第六十四話 深い霧の中にある宝物
ふわり、ふわりと、霧が体にまとわり付く。
右も左もわからない、深い霧。
“ここは、どこ?
真っ白で何も見えないよ”
この霧の中を、パクは彷徨っていた。
明鏡の絵空事、不思議な夢の奥へと。
ふわり、ふわりと、落ちて行く。
―その頃、弾と、茶々丸は、パクの寝顔を見ていた。
「ぐっすり寝てる!」茶々丸は、パクの寝息を聞いていた。
「パクは深い傷を負った、ゆっくり休むにはちょうど良い。
そうでもしなければ、きっと体を引きずってでも・・・
絹ばぁの、“大事な物”とやらを探しに行くだろうからな」弾はそう言って、薬作りの道具を片付けた。
「ったく!パクのやつ!出会った瞬間から心配ばかりかけるやつだな!
こんなんで、山神が務まるのかってんだ!
せめて、良い夢見てくれよな!」茶々丸はパクの耳元で叫んだ。
―その頃パクは、霧の中彷徨う最中。
茶々丸の声が聞こえていた。
「茶々丸の声・・・。
そうだ!
ぼくは今夢の中。
絹ばぁの笑顔を、取り返したくて!
だから、この夢の中にいるんだ!」パクは、ハッと我に返り、走り出した。
目の前は真っ白で、どこへ向かったら良いのかわからない。
だけど、ただ真っ直ぐ全力で走り出す。
「早く!早く行かなきゃ!
大事な笑顔、絶対取り戻してくるから!
絹ばぁが大好きだから、心が止まらない!」霧を裂いて、駆け抜けた。
―そしてまた、その頃。
茶々丸は大きなあくびをしていた。
「アァ~~~!
よし、パクも寝たばかり。
しばらく起きねーだろうし!俺も一眠りするか!」そう言って、背伸びをした。
弾は、パクが寝ている時間を利用して、小刀を磨いている。
茶々丸は、うとうと眠くなってきて目をこすり、また大あくび。
さて、寝るか!と横になった瞬間。
「あぁ゛――――ッ!!!!!」茶々丸は叫んだ。
弾は驚き、小刀がすっ飛んだ。
「何だ急に!驚かすな!」
「パ、パク!!!もう起きたのかー!!」茶々丸は、目をまん丸にした。
今寝てばかりのパクはもう、起きていた。
そして、その顔は満面の笑みを浮かべている。
「パク・・・夢を見たのか?」弾は聞いた。
すると、パクは深く頷き
「笑顔の夢を見た!」と、力強く返事をした。
そう話すパクは、気のせいか一瞬の間にして、凛々しく、成長したように見える。
その変わった姿に、弾と茶々丸は言葉を失った。




