真珠湾奇襲その3
艦隊による真珠湾への殴り込みーーーこれは史実には無かったことだ。
これをしてしまったら、歴史は大きく変わってしまう。もはや未来の知識ではどうにもならなくなってしまう。
しかしーーー歴史を変えなければ、日本をあの悲惨な敗戦から救えないのだ。
いや、既に機動部隊による攻撃で、歴史は変わってしまった。
今するべき事は、徹底的に真珠湾及び米艦艇を叩く事だ。余計な事は考えてもしょうがない。
そんな事を考えているとーー
「ああっ上空に敵影です!あの機影はおそらくカタリナ哨戒機です!」
「艦隊の位置を報告される前に撃墜しろ!対空戦闘用意っ!」
「対空戦闘用意!前部主砲三式焼霰弾発射用意!」
ヴィィィィィィィ
艦内にブザー音が鳴り響く。主砲が発射する時、前甲板にいると主砲の爆風で吹き飛ばされてしまうので、一次艦内に退避するのだ。
主砲が旋回している。2700トンの鋼鉄の塊だ。この大和、最初に発砲するのは三式弾ではなく、対戦艦で徹甲弾にしてやりたかった。まあ、後少しすればその望みも叶うがーーー
「主砲発射!」
「撃てーっ!!」
次の瞬間、凄まじい爆音が聞こえ、猛烈な衝撃波が響いてきた。
夏祭りでの盆踊りの太鼓の比なんかではない。本当にあの甲板にいなくて良かった。
上空に弾幕が6つできた。少しすると、カタリナの破片であっただろうものが、パラパラと落ちていった。
パラシュートで脱出できた者はいないだろう。おそらく即死だ。
「無電室より連絡です!先ほどの哨戒機からと思われる電文を受信しました!
急いでいたのでしょう、暗号ではなく平文です。艦隊の位置と編成を報告されてしまいました…」
「長官、敵は我が艦隊に空母がいない事を知ったので、おそらく艦隊による待ち伏せを行うでしょう。」
「よし、艦隊を単縦陣に変更し、対艦戦闘に備えよ!偵察機を発艦させ、敵艦隊の発見に全力を上げろ!」
「了解です!」
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「大和所属零式水上偵察機2号機より入電です!オアフ島南西沖に敵艦隊発見です!
規模は戦艦5ないし6、重巡洋艦2、軽巡洋艦5、駆逐艦15隻ほどです!」
「よし、我が艦隊はオアフ島南西へ突撃、敵艦隊を殲滅後真珠湾に艦砲射撃を行う。
全艦、第一戦速!」
「いよいよ我が大和の真の力を発揮する時ですな。米軍よ、我が大和の前にひれ伏すがいい…」
参謀の1人が呟いた。黒島参謀だ。史実では特攻を考案した人物だ。(良いか悪いかはここでは言わない。)まあ、そんな事には絶対にしたくないがーー
「黒島参謀、慢心は駄目だ。我が大和、帝国海軍は確かに強い。だが、敵もまたーー
強い。この戦、一度も負けてはいけないという思いで臨まないと駄目だ。」
そう、米軍は1944年頃から週刊軽空母.月刊正規空母なるものを作り出すのだ。
沖縄戦には正規空母をなんと、20隻も投入したのだ。今の日本の軽空母と正規空母を総動員しても勝てないだろう。
特に貴重な戦艦と空母は一隻も失ってはいけない。ミッドウェイのような大負けを
した時点で、この戦争は、積みゲーだ。
この戦いが終わったら、具体的な終戦へのプランを考えよう。自分の正体をバラすのはまだ後にするかーーおそらく下手に話しても混乱するだけだろうし、大本営にバレて司令長官の座を下ろされたりしても大変だからな。
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「見張り員より報告!敵艦隊を30キロ先に発見しました!」
「よし、対艦戦闘用意。主砲91式徹甲弾装填せよ。後続の戦艦、重巡にも射程圏内に入り次第発砲を開始させるよう伝えろ。
第一水雷戦隊と第一八駆逐隊に下命。敵艦隊に肉薄攻撃を仕掛け、攻撃後は一足先に
真珠湾に砲撃をするように。装甲が貧弱だからな。彼らに長居は無用だ。」
「了解です。対艦戦闘用意!主砲発射用意!91式徹甲弾装填!」
いよいよ夢にまで見た、大和の戦艦との戦いが、始まる…!