さよならを抱いた君と
【 さよならを抱いた君と 】
あと少しだけ
まだ今日で居させて
君の声がきっとまた消えていくから
ホリゾンブルーの世界
目覚めたくない風が
絡み付く夜明けを振り払う
人形の髪を梳いていた手を
開いてみた
君の体温なんてもう
何処かへ行ってしまったの
あと少しだけ
まだ君が居るのなら
僕は伝えたい想いを
紡ぐことは出来るかな
どんなに触れ合っても
君はきっと知らない
僕の溜息の理由を
このまま総て零れ落ちていくの
何時かの記憶が浮かんでは
積み重なっていく
微妙な距離を僕は泳ぐ
けして上手では無いけれど
手を伸ばせば
未来は変わるでしょう
破壊からの再生を
僕は恐れている
あと少しだけ
僕の空白を
君の色で染めてくれたら
君が触れた指先から
喪失感に蝕まれていく
満たされた順に僕は消えてく
君に塗り替えられる
失うものと解っていた筈なのに
追い駆けてしまった
僕は愛していた
もう遅くて
何時かさよならを抱いた君を
失くしても寂しく無いように
最後まで手を繋いで居るか
そっと離れて往くべきか
きっと僕を忘れないでね、なんて
言えない
言わないけれど
僕の世界に君の残響は響き続けるよ
何時かさよならに届いた君に
「寂しくないよ」なんて
最後まで手を繋いでいるのに
言えないよ
怖いよ
離れていく
きっともう逢う事は無いだろう
世界は忘却を描き続けるのだから
『水銀拡散』からの加筆修正版となります。
お読み頂き、大変有難く存じます。