第八十話 断崖絶壁
夜明け前、迎えの船が来る。
いよいよ出発の時だ。
封印の島へ。
夜明けの前の、もっとも闇が深くなる頃に迎えの船が来るらしい。
ちょうちんの火で、足元を照らし道を進んだ。
「あぁ~眠い~。ぜんぜん眠い。あぁ~眠い」茶々丸は、ぶつぶつ言っている。
クルミも寝ぼけて、歩くたびに転んだり、岩にぶつかったりしている。
「おい、お前たち。しっかりとしろ!もう着くぞ。海へ落ちても助けてやらないからな」弾は警告した。
「もうつく?」茶々丸は目をこすり辺りを見渡した。。
「ギャーーッ!!!」目が飛び出そうな程、発狂。
「崖っぷちじゃねーか!お、おいおいおいおい!何て高さなんだ!」茶々丸は叫びまくった。
ここは、細くとがった断崖絶壁。
一歩でも間違えれば海に落ちるであろう、そんな場所だ。
「だから、海崖だと言っているだろ!」弾は呆れたように言った。
「もっと、押し迫るように言えっつーの!まさか、こんなに断崖絶壁だと思わなかったじゃねーか!」
クルミは、まだ寝ぼけている。
ふらふらと歩き、今にも崖から落ちそうだ。
「おい!クルミ!辺りを見ろ!目を開けろッ!死ぬぞーッ」
茶々丸は、クルミの頭に飛び乗り
必死になって起こした。
「んん・・・?」目をこすると、クルミにも見えてきた。この断崖絶壁が。
「ギャー―――――!」
「迎えの船ってどこに来るんだ?こんな場所からじゃ、海には出れない!
本当にここであってるのか?」クルミは震えて言った。
「多分・・・」
「多分!?多分で、こんな所に来たのか!
もう俺帰りてー!宿に戻れー!!」茶々丸は、ポコポコと弾を叩いて怒った。
「んん・・・ここのはずなんだけどな」弾は困った顔をして、首をかしげた。
すると、その時。
大風が吹き荒れ、波が高く上がった。
人ひとりがやっと歩けるような、細い崖。
三人は吹き飛ばされそうになった。
「クルミ!大丈夫か!」
「あ、あ~」
崖の一部が崩れた。
“ダメだ、俺たち、落ちる”そう頭によぎる。
すると
「二人とも!下を見ろ!」クルミが海を指差した。
指差す方へと目をやると、何やら光のような物がうっすらと見えた。
ふんわりとした光は、光の橋をかけるように
三人がいる断崖絶壁まで、差し込んで来た。
「な、なんだこの光!」茶々丸は、目をまん丸にした。
やがて光は、不思議な事にはっきりとした形となって現れ
丸みを帯びた、美しい太鼓橋となったのだ。
「すげーーー!光が橋になった!海へと続く橋が出来たぞ!」茶々丸は叫んだ。
「なんて綺麗な橋だー!橋の向こうに、ちゃんと船も来てる!」
恐怖の叫びは、歓喜の叫びに変わる。
「では、参ろうか」弾はその橋へ足を踏み入れた。
三人は光輝く橋を渡る。
さーついに、封印の島へと出発の時だ。
胸は高鳴った。




