第八十一話 封印の島へ、いざ出航
封印の島へ向かう、弾と茶々丸とクルミ。
島へと向かうべく光で出来た橋に足を踏み入れた。
橋を超えた所には、迎えの船が待っている。
「では、参ろうか」
「ついに来たな!
弾の大事な、何より大事な、本の著者がわかるといいな!」茶々丸は期待に胸を膨らませた。
「あぁ」
岩にぶつかる波の音、月は海にゆらゆらと浮かぶ。
三人は黙ったまま橋を渡る。
これから世にも恐ろしい島へ行くと言うのに
あまりに綺麗な橋で、何とも複雑な気持ちだ。
なかなか長いこの橋だが、ようやく迎えの船がはっきりと見えてきた。
「やっぱり、緊張するな!だって、島流しの島だもんな。
ワケがなけりゃ行かない場所だ」クルミは緊張のあまり肩が上がりっぱなしだ。
ついに、船へと到着した。
それは小ぶりな船だった。
全身真っ黒な着物に身を包んだ者が、船の上に立っている。
そいつは、頭も黒い被り物をしていて、顔すら見えない。
ただ、黙って立っていた。
恐らく漕ぎ手なのだろう。
「封印の島へと向かう船で、間違えないか?」弾が尋ねた。
だが、漕ぎ手は、黙ったまま。
「きっと、ここで間違えない」そう言って弾は船に乗り込んだ。
三人が船に乗り込むと、光の橋はふわっと消えて真っ暗な海に戻ってしまった。
―そして、ついに船は出た。
漕ぎ手は、ゆっくりゆっくりと櫂を漕ぎはじめた。
ギーコーギーコーと不気味に響く。
月明かりがありがたく感じる、暗い船旅だ。
「真っ暗で何も見えないな」茶々丸が不安げに言った。
「封印の島は、昼夜がないらしい。一日中空が紫だと聞いた」弾は楽しそうに、返事をした。茶々丸の不安な気持ちを無くすようにと。
「それは、良かった。こんな真っ暗闇よりよっぽどいいよな。
それより・・・この船遅くねーか?封印の島って遠いのかな」茶々丸は真っ暗な海を、せっかちに見渡した。
「うーん。確かに眠くなるほどゆっくりとしているな」クルミは眠そうに言った。
ギーコーギーコーと、船はゆっくりと進む。
「おい、そこの黒いやつ!これ、いつ着くんだよ!」と、茶々丸が言っても漕ぎ手は、相変わらず無言のままだった。
「聞いてんのか!まさか、それがお前の限界ってもんじゃねーだろ!
もっと急いでくれよ!」茶々丸は、漕ぎ手に催促した。
すると漕ぎ手は、何やらブツブツと、話しを始めた。
「この船は、世の邪魔者となった者が島流しへと向かう船。
この闇と、この波の音は、罪深き己の身を恥じ反省へと導く時間与えてくれるのである」
すると、茶々丸は言い返す。
「俺たちは島流しの身じゃねーんだよ!
それに、このちんたらした動き・・・なんか・・・吐き気がするんだ!
早くしてくれ!」
「この世に意味のない事などは何一つとして存在しない。
この船は、罪を導く力がある。
罪無くしてこの船に乗る事はないのだ。
おぬし等も罪人という事。
心を研ぎ澄ませれば見えてくる、己の過ちが、黒き心の闇が。
見えてくる・・・見えてくる・・・見えてくる」
漕ぎ手の、この催眠のような言葉に
弾と、クルミは、何だか肩を落とし始めた。
「そうだ・・・オイラ。あの時、あの子に酷い事言っちゃったっけ。
最低だよな、本当に最低だよオイラ。だからこの船に導かれたんだ」クルミは、自身の小さな過ちを責め始めた。
「俺だってそうだよ。考えてみれば、俺には罪しかないのかもな」弾まで、自分を責める。
すっかり罪人のようになってしまった二人。
波の音が、いくつもの記憶を蘇らせた。
すると、茶々丸は呆れたように、立ち上がった。
「はー???罪がある?
意味わかんねー事言うな!
俺たちはな、この旅でどんだけ人助けしてきたと思ってんだ!
十六夜祭りの毒事件を解決したり、天狗とか、太った猫とか、絹ばぁとか
いろんな奴助けてやりながら、旅してんだよ!
何が罪を導く力だ!嘘っぱちが!
おい、そこの黒いやつよーッ!
上っ調子なやつが、漕ぎ手をしてるって
白虎の主に言いつけてやるからな!
俺、白虎の事よく知ってんだよ!」二人とは打って変わって、何だかヤケに偉そうな茶々丸だ。
すると、漕ぎ手は何を思ったのか・・・。
動かなくなってしまった。
「ま、まさか」漕ぎ手は、あきらかに動揺している。
「???」三人は、顔を見合わせる。
漕ぎては、震えるように口を開いた。
「十六夜祭りの出来事・・・。
カラスとねずみが、白虎様を救ったと風の噂で耳にしたが!
ま、まさか、本当だったのか!?」
「あー本当だよ!俺がそのネズミさんだーッ!」茶々丸は叫んだ。
「ま、まさか。こんな所で会うなんて・・・
大変無礼な事をしてしまった!も、申し訳ない!」漕ぎ手は、膝を着き手を合わせた。
「あ、いや。あの日はみんなで戦ったんだ!俺たちは、何も・・・体を張った訳でもない・・・」茶々丸の、デカい口に弾は慌てた。
「実は、狼が暴れたあの夜。
私の娘も、祭りに行っていたんだ・・・。
危なかった、危なかったと、何度も言っていた。
確かにあんな事があって、多くの犠牲も出たとかで。
よく娘は助かったと心底思った。
まさかこんな所で、カラスとねずみに会えるなんて」そう言って漕ぎ手は、何度も頭を下げた。
「娘を助けて頂いて、ありがとうございましたッ!」
三人は、目を合わせて笑った。
「礼はいらねーから、早く連れてってくれよ!
封印の島!
弾が、会いたい奴がいるんだ!」茶々丸は、照れたように言った。
すると、漕ぎ手は立ち上がり叫んだ。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――!」声を荒げ、櫂を漕ぐ。
「この方々を、今すぐッ!!
封印の島へ!!今すぐにーッ!ぬぉぉぉぉー!!!
お連れいたしやす事、この漕ぎ手の黒ずくめがお約束致しますーッ!!」
物凄い速さで船が進み始める。
どんどん早さを増し、船にしがみ付いてないと海へと放り投げされてしまいそうな程である。
「やれば出来るじゃねーか~!あぁー吹き飛ばされるー!!!!」
三人の叫び声は、真っ暗闇の海に響いた。
そして、約束通り一瞬で島へたどり着くのであった。




