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カラスの夢薬師  作者: うちゃたん
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人間の世界へ

薬草をすり潰す音、広がる香り

湯を注ぎ、煎じる

あっという間に夢薬が出来上がって行く。





仙人は、目を輝かせてた。

まさか再び不思議な薬を飲む日が来るとはと

胸をざわつかせた。






「不思議な香りじゃの~心と体がほどけて行くような・・・いい香りじゃ」





「夢薬、これはあなたの体に必要な答えを兼ね備える香り・・・夢の中にきっと答えがある・・・」





「夢の中に・・・答えが・・」

仙人はコクンコクンと今にも眠りそうだ。





弾の顔がボヤけて

声が遠くなって行く、、、

目をこするがとても起きていられない。





そして落ちて行った。

深い夢の世界へ。






気が付くと目の前に空が広がっていた。

雲一つない晴天が広がり

気楽仙人は

”えっと・・・”としばらく首を傾げた。






「ほー?ここは夢の中か?」





あたりは草原

空を見ながら寝転んでいた。





仙人はむくっと立ち上がる。

少し強めの風が気持ちがいい。






「しかし青空なんて見たのは久しぶりじゃの

どれどれ~この夢の中に

わしに必要な事があるとか、無いとか・・・実に楽しみじゃの」ニヒッと笑った。






仙人はむくっと起き上がり

そして広がる草原を歩き始めた。

本当に美しい景色だ。





しばらくすると小さな町へ出た。






長い一本道の町。

この一本道には、たくさんの家が立ち並んでいた。






「ほー!人間の住む町か。懐かしいのぉ」






とある家の前を通ると、家の中の風様子が見えた。

子供たちが駆け回って遊んでいる。







「うひひひ~楽しそうに遊んでおるな~転ぶでないぞ~」仙人はこっそりと覗いて微笑んだ。






また、別の家の暮らしも見えた。





「おや、今度は老夫婦が仲良く茶を飲んでおる。わしも母ちゃんと茶をよく飲んだものだ」






どこまで、続く一本道

様々な家族の様子が見える。






この長い道

一体どんな答えが隠れているのか。






「今度は若い夫婦じゃ、初々しいの~頑張れ若造!わしみたいになるなよー笑」






仙人は楽しそうに一つ一つの家を覗いた。

そして、自分が失った人間の暮らしを

愛おしそうに見ていた。






お母さんに怒られる、やんちゃ小僧の家。

酔っ払いの父さんがいる家。

立派な武士をめざす、固い家。

若い娘の嫁に出ようとする家。

両親が他界して、兄弟皆が協力して明るく暮らす家。






一本道に並ぶ家

笑いあり、涙あり、数々の人生は

尊く輝かしかった。






「たくさんの形がある家族、人間って良いもんだな~うひひ」涙をぬぐった。

自分の家族と重なった。






いくつ家を見ただろう

かなり家庭の様子を見てきた。

一つも見逃してはいけない気がして

一つ一つの家を妙に大事に思えた。






「ずいぶんと、沢山の家族を見たな。

さて、次は・・・この一本道の最後の家じゃ。どんな人間が住んでおるんかの

なんだかやけに寂しく感じるのう、ずっとここに居たいぐらいじゃ」







仙人は、最後の家を覗いた。






すると、一人の若い娘が子供を抱いて縁側に立っていた。






「ほー赤子じゃ。可愛いの~」仙人は木陰から覗いている。






すると、赤子を抱く娘が仙人の方へ振り向き

そして、太陽のような笑顔で笑った。






そして仙人に近くへ来るようにと手招きをして呼んでいる。






「わ、わしを呼んでおるのか?」仙人は、キョロキョロした。






「こっち!こっちだってば!」若い娘が呼ぶ。






仙人は、縁側へと入って行った。

すると、娘は驚く事を言った。






「父ちゃん、久しぶりだね」





「と、父ちゃん!?」





「あたいだよ、鈴音すずねだよ」そして、また太陽のように笑った。






「鈴音・・・?、ま、まさか」





「母ちゃんに、目元が似てるってよく言われる。似てるでしょ?」






仙人は言葉を失った。

顔が思い出せないでいた。





「・・か・・母ちゃんは・・・」やっと出た言葉だった。






「母ちゃんはね、この子が産まれてすぐに死んでしまったよ。

でも、孫の顔を見せる事ができた」






仙人は、赤子の顔を覗き込んだ。





そして、一気に過去の記憶が蘇る。





細胞が物凄い速さで繋がって行く

まるで頭から音がするように

すべてを思い出した。

鈴音も、母ちゃんの顔もすべて。






この赤子は、鈴音の小さい頃にそっくりだった。







“そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ!


この娘は鈴音じゃ、わしの娘じゃ!”







「す、鈴音!申し訳なかった!苦労をかけて、何もしてやらなくて、申し訳なかった!」仙人は土下座をした。






「別に~いいよ」鈴音は仙人とそっくりな話し方だ。






「かあちゃんは、いつも言ってた。

変な人と結婚しちまったけど、いい人だって。

今ごろ時間も忘れて、くだらない事してるだろうって、いつも笑い飛ばしてた」鈴音は笑って言った。






「うむ・・・泣

まったく、母ちゃんは何でもわかってる。

本当にくだらない事ばかり、もっともっとお前たちにしてやりたい事が死ぬほどあったのに。

こんな、くだらない生き方を・・・」






「くだらなく何かないさ。

確かに、父ちゃんがいなくて大変な事もあったけどさ。

別に~何とかなったもんだよ。



それに、見たでしょ?

この一本道の、たくさん家族を




あの人たとは、数百年と続いている父ちゃんの子孫だよ

ずっと、ずっと、今も続いている」






「わ、わしの子孫たち?」






「そう、父ちゃんの、夢を追う強い心を受け継いだ者たちが今も、懸命に生きてるのさ」






「わしの命が継がれているのか・・・わしの命が・・・

今でも、生き続けている

わしの」・・・」仙人は肩を震わせた。






「父ちゃん、この子を抱いておくれよ」






「え・・・


抱いてもいいのかい?」






「抱いとくれよ、ほらこの子もそう言ってる」






孫を見ると笑顔で仙人を見ていた。






仙人は、急いで手を拭き孫を抱いた。

豆腐が崩れないよう抱くように、そっと






「そんなに緊張しなくて平気!

この子は強いから」






「あ、あははは・・・・」仙人は笑ってごまかした。






「わしの孫、なんと言う事だ

信じられない」






いつか終わる夢だけど

贅沢は言わない

もういつ目が覚めても良いと思うほど

贅沢な夢だった。




でも、欲を言うのなら

もう二度と目を覚ましたくない。

‘‘一緒にいたい‘‘

そう思ってしまう。

やっぱり人間だからだ。




そんな気持ちをぐっとこらえ

鈴音と沢山の話をした。

聞きたい事もいっぱいあった。






でも一番聞きたかった

「幸せか?」は聞かなった。





聞かなくても

鈴音だったら大丈夫だって思った。





あまりに暖かい時間を

心置きなく過ごした。





「もう悔いはないよ。弾、ありがとう」





そう呟いてゆっくり目を覚して行く

鈴音と孫の手を握りしめながら・・・





空に舞う花びらがゆっくりと

地面に着地するかのように

ふわりふわりと、現実の世界へ仙人は戻ってきた。


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