第七十九話 固め直す、決意
愉快な三人旅。
長旅の休憩、三人は宿に入り
風呂に浸かって、疲れた身体を癒やしていた。
「あ~気持ちひ~~」
顔だけ出してうっとり。
骨の髄まで、じわ~と染み入る気持ち良さ。
三人のため息が風呂場に響いていた。
風呂から出ると
茶々丸とクルミは、早々と就寝。
ガーガーとイビキをかき、お腹をぽりぽり。
よっぽど疲れた様子だ。
しかし、寝ても覚めても、うるさい二人。
そんな二人の寝言を聞きながら、弾はいつもの本を読んでいた。
五行の書だ。
どんなに疲れきった身体でも、この時間だけは大事にしている。
まるで、本にしがみ付くように、その姿はいつだって真剣だ。
弾は心の中でこんな事を思った。
“辛い時も、なんとかなった日も、少なからずの幸せを感じた日。
どんな時も。
この本を開くと、心が正気に戻る。
感情は日々変わって行き、薄れて行くから。
子供の頃、父を亡くした事。
その事は、もう、とうの昔の事で
もう一人で生きて行く事に、今の俺には不自由はない。
だから。
この本を読まなくなったら
父さんが、俺にどんな事を伝えようとしていたなんて
気にならなくなって行くだろう。
それが時の流れで、それが普通だ。
だが、この本を読むと
確かに正気に戻る。
父さんが薬作りをしている、あの背中が思い起こされて
時の流れに、流してはいけない事がある。
何か大きな事を、父さんは抱えていたって
心底思う。
だから、この本から離れちゃいけない
時に、流されないように”
そう心の中で呟き、何度も何度も。
今まで決意を固め直して来た。
しかし、身体は疲れている。
こくんこくんと、眠りが襲う。
「今日は、そろそろ・・・寝るとするか」そう言って、大あくび。
ふっと蝋燭に息をかけ、弾の長い一日も終わった。
夜明け前、迎えの船が来る。
いよいよ出発の時だ。
封印の島へ。




