第六十三話 取り返したい笑顔
―パクが倒れている。
なぜ血まみれになり、倒れているのか・・・。
弾は走って駆け寄った。
近づいてみると、それは確かにパクで・・・。
足は傷だらけで血を流し、目や口も、腫れ上がっていた。
弾はパクの体に触れた。
大丈夫、どうやら気を失っているだけのようだ。
にしても一体何が・・・。
弾は傷の手当に取り掛かった。
「パク・・・お前何があったんだよ!」茶々丸はパクに声をかけた。
そして真っ赤に染まった、白い毛を拭いてやった。
しばらくして弾は、手当てを終えそっとパクに声をかける。
「パク大丈夫か?」弾が声をかけるとパクは薄らと目を開けた。
弾の手当ては、たちまちに効いた。
パクは、だんだんと意識がはっきりとしてくる。
「きみたち・・・何でここに?」
「パクこそ!何でこんな所で倒れてるんだ?
あと、俺たちの名前は、弾と茶々丸だ!覚えとけよ!
今、弾が手当てしてくれたんだ!怪我はすぐによくなるぜ!」茶々丸は一安心した顔で言った。
「ありがとう、弾と茶々丸」
すると、パクはすぐさま立ち上がろうとした。
だが、足が震えて立ち上がる事はできない。
「パク、動くな」弾はそう言って、パクに触れた。
だが、パクは夢中で立ち上がろうとする。
「いけない、いけない、寝てる場合じゃないよ・・。
ぼくには、やらなくちゃいけない、大事な事がある」そう言って、話しを聞こうとはしなかった。
「おい、パク!何考えてんだ!血まみれになって、倒れてたんだぞ!」茶々丸は怒った。
だが、パクは必死に立ち上がろうとするばかりだ。
何度言ってもダメだ。
何をそんなに焦っているのだろうか。
見かねた弾は、パクに質問をした。
「パク・・お前は、何をしようとしてる?
もし絹ばぁの事で何かあるなら。
俺も絹ばぁを大事に思ってる。何か手伝える事はあるか?」
すると、パクはやっと耳を傾けた。
「絹ばぁの笑顔を取り返したい・・・」パクは小さく言った。
「笑顔?どうやってだ?」茶々丸が言った。
すると、パクは苦しそうな顔で首を傾げる。
「パク・・・、こんなに怪我をしたのは何故なんだ?
何をしようとしてた?」弾が質問をする。
「・・・ごめん。説明できない。
だけど、絹ばぁの大事な物は、人間の住む村にあるのはわかってる。
だから、村に行ってみたけど・・・
ぼくヘマしちゃって」
どうやらパクは、人間の村で探し物をするも
賑わう村の雰囲気に動転し、暴れてしまったようだ。
人間たちは、パクをひっ捕らえようとする中、辛うじて逃げ帰ってきた。
怪我をしていた理由は、これだった。
「わからずに村へ行ったのか?」弾はむずかしい顔をする。
「わかってるんだ!
だけど・・・人間の、事だから
理解が出来なくて・・・だから、弾たちに説明ができない!
ちゃんと頭には、するべき事がわかるけど
伝えられない!村に行かないといけないんだ!それしか言えない!」パクは言葉にならない気持ちを、もどかしそうに伝えた。
「俺たちが手伝える事があるかもしれない。
どうしても説明できないのか?」茶々丸は困った顔で言った。
「ごめん・・・
風の色を、説明できないみたいに。
感じるけど、わからないんだ」
「・・・・・」
三人に沈黙の空気が流れた。
すると、茶々丸が何か閃いたように明るい笑顔を取り戻した。
「わかんねーだったらさ!
とことん弾に頼っちまえよ!
明鏡の絵空事って知ってるか?」茶々丸は、自慢げに言った。
弾は、少し複雑な顔をしている。
「明鏡の絵空事?」パクは首を傾げる。
「明鏡の絵空事っていう、夢薬があるんだ!
その薬を飲むと必ず一つの夢を見る。
飲む者にとって、必要な夢だ。
病の根を断ち切る方法を告げる夢なんだ!」
「夢?」
「あぁ、夢に絹ばぁの解決方法が出てくるかもしれない!
なぁ弾!」茶々丸は弾を見た。
だが、弾は厳しい顔をしている。
「夢薬は、求めてる事が夢に出てくるとは限らない。
知りたいと思う事を、知る事が出来る。
それが病を断ち切るとは、限らないからな。
夢薬は本人の意思とは、全く関係ないんだ」
「そっか・・・絹ばぁの事が解決できるとは限らないのか」茶々丸はしょんぼりした。
だが、パクはこの話しに喰いついた。
「ぼく、その薬飲みたい・・・」
だが、弾は首を縦には振らなかった。
「今、苦しいから!
笑顔で絹ばぁと最後までいられるように
何でもいいから、何でもしたい!
弾、助けてほしい」パクは真剣な顔で弾に言う。
「パク、夢薬は時に残酷な現実を見る事だってあるんだ・・・」弾は、まだ幼いパクに薬を飲ませたくはなかった。
「ぼくなら平気!」パクは強く言った。
パクの真剣な姿を見て
“山神”この言葉が、弾の頭に浮ぶ。
そうだ、パクは山神。
パクならどんな夢を見ても、きっと・・・乗り越えられる。
パクが望むなら・・・飲ませてやろうか。
「わかったよ」
弾は一言いって、腰袋の紐をほどいた。
腰袋から、ふわっと薬草が香りだす。
“明鏡の絵空事”伝説の薬は、パクを苦しめる病に牙を剥く。




