この人生は私にしか描けない。
花菜と大和は父親の顔も名前もどこに住んでるのかも知らない。
母親からは恋愛結婚で、人生で一番好きな人だと聞いてる。
不倫の略奪愛で周囲に反対されながら結婚したことは、
後に祖母に聞かされ右から左に流し何も聞かなかったことにした。
ある日、祖父が大腸ガンで死んだ。
ファザコンだった母親は狂ったように泣きじゃくった。
祖母は冷静に母親をなだめていた。
祖父の葬儀が終わり1ヶ月と経たないころ、
精神的に不安定だった母親が一人の男の人を家に連れてきた。
母「この人事情があってしばらく一緒に住むことになったの。
名前は新垣純也くん!19歳だからママより花菜と大和のが歳近いわ(笑)」
純「よろしくね。」
花菜13歳、大和10歳、秋の肌寒い日のことだった。
母親の頼みが急だったのと、事情がある人を追い出せないから仕方ない。
そんな気持ちだったのを覚えてる。
初めて男の人がいる生活は緊張感で、私たち姉妹は窮屈だった。
私は疑いの目で見る、もしかしたら母親の彼氏?なんて思ったり。
純也が家にきて3日目の夕食の時、急に大和が…
大「純也はママの大事な人?私たちからママを取るの?」
純也はすごく驚いた顔をした。
私も驚いた。
大和も同じことを思ってて言葉にできない不安で怖かったんだ!
泣きそうな私たちをみて母親が笑い出した。
母「なにいってるの(笑)
純也は花菜と大和と同じように子供みたいなもんだよ(笑)
新しいパパが出来たら一番に花菜と大和に言うよ!」
それを聞いて、なんともいえない安心感と喜びで私たちは大泣きした。
中学生でも高学年の小学生でも母親ってのは大きい存在でまだ甘えたい年頃。
その日の夜は母親を真ん中に、左に大和、右に花菜。
3人で理由のわからない涙を流しながら眠りについた。
12月になった。大和の誕生日。
純也はうちに来てから始めた仕事の初給料で
家族分のブレスレットとミサンガをくれた。
母親には、花の形のブレスレットと橙色のミサンガ。
花菜には、イルカの形のブレスレットと白色のミサンガ。
大和には、月の形のブレスレットと黄緑のミサンガ。
そして純也自身は、赤と青のミックス色のミサンガだけ。
この日を境に純也のことを
家族の一員として素直に受け入れられるようになった。
人は案外、単純なことで前に進めるもの。
プレゼントを通して純也の気持ちを少しだけ知れた気がした。




