2.セカンドライフは余すとこなく楽しむための取扱説明書。
サブタイトルに意味はない。
「葵生ー。翠ちゃんのお着換え手伝ってあげて―」
「了解ー。」
ここまで大きくなるのに8年も有するなんて思ってもみなかったわ。あたりまえなんだけど。
独身貴族は、立派な平良葵生小学2年生になりました。
周りのガキどもはしょーっもないやつらばっかりだが、遠巻きに白い目で見ていてはせっかくのセカンドライフがもったいない。
そう思って男子に交じって野球やらサッカーやらドッチボールやら、前世では考えられないほどにアクティブに生活しています。
髪の毛も短く、従兄弟のおさがりばかりを好んできているせいか、周りの女の子には葵生君と呼ばれるんだけど。
なんかもはや人生の方向性間違ってきてるなんて、耳が痛いので叱るのは母だけにしてください。
母譲りの青い髪に青い瞳。しかし、いまだにどんな世界に転生しているのか情報は全くございません。
弟の翠は、今年で6つになりました。いまだに着替えに時間がかかるので、手伝うという名目で遊ばないように見張ります。
「葵生ちゃん!僕も早く学校行きたい!小学校ってどんなところ?」
「楽しいところー。サッカーしたり野球したりするよ。」
「お勉強はー?」
「あー、勉強ねー。」
「勉強も楽しい?」
「いやー、正直言ってつまらn・・・・・いやー!!楽しいよ!!!お勉強!!!翠もがんばんなきゃね!」
翠の後ろで母がどうしようもなく鋭い視線で私を睨んでいた。
ばぶ語を話していたあの頃は、とっても優しくてかわいらしい母だった。
なのに、今では女の子らしくフリルのあるスカートを履かない私に、じっとりとした目で迫ってくる。
私が話せるようになってから、母の不審な目は日に日に増してきているのだ。
「葵生ちゃん、ちょっと来て。翠ちゃんは朝ごはん食べててねー」
「「あい。」」
だれもマザーには勝てないのであります。
「葵生ちゃん、あのね。ママは葵生ちゃんがちょっと変な子だってことはわかっているの。なんか渋いおっさんみたいなところがあるところよ。でも、翠ちゃんは違うでしょ。だからね、翠ちゃんにはそういうとこ影響しないように気を付けないとだめなの。」
「渋いおっさん・・・・。」
母の目はいつもより真剣で、先ほどまで翠に見せていた笑顔とは全然違った。
顔とセリフがあってない、あってないよ母。
「とにかく、葵生ちゃんは髪の毛を伸ばして、ピンクのスカートを着ましょう!」
「いやだね!!!!」
今日も我が家はどうしようもない娘に手を焼いています。