1.セカンドライフはばぶ語との勝負から始まる
前略
お母様。
あれだけ飲んでものまれるな。
という格言を頂いておりましたが、今回ばかりは私もよくわかりません。
そんなことより母の作った大根が食べとうございます。
「ばぶゅ。」
ベビーベッドに取り付けるタイプのオルゴールメリーからは、懐かしのメロディーが流れるかと思いきや、全く聞いたことのない超コミカルな音が鳴っている。緑やオレンジのよくわからん恐竜もどきが楽器をもってゆらゆらと揺れて、上手く動かせない指先をかすめる。
あ、これ思ったより楽しいかも
「葵生ちゃんお利口さんね~。え~おてて振り回して、楽しいの?あら、そうなの~。」
「ばぶっ!」
時折ベビーベッドを覗き込む20代後半の女性がいる。
たぶん母親なんだと思うけど、釣り目美人で少し怖い顔。
なのにその顔をゆるゆるに緩めて、まんべんの笑みで私の顔をみてくるんです。
ま、まみぃ強し。
初めて見た時、
生まれたばっかの親せきの子を見に行った時の私にそっくりだと思って、そりゃすんごいたまげました。
それにばぶ語のせいで私の言いたいことは全部向こうのさじ加減で決められてあら大変。
にしても母よ、なんであなたは青い色した髪の毛なんですかね?
これが世に言う、乙女ゲームへの異世界転生(悪役ガール)ですね。
嬉しくなさ過ぎて泣いちゃいそうです。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ばぶゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。」
「あらあら、葵生ちゃんどうしたんでちゅか~?お腹すいたのかな~、おむつかな~。」
いいえ、自分の人生に悲観してるんです。
それにしても、泣く・寝る・食う・出す・「ばふっ!」しかすることねーからつまんねーな。
早く小学生くらいになりたい。