真珠湾奇襲その4
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敵艦隊の陣容は、戦艦6隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦4隻、駆逐艦13隻だ。
陣形もバラバラだ。我が我がと、とにかく急いで湾から出てきた感じだ。
観測機が過小評価をしていなくて良かった。
対する我が艦隊の陣容は、大和、金剛、比叡、榛名、霧島、青葉、衣笠、阿武隈、
第一八駆逐隊だ。
数では圧倒的に不利だが、此方には大和がいるし、敵は突然の奇襲で、兵員の配置や補給も万全では無いだろう。
勝機は……此方にある!
腹から空気を一旦全部吐き出して、鼻から腹いっぱいに吸う。
「対艦戦闘!目標敵戦艦群、主砲砲撃始め!」
「主砲斉射用意!」
艦橋上部に備え付けられている15m測距儀で得られた情報から、射撃盤が敵艦の未来位置を計算して、主砲が動き出す。
「主砲1番2番3番発射用意完了!」
「撃てェ!」
凄まじい轟音と閃光がした。
両手で耳を塞いだが、それでも体中に物凄い衝撃が走る。
手がガタガタ震えて、脚がすくむ。
重量1.4トンの鋼鉄と火薬の塊が、米戦艦の装甲を貫くために空を切っていく。
この時代において、最も強大な破壊力を有する兵器だ。
”アメ公め、一足早いクリスマスプレゼントをくれてやる。ただし天国への切符も一緒だがな…”
こうとでも思わなければ、正気を維持できなかったのだろうか?
いや…そもそも戦争に正気などある訳がないか…
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米戦艦が、とてつもなくデカい爆音と水柱を出して、真っ二つに折れて轟沈した。
おそらく大和の91式徹甲弾が、敵の弾薬庫か燃料タンクに命中したのだろう。
46センチ砲に貫けない装甲は今のとこは、無い筈だ…
あの轟沈の仕様ではおそらく生存者はいないだろう。
「長官!初弾命中とは、やりましたな!」
「あの艦影、多分カリフォルニアでしょう。」
「大戦果です!続けて砲撃の用意を!一気に畳み掛けましょう!」
「よし、主砲、斉射用意、目標同じく敵戦艦群。」
「装填完了!」
「撃てっ!」
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そろそろ水雷戦隊が、魚雷発射地点に到達する頃だろう。
あれからは、両艦隊とも、至近弾や夾叉はあったものの、命中弾は殆ど無かった。
唯一の命中弾は、大和の後部甲板に敵弾が直撃してしまった。
カタパルトやクレーンが滅茶苦茶に壊れて、偵察機運用ができなくなってしまったが、速力に影響は無く戦闘に支障は全く無い。
と、思っていたら、敵艦の5隻ほどに水柱が立ち、2隻ほど沈んでいった。
恐らく駆逐隊だろう。これまた一瞬のうちに沈んでしまった。
第一八駆逐艦、陽炎型が装備する93式魚雷俗に言う”酸素魚雷”だ。
某ゲームでもなかなかのレア装備である。
今までの魚雷は、二酸化炭素を燃焼させていてので、速度が遅く、航続距離も短く、そして何より航跡が見えやすかった。
それに比べて酸素魚雷は、純酸素を燃焼させるので、速くて威力が強く航続距離が長く航跡が見えにくいのだ。
雷速52ノットなのだ。
夜戦で使ったら、向かうところ敵無しである。
少なくとも米海軍が本格的にレーダー運用を開始するまでは…
この時代に、酸素魚雷を配備していたのは日本海軍だけである。
「水雷戦隊、駆逐隊より戦果報告です。敵艦隊に魚雷多数命中、駆逐艦2隻轟沈、
戦艦ネバダに魚雷1本命中、同オクラハマに2本命中。」
「水雷戦隊に負けてはおれん。主砲、副砲とにかく撃つのだ。敵艦隊を殲滅するのだ。」
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金剛型4隻が続けざまに35.6センチ砲を発砲する。
最高速力30.3ノットで、機動部隊の随伴や奇襲にもってこいの艦だ。
史実ではその使い勝手の良さから東西南北各地で使いまわされた。
帝国海軍の戦艦では最も活躍した船だろう。
ネームシップ1番艦の金剛は、既に艦齢は30歳近い。
進水してから今までに大型改修を2回行っており、その都度外見が大きく変わる。
特に艦橋は原型を留めていない。
そう言えばーーー海上自衛隊のイージス艦こんごうも、既に艦齢20歳以上なのにまだまだ現役、最前線で頑張っているな。
何故だか金剛型は昔も未来も長生きして頑張ってるな。
閑話休題、彼女たちの撃った徹甲弾が、着水し出した。とっーーー敵艦3隻が爆発したな。
「戦艦ネバダ、アリゾナ、メリーランドに直撃弾です!」
「ネバダ、傾斜して…いや、沈没しました!」
もう勝負はついただろう。後は、一隻一隻確実に敵艦隊を潰して行くだけだ。
そう思った瞬間ーーー
後方から、爆発音が聞こえた。
「見張り員より報告です!戦艦比叡に命中弾!」
急いで首にぶら下がっている双眼鏡を向けてみると、第一砲塔を破壊された無残な姿の比叡があった。
「まずいな、比叡に通達。戦線を離脱させて復旧作業に全力を尽くすように。
くれぐれも敵艦隊と心中などという考えは持たぬように。」
「了解です!」
やはり敵も1枚岩ではないな。しかし、此方は比叡が離脱しただけで、金剛型3隻と青葉型2隻、この大和はなおも健在だ。
「一気に畳み掛けるぞ!主砲発射用意、目標は戦艦アリゾナ!一隻ずつ確実に仕留めていけ!」
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この海戦は、日本側の一方的な勝利に終わった。
日本側の損害は、比叡が大破しただけでその他の艦艇は無傷か小破に留まっている。
対するアメリカは、アリゾナ、オクラホマ、カリフォルニア、ネバダ、メリーランド
重巡洋艦2隻、軽巡洋艦3隻、駆逐艦10隻が沈没して、残った艦艇は島の北側へ逃走した。
後に此処、オアフ島南西沖は鉄底海域と呼ばれるかもしれない。