数人ほどいる御家人などにも、主の後を追って冥土に旅だってもらった。

 さすがに単なる使用人などは可哀想だったので屋敷の外に逃げてもらった。

 それからトモヒロは、持てる体力と魔術を用いて屋敷を破壊した。

 騒ぎを聞きつけた野次馬の目の前で、館は盛大に吹き飛んだ。

 いったい何事かと思う野次馬の前で、トモヒロは大声で叫んだ。

 ついでに魔術で周囲に聞こえるようにもした。

「本日謀反を起こした日立トモヒロです!

 お集まりの皆さん、この町はこの俺がただいま制圧しました。

 逆らったら、この屋敷みたいになります。

 なので、無駄な抵抗をせずに大人しく俺の支配下に入ってください。

 よろしくお願いします!」

 丁寧な口調でとんでもない事をほざいていく。

 それを聞いた野次馬は呆気にとられたが、笑いとばす事など出来なかった。

 馬鹿げた事を言ってるように思えるが、目の前で起こった事を見れば何も笑えなくなる。

 逆らえばどうなるかは明白だ。

 たった一人で屋敷を壊滅させたのだ。

 一般人がかなうわけがない。

「こりゃあ、とんでもない事になったぞ……」

 そんな事を呟いたり考えたりしながら、いきなり起こった事態に立ち尽くしていく。

 何をどうすれば良いのか全く分からなかったのだ。



 そんな町の者達に、

「とりあえずこの近くの村を制圧してくるから、いつもの仕事に戻ってね。

 この地方を治めてる領主にご注進に行くならそれもいいけどね」

 そう言ってトモヒロは駆けだした。

 発言通りにこの近隣の村を攻め落とすために。

 その後ろ姿を見た町の者達は顔を見合わせていく。

「どうする?」

「いや、どうって言われても」

 ざわめきが広がっていくが、効果的な解決方法は全く出てこなかった。

 ようやく、

「とりあえず、殿様にお知らせにいかないと」

という声が出てきたのは、トモヒロが出ていってから一時間後だった。

 その間にトモヒロは三つの村を巡り、力を示して村を服従させていった。



 それから一週間後。

 町と周囲の農村を無理矢理制圧したトモヒロは、そのままより大きな町へと向かっていった。

 町の方は生き残った領主の所の役人と村の村長などに任せてある。

「とりあえず、税率は30パーセント。

 これでいこう。

 あと、必要な工事とかもしていくつもりだけど、とりあえず何が必要なのか分からない。

 だから、して欲しい事を陳情しにきてくれ。

 役人はそれを書き留めておくこと。

 いいね」

 それだけ言って出発した。

 残された役人と村長達は呆然としていたが、トモヒロが立ち去ってから正気に戻って話を始める。

「本気で言ってるのかな」

「どうなんだろ」

「まあ、多分本気なんだろうな」

「そうか?」

「でなけりゃ、ご領主様にこんな事しないだろ」

 言われて誰もが納得した。

「じゃあ、謀反てのも本気なのかな」

「本気なんじゃないのか?」

 あまりにも冗談ぽいので本気だとは考えにくかった。

 しかし、示された圧倒的な力を考えると、嘘とも言い切れないものがあった。

「まあ、言われたとおりにしていくか。

 逆らうのも怖いし」

「そうだな」

「じゃあ、とりあえず……」

 そう言って村長達はしてもらいたい事を並べていく。

 水利権や田畑の境などなど。

 道の整備なども含めて色々とやりたい事はある。

 それらが叶うとは思わなかったが、言うだけ言っておくかと思ってあれこれと口にしていった。

 ただ、その中で文句が何一つでなかったのが税率である。

 30パーセントというのは、これまでの50パーセントより格段に安い。

 これに文句を言う者など誰もいなかった。



 さて、トモヒロが向かった領主の方である。

 この周辺に展開している何人かの領主を束ねるその者は、やってきたトモヒロに一撃で吹き飛ばされていた。

 事前に町から知らせが来ていて、なおかつトモヒロが丁寧にも、

『これから襲撃にいきます、よろしくね!』

という手紙すらしたためていたのにも関わらずである。

 事前の準備など何一つしていなかったのだから当然ではあるだろう。

 だが、仕方ないとも言える。

 たった一人で小なりと言えども領主を倒すような者がいるなどと誰が考えるだろうか。

 現実離れしすぎてまともにとりあうわけがない。

 やってきたトモヒロに、門を破壊され屋敷に突入され、警護の御家人・侍などを吹き飛ばされたとして、誰がせめられようか。

 かくてトモヒロは、決起10日も立たずに地方の一群を手中におさめた。

 大小4つの町と、14の村が支配下である。

 とりあえずこれがトモヒロの手に入れた最初の支配地となった。



 トモヒロの行動に近隣の貴族などが気付いたのはそれから一ヶ月以上も後になる。

 連絡がとれなくなった領主の動向を調べに来て発覚した。

 それを知った近隣の領主は即座により上位の貴族に報告した。

 とんでもない事になってるのは理解していたし、どうにかしなくてはならないとは思ったのだが、単独で動くべきかどうか迷ったのだ。

 正しい判断と言えるだろう。

 まがりなりにも貴族を倒しての反乱である。

 独自の判断で動くには事の重要性があまりにも大きすぎる。

 自分の領地にいたる街道に警備をしきはしたが、奪還のための兵を出すかどうかはより上位の領主の判断をあおがねばならない。

 とりあえず出来る事は、緊張感を持ちつつ待機という事になる。

 なのだが、それらはトモヒロによって瞬時に粉砕される事となった。

 街道を封鎖していた兵士が、走ってやってきたトモヒロに殴り飛ばされたからだ。

「お前らがいるから、物資が届かないだろうが!」

 これがトモヒロの言い分である。



 当たり前だが物資は勝手に動いたりはしない。

 行商人などによって運搬されて移動する。

 しかし街道がふさがれた事で、トモヒロの領土内にこれらが入らなくなってしまった。

 いくら食料生産地の農村であるとはいえ、これでは必要な物資が手に入らなくなる。

 鉄を始めとした原材料に加工製品は他からの流入に頼るしかない。

 それらを止められてしまったら生活に支障が出る。

 なので、それを止めてる連中をトモヒロは粉砕した。

 これにて物資の運送は再開されるはずである。

 だが、このままだと再び街道が封鎖される可能性がある。

「……やっちまうか」

 こんな事をしでかした連中を撃破する。

 そして、物資を確保する。

 その為だけにトモヒロは、近隣領主をも下す事にした。

 行き当たりばったりと言うしかない。



 そして一ヶ月で近隣の領主は倒され、トモヒロの勢力圏は拡大した。

 こんなんでいいのかと思うが、とりあえずこんな調子でいこうと思ってる。

 考えたら負けである。


 それと、タグ/キーワードに何か適切なものがないかと考えている。

 これが良いと思うものがあったらメッセージを送ってもらえればありがたい。

 採用できるかどうかは分からないけど。


 誤字脱字もメッセージで教えてもらえるとありがたい。

 感想などもメッセージにておねがい。

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