第六十七話 焼き鳥
とある長い、長い行列。
人々は、まだかまだかと、この長い行列に並んでいた。
そして、なぜか弾と茶々丸もこの行列に並んでいる。
「まだまだ、だな」そう言って、茶々丸は首を伸ばし、行列の先頭を覗いた。
「俺たち、こんな事してていいのかな・・・」
「いいに、決まってんだろ!腹が減っては探し物はできねんだよ!
それに、並びつつも俺はちゃんとパクの探し物探してんだからよ!
なにより、ここの焼き鳥♪
格別だって、みんな言ってるんだからよ。
食わなきゃ絶対後で後悔するに決まってる!」
このハイカラな町で、ひと際人気の風格を放つ焼き鳥屋。
甘くて、香ばしいこの香りに負けて
弾と茶々丸は、この大行列に並んでいた。
幸せそうな顔をして焼き鳥をほおばる人間たち。
”ゴクリ・・・”
茶々丸は唾を飲み込み、羨ましそうに眺めていた。
「く~早く俺も食いて~!」
―さて、1時間ほど並んだであろうか。
ようやく弾の番が来た。
「えっと~ねぎまと、ハツを2本づつ。
あと、鳥皮も2本ください」弾は、店の人間に頼んだ。
「あと、つくね!」茶々丸が言った。
「じゃ、あとつくねも2本!」弾は、追加した。
「白モツと、ぼんじりも!」また、茶々丸が言う。
「あと、軟骨と砂肝もな!」
茶々丸の追加は、しばらく続いた。
茶色の紙袋に入った、沢山の焼き鳥。
「買い過ぎて、しまった・・・・」弾は後悔するように言った。
焼き鳥は湯気を立て、容赦なく香りを放つ。
「うまそー!熱いうちに食おうぜ!」
何はともあれ、二人は焼き鳥を食べた。
「んー!!!!」あまりの旨さに、二人は目を合わせた。
「確かに、これは格別の焼き鳥。
カリッカリ香ばしくて、コクのあるタレに
甘みのある肉!何とも美味」弾はいつも通り、淡々と解説する。
それをよそに、茶々丸は次から次へと
焼き鳥に喰らい付く。
「おい、全部2本づつしか買ってないからな!
同じの食うなよ!」
「ねぎま、うまーーーーー!!!」相変わらず話しは聞いていなかった。
焼き鳥をくわえつつ、二人は道を進んだ。
「これが、旅の醍醐味ってやつだよな!
旨い物を食べつつ、新しい景色を眺めるんだ!」茶々丸は、モグモグと食べながら、まだ見慣れぬこの村を眺めた。
「そうだな」弾はそう言って、また新しい焼き鳥を出した。
パクッと食べて、また幸せそうな顔をした。
テクテクと道を進む。
「しかし、どっちへ向かって進んで行けばいいのやら。
目的地なく探し物・・・途方にくれるな」弾はキョロキョロと辺りを見回した。
目の前を通る人の波。
現実に気持ちが現実に戻った。
早く探さなくては・・・。
でも、どこへ向かったら。
ーすると。
茶々丸が、ある一人の男に目を奪われた。
焼き鳥を食べつつ、ボーとその男を眺めていた。
「ん?なんか今・・・」そんな小言を言いながら、目で追った。
その男は、煙草屋から出てきた男で
深く菅笠を被り、何だか妙に影のある男だ。
茶々丸は、胸騒ぎを覚えた。
「はっ!!!」声なき声で、驚く。
「ん?なんかあったか?」弾が声をかけると、茶々丸は説明できない様子で
影のある男をただ、指さした。
目をやると、その影のある人間の男が、買った煙草を懐にしまっている。
この、男がどうかしたのか?
「はっ!!!」
弾も気付いた。
この男の、首。
目を凝らして見ると、黒い刺青が入っていた。
その刺青は、風車の刺青で
遠くから見ると、黒い×印に見える。
背中に緊張が走った。
パクが夢で見た、黒い×印。
もしかして、この事なのか。
弾はその男に向かって行った。




