表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンド人生  作者: 雪野
3/8

3.そう簡単に割り切れたら誰だって苦労しない。

シリアスシリアル美味しいよね。

訂正 パパ→父ちゃん

前世に心残りがないと言ったらウソになる。




寧ろ後悔しかない。



思い残したことが多すぎて、夜ベッドに入っては心を痛ませている。




ここで、前世について語るのはいささか場違いと言うもの。

だって私はセカンドライフを楽しむって決めたんだ。

覚えてはいないけど、きっと私は死んだから。




あの嫌なネオン街で、ひっそりと私は私でなくなった。





「葵生はさ、どうして女の子なのに美咲ちゃんたちと遊ばないんだ?」



中休みの20分。小学生ともなれば、一目散に校庭へとかけて行く。

私も例外ではなく、高学年が行っているサッカーをジャングルジムの上から見ていた。



声をかけてきたのは、クラス一の秀才で眼鏡が良く似合う(あまね)くんだ。

学級委員長で責任感が強く、それでいて率先してボールを持って校庭へ走り出す奴である。


ジャングルジムのてっぺんに腰かけて、意気揚々とサッカー観戦をしている私のもとへも、猿のようにするする登ってこれる。運動能力の塊と言っても過言ではないだろう。


小麦色の肌に黒い髪の毛は、周りに比べるといささか地味だが、それでもクラスで絶大な人気を誇る顔の良さとオーラがあふれていた。


一見暗そうで生真面目に見えるが、人当たりもよく、なにより笑顔が多い。



そして、私の唯一無二の親友でもある。



「うーん。興味がない・・・・・・わけではないんだが、外でみんなと駆け回っている方が性に合うから。」




でも、遊ぶ時は遊んでるよ?昔からお父さんかお兄ちゃん役で御呼ばれするもん。

と付け加えると、周は苦笑いしながらやれやれと首を横に振っていた。



「それは、なんかちょっと違う気がする。」

「そうかもね。」



私もなんとなくはそう思ってたけどね・・・。

もう何十年も前に幼少期を過ごした身としては、女の子の世情に合わせて生活するのが疲れるんだなこれが。


だって、背中のこの辺がむず痒くなってくるんだもん。

それに比べて、男連中は単純だし、虫一匹で盛り上がれるんだから楽しくってしゃーないだろ。



「まぁ、葵生がそれでいいならいいけど。」

「ママと、父ちゃんと翠と。あとは、周がいればあとはもう何にもいらない。」

「え?」


周は驚いたようにこちらを見たが、私はなんだか気まずくなって大きな声をだしてサッカー観戦をつづけた。


「いけー充にぃー!!!そこだぁ!!」

「葵生うるせぇ!!!!」


ゴール間近でパスを貰った(あたる)にぃは、器用にシュートを決めながら私に向かって叫んだ。

周の顔は怖くて見れなかった。


でも、なんだかよくないオーラが周から出ていた。それでも私は心の奥のこの痛みに触れられたくなかった。








前世に心残りがないと言ったらウソになる。


結婚できなかったとはいえ、結婚してもいいかなと思える人はできた。

私の闇からなにから、すべてを受け止めて好きだと言ってくれた唯一の人。



妹の娘は世界一可愛くて、なんでもいろんなものを買い与えてあげたかった。

父母は結婚しない私にぶつくさ文句を言いながらも、けしてせかそうとはしていなかった。



平凡で裕福でもエリートでもなかったが、暖かくて優しい家族だった。

私は家族が大好きだった。




大好きだったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