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猪突「妄信」

知り合いに見てもらっているはずなので、「見てくれている人はゼロではない」と言い張って見る。


誤字などちょいちょい直しています。

もし見かけて仕方ないなあ言ってやるかとなったらどうぞご教示くださいませ!喜びます(だから何だ




「じゃ、お願いします。」


「えー……丸投げぇー……。」


振りかぶって匙どころか全てを投げ込んできた。

サポートキャラクターがサポートをさぼっている。


「それともさっきの場所に戻ってみますか?」


「戻れるの?」


「三割ってとこですか。」


「高いのか低いのか……。」


ぎるるる、とうなるような音がした。

すげえ、とハリ。


「腹のほうが返事が早い。」


「あーのォ……確かにお腹減ったけど!我慢、できると……思う。」


「ほら、腹の虫もそういってますから。」


そりゃ出来たらいい、とは思うけれど。

さっきの少年は私の作ったディトォだと確信も得たい。しかし。


「街とかにいたら、私たち、目立つよね。」


「あー……」


「ハリはフワフワしてるし、私は服装が時代にあってないし。」


私の考えた世界だとするなら、時代設定は中世くらいであるはず。

もし彼が街中にいたとしたら、うさんくささでは私たちに軍配が上がるだろう。

必然目立ったあげく、彼に見つかる公算が高くなる。


どうしようか。考える擬態をしながら思考を放棄しつつあったところ、嗅覚がなにやら訴えかけてくる。


「なんか獣臭い……」


周囲をみた。匂いをたどる。霧が邪魔する。

木、沢のせせらぎ、下生えの緑と茶色の。

茶色?

動くものを捉える。目を凝らす。

なんだあれは。茶色の毛の山だ。モヒカン?

