第七十三 パクの秘密基地
パクは、走り出す。
ふわふわと舞うように走り、くるくると回る。
嬉しい気持ちがあふれて仕方ない。
“なんでかな。寂しくて仕方ないけど、嬉しくて仕方ない”
心のまま動いている、無邪気なパクの姿は、何だか綺麗だった。
パクを見失わないようにと、必死に追いかける弾。
「パク、待ってくれ!」
「パク!安静にしろってば!」茶々丸が叫んでも無駄。
「ぼくなら、もう大丈夫だって!
弾、すごいね!ぼく全然、体が痛くないよ!
ほら、こんな風に高く高く飛ぶ事だって出来る!」
「ったく!」茶々丸は、困って頭に手を当てた。
「仕方ない。本当に嬉しくて仕方ないんだろう」
パクの気持ちは、止まらない。
弾と茶々丸は、あきらめて、黙って後を付いて行く事にした。
森を抜けて、岩をつたい川を越える。
「早く早くー!」
パクの声に応えるように、懸命に追いかける。
―そして、谷底へたどり付いた。
「こんな場所に、泣くほど嬉しい物が本当にあるのか?」茶々丸は辺りを見回した。
「ここだよ」
パクはそう言って、岩と岩の間にある隙間に入って行った。
弾も後に続くが、体の大きさが違う。
小さく、四つんばになって進んだ。
「ここは、洞窟か・・・」弾は苦しそうに言った。
「弾、大丈夫?もう少しだよ!」
「あぁ、何とか大丈夫だが・・・
これ以上狭くなったら、俺は進めないだろう」息が上がる。
この道が、想像以上に長かった。
道なき道、この洞窟をひたすら這って進んだ。
「こんな、狭くて、真っ暗な場所まで来てよ~
ついたよ~ここは、雪解け水が美味しい場所だよ~!て
オチじゃねーだろうな?」茶々丸は、少しだけ不安を感じて来た。
「たとえ、雪解け水でも。
パクの精一杯のお礼なんだ!ありがたく頂こう!」弾は、何だか楽しそうに言った。
「まーな!」
茶々丸は、目まぐるしい一日を思い出した。
大きくて、不思議な木がある森へやって来て。
絹ばぁとの出会い、パクの一生懸命だった姿。
自分に起きた、不思議な出来事。
弾の為にも、自分は変わろうと心した事。
“本当に不思議な薬だ”
心底そう思った。
すると、パクが大きな声を出した。
「着いた!着いたよ!ぼくの秘密基地!」
この細い道の先。
かすかな光が、見えた。
道幅も広がり始め、弾は立ち上がった。
ゆっくり光へ、向かって行く。
“眩しい”
光の中にある光景が目に入った瞬間。
弾と茶々丸は、声を失った。
「・・・・・」
「ぼくの、特別な場所」パクは、小さく呟いた。
目の前に、現れたのは
洞窟の中に存在する、広い広い空間で。
上から、一筋の日の光が差し込んでいる。
その一筋の光を、身にまとうように
キラキラと揺れている大きな木が一本あった。
それは、まさに沢山の実を付けた不可思木。
今、目の前に、堂々と聳え立っている。
この実を求めて、不可思木の森へやって来た。
だが、何十年と成っていないと、絹ばぁから聞いて諦めてはいたが
まさか、パクが言う秘密基地が、実がある場所だとは想像もしていなかった。
「嘘だろ・・・。お、おい。これってまさか!」茶々丸は、声を震わせた。
「まさかの、まさかだ!」
「不可思木の実だーーーッ!!!」二人は、叫んだ。
「弾、茶々丸、この場所気に入ってくれたみたいだね!」パクが嬉しそうに言った。
弾は、パクの目線に合わせ膝をついた。
「パク、実は、俺たちはこの木の実を見てみたくて森へやって来たんだ。
連れて来てくれてありがとう、感謝する」
この弾の言葉に、パクは照れ笑いした。
「パク、これ食って平気?」茶々丸は、何故か緊張した面持ち。
「もちろん、最高に美味しいよ!一緒に食べよう!」
「イェーーーーーイ!!!!」
三人は、大盛り上がり。
弾は、さっそく荷物から本を出した。
「俺は、まずこの実の事を調べる」そう言って、木へ上って行った。
「俺は、食ってるからな!
パク、おすすめの実はどれだ??」そう言って茶々丸は、弾の肩から、飛び降りた。
「えっとね、今選んであげるね!」
この暗い、洞窟の中。
三人の楽しそうな声が、響く。
誰も知らない、この最高な場所。
“父さん、今、奇跡と出会ったんだ”
弾は目を閉じて、呟いた。
だが、奇跡はまだまだ、終らなかった。




