3.そう簡単に割り切れたら誰だって苦労しない。
シリアスシリアル美味しいよね。
訂正 パパ→父ちゃん
前世に心残りがないと言ったらウソになる。
寧ろ後悔しかない。
思い残したことが多すぎて、夜ベッドに入っては心を痛ませている。
ここで、前世について語るのはいささか場違いと言うもの。
だって私はセカンドライフを楽しむって決めたんだ。
覚えてはいないけど、きっと私は死んだから。
あの嫌なネオン街で、ひっそりと私は私でなくなった。
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「葵生はさ、どうして女の子なのに美咲ちゃんたちと遊ばないんだ?」
中休みの20分。小学生ともなれば、一目散に校庭へとかけて行く。
私も例外ではなく、高学年が行っているサッカーをジャングルジムの上から見ていた。
声をかけてきたのは、クラス一の秀才で眼鏡が良く似合う周くんだ。
学級委員長で責任感が強く、それでいて率先してボールを持って校庭へ走り出す奴である。
ジャングルジムのてっぺんに腰かけて、意気揚々とサッカー観戦をしている私のもとへも、猿のようにするする登ってこれる。運動能力の塊と言っても過言ではないだろう。
小麦色の肌に黒い髪の毛は、周りに比べるといささか地味だが、それでもクラスで絶大な人気を誇る顔の良さとオーラがあふれていた。
一見暗そうで生真面目に見えるが、人当たりもよく、なにより笑顔が多い。
そして、私の唯一無二の親友でもある。
「うーん。興味がない・・・・・・わけではないんだが、外でみんなと駆け回っている方が性に合うから。」
でも、遊ぶ時は遊んでるよ?昔からお父さんかお兄ちゃん役で御呼ばれするもん。
と付け加えると、周は苦笑いしながらやれやれと首を横に振っていた。
「それは、なんかちょっと違う気がする。」
「そうかもね。」
私もなんとなくはそう思ってたけどね・・・。
もう何十年も前に幼少期を過ごした身としては、女の子の世情に合わせて生活するのが疲れるんだなこれが。
だって、背中のこの辺がむず痒くなってくるんだもん。
それに比べて、男連中は単純だし、虫一匹で盛り上がれるんだから楽しくってしゃーないだろ。
「まぁ、葵生がそれでいいならいいけど。」
「ママと、父ちゃんと翠と。あとは、周がいればあとはもう何にもいらない。」
「え?」
周は驚いたようにこちらを見たが、私はなんだか気まずくなって大きな声をだしてサッカー観戦をつづけた。
「いけー充にぃー!!!そこだぁ!!」
「葵生うるせぇ!!!!」
ゴール間近でパスを貰った充にぃは、器用にシュートを決めながら私に向かって叫んだ。
周の顔は怖くて見れなかった。
でも、なんだかよくないオーラが周から出ていた。それでも私は心の奥のこの痛みに触れられたくなかった。
前世に心残りがないと言ったらウソになる。
結婚できなかったとはいえ、結婚してもいいかなと思える人はできた。
私の闇からなにから、すべてを受け止めて好きだと言ってくれた唯一の人。
妹の娘は世界一可愛くて、なんでもいろんなものを買い与えてあげたかった。
父母は結婚しない私にぶつくさ文句を言いながらも、けしてせかそうとはしていなかった。
平凡で裕福でもエリートでもなかったが、暖かくて優しい家族だった。
私は家族が大好きだった。
大好きだったんだ。