思考の追いつかないうちに、ハリが紺の視線を辿った。モヒカンが草を割った。


「そのまま、視線を外さないで下さい。」


低い声で告げるハリに、事態の飲み込めないまま言う通りにする。


「ゆっくり動いて。早く動いたら突っ込んできます。」


突っ込んでくる。生き物。ここは森。そして水場。


「え、イノシシ……?」


「アンタ狙われてますよ。」


黒い目が、鼻が、じっとこちらを伺っている。

大型犬くらいの体躯。

彼我の距離は約五、六メートルと言うところ。


今のところ興奮していないようだが、はたして突進に前兆があるのだろうか。

あったとて、こちらはど素人。見極めなど出来るはずもない。


「野生の動物にスキ見せて無事でいることができると思わないで下さい。」


ですよね。

しかしこのままじっとしていたら解決するのだろうか?じわりと焦りが湧く。

何かの気配が静かに動いている。ハリか。


「槍で突いて、あの石みたいになったら困りますから、抱えて逃げますよ。」


想像の中、イノシシめがけて槍を繰り出したのに攻撃が透けてしまい、カッコ悪く転ぶハリをみる。


「ぶほ」


思わず吹き出してしまった。

とたん全身が総毛立つ。やってしまった。

まるでスタートの合図だったかのようにまさしく猪突してくる獣。万事休す。

脇からタックルを受け、本日二度目の俵担ぎで運ばれる。真横に逃げるハリ。

ところがある程度いってから方向を変えた弾丸は意外と初速が早かった。


「ハリ!!」


ハリの左足にぶち当たった。


「うおっ……」


ハリが倒れれば自分も巻き込まれて地べたに放り出されるだろうことを予測して、身を固くする。


が、いつまで経っても衝撃はない。

代わりになぜか頭上に持ち上げられている模様。

されるまま肩車状態にフォームチェンジされた。


通り過ぎていったイノシシは、またしても急旋回。

ハリの下半身に突っ込む。

それを見ながらハリは微動だにしなくなってしまった。


「ちょ?なんで止まっちゃうの!」


イノシシからの第二撃が見事に両脚を突き抜けていく。


「え"っ」


「なるほど。こういうサポートは出来るってわけね。」


イノシシはさらに右足付近に三撃目。

を、与えようとして、やはりすかーっと突き抜けてしまった。


「透明人間??」


「どうやら、あん……マスターだけに干渉できるようですね。俺は。まあなにやら足元が気持ち悪いですけど。」


ハリが徐に槍を突き出した。

突撃を繰り返すイノシシの眉間にあたるかと思われた一撃は、両脚と同じく余勢を削ぐことすらなかった。


「ふうん。」


次に近くのしっかりした木の枝に紺を乗せた。

ハリ自身はそこから二、三歩離れる。


「どこいくのっ」


「まあ見てて下さい。」


力を抜いて鷹揚に構えるハリ。槍を構えない。

無防備にしか見えずに焦る紺。木の幹を抱く。


イノシシを見れば、ハリには向かわず樹上の紺めがけて突進し、幹に衝突していた。

揺れるものの、樹皮を削るにとどまる。

ぶぎょおぶぎょおと鳴きながらも登れずに同じことを繰り返すイノシシ。


「???」


恐怖に引きつりながらも、あからさまに標的になるであろうハリを無視してこちらにくることに違和感を覚えた。


「やっぱりね。」


「どういう事ー!」


鳴き声に掻き消されないように多少声量をあげて話しかける。

低い声を持つとよく響いていいなあと益体もないことを考えた。


「こいつ、見えてませんよ俺のこと。お互い触れられもしない。信じられませんが俺はこの世界では幽霊みたいなもんらしい。」


ふわふわさせられてるからですね!と若干恨みがましくこちらを見るハリ。

目顔で謝りながらもだってそういえばメカクレ要素も忘れたと関係ないことを思い出す。


「ハリは私にしか見えない……?」


「今のとこは。少なくとも獣にはですけどね。人も同じなら何かに使えそうですか?」


「私だけどうにかすれば……」


そこで存在を忘れられては堪らないとイノシシが甲高い鳴き声を上げる。幹がさらに揺れた。


「うわああわっ。どうしようこれ……もう『都合のいい格好であの子の近くにワープとかできたらいいのに〜』!」


「!」


突然抱きついていた木の幹が形を変えた。

体を支える力が余ってびたんと何かを叩いてしまう。


「あ?」


目の前にはくすんだ赤煉瓦の壁がそびえる。

叩いた手のひらが冷たい。軽く振ると袖口のフリルが揺れた。


「は?フリル?」


自分の服装をみる。

そこには綻びた部屋着ではなく、アイボリーのシャツにフリルが付いた袖のある洋服。ディアンドルのような紺色の編み上げワンピースとシンプルなエプロンに茶色のブーツ姿になっていた。


見渡すと、ハリが側にいる。

自分は赤煉瓦の建物の間の小道のような所に座り込んでハリを見上げていた。

呆然と服をはたきながら立ち上がる。


「中世の町娘……」


「娘はないでしょ。似合ってますけどね。」


「あら……ハリは変わってない。」


「あらー。せっかく褒めたのに。」


「そうだっけ。」


「似合ってますよ。ちんちくりんなのが惜しいですけど。」


「ひどい……?」


何か一言貶さないと気が済まないのだろうか。

たしかに町娘は自意識過剰だった気がするけれど。町女?


イノシシは影も形もない。

変わらないのは紺とハリ、それに未だ薄く立ち込める霧であった。


「わ、ワープできちゃった……?」


「やりゃできるじゃないですか。」


ぽんぽんと肩を叩かれる。

こうなったらいいのに、と思ったことを口に出しただけなのだが。


「なにがどうやってできたのか、条件がわからない……」


「ま、とにかくあいつ探しませんか。たぶんいるんでしょう、近くに。」


こうなったらいいと思いながら口に出して言えばいいのだろうか。それであれば手っ取り早い方法を思いついたので、試してみることにする。


「えー、『ハリは、登場人物の居場所がわかる能力がある。』」


聞いたハリは軽く眉をあげて驚くが、何かに気づいたように振り向いた。


「……居ますね。歩いて五分くらいってとこか。」


「!せ、成功した……!」


やった!と拳を握る紺を冷めた目で見るハリ。


「最初からやりません?こういうの〜。」


「こ、こういう風に設定生やせばいんだよ!便利じゃん!」


「全部ちゃんと考えてから作りゃ確実でしょう。」


正論にぐうの音もでないので唸っておく。

思いつかないのだといえばまた馬鹿にされるだけだと思い、話を逸らす工作にでる。


「いいから行こうよほらさあ」


下手くそな話題転換に呆れるハリ。


「別に位置がわかるなら追う必要はないですよ。それよりこの霧、どうにかしませんか。」


「どうにかする」


「今のみたいにマスターが曖昧にしてるせいでしょう。この霧。描写しないから俺のこれみたいにもわもわフワフワしてるんじゃないですか。」


この町、どこなんです?と聞かれた。

首を傾げながら記憶を吟味する。

あの子がいる作品であればたしか。


「こーーー『ここは宿場町シニヨン。湖と避暑の町で、貴族から商人まで幅広い身分の人々が訪れる別荘地。』」


こぼしたのは呟きの声。

はっきり発声したわけでもなかったが水面にできた波紋のように広がっていった気がした。


鼓膜がザワザワと音を拾う。

人のざわめきや喧騒のようなものが、次第に大きくなってゆく。

小道のひらけた先、大きい道に人が通り過ぎる。

喧騒が大きくなるにつれ、人通りも盛んになっていくようだ。しばらくすると馬車や、ロバも往き交い始める。


気づけばそこここに宿ができ、土産物屋や飲食店が軒を連ねていた。

霧は晴れ、いつのまにか太陽が柔らかい光で照らしている。


「わ、あ……!」


ハリ、と声を上げかけて、もしかしたら他人に見えないかもしれない、ということを思い出したので目線だけで伺う。

ハリは人々を見ながら、どこか誇らしげに微笑んでいた。

うっかり表情に見惚れていると、本人と目があって気まずげに逸らされてしまった。


「シニヨン<お団子頭>ね。で?お次はどうするんで?」


「え、次?」


ごごごぎ、と何かが唸る。

ハリが笑う。


「とりあえず飯にでもします?」


毎度の轟音にいつもはこんな音しないのに……!と腹の虫を両手で締め付けながら小さく頷いた紺だった。







おかしいな。ハリさんがSっ気を帯びてゆく。

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